娘・R(2才)が歌って踊っていた。
「あてれぷれれのれのれー」
何の歌か全く分からない歌詞とメロディ。僕がクラブで
酔っ払った時を彷彿させるような左右に揺れるステップ。
オモチャのトンカチを手に持ちマイクに見立てている。
僕は寝転がって新聞を読んでいたが、Rは新聞を奪い去り
「めー!ないない!」
新聞を片付けろ、と要求したした後
「ち!ち!」
こっちだ、とRの目の前を指差した。そこに座ってワタシの
歌と踊りを見ろ、ということらしい。まるでRのジャイアン
リサイタルである。
「はいはい、みてますよー」
僕はよっこい庄一と座り、Rの歌と踊りを眺めていたのだが
「めー!めーよ!」
Rはまだ不満があるらしい。何だろうと訳が分からぬまま
いると、Rは僕の両手を取り、合掌する形を取らせた。しかし
それでどうしろというのか。まだ理解できない。すると痺れを
切らしたRが
「ぽん!ぽん!」
と言った。
「あ、手拍子を取れってこと?」
なんてわがままな…ジャイアンだってそこまで要求しない!
R、なんて子!しかし我が子の傲慢さに驚きつつも、僕は
のび太やスネオのように従順に
「はい、じょーずじょーず」
と、パンパン手拍子を取りながら、いつ終わるとも知れない
我が家のディーヴァ(歌姫)のワンマンゴウマンリサイタルに
付き合うのであった。
嫁も隣で寝転がってるのに何故僕だけ…。
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