妊娠中の嫁が行っている産婦人科。
最後の診断を終え、あとは産まれるのを待つばかりだが
寡黙な医者が性別を教えてくれないため、とうとう男か
女か分からないまま出産を迎えることになってしまった。
「エコー画面でも顔しか見れなくてさあ」
お腹の子、トロ(胎児名)のリアル名を付ける権利がある
嫁は男女両方の案を考えなければならなくなった。しかも
今回の出産はかなり早いだろう、とも言われたらしい。
「陣痛が来たらすぐ来なさい!もたもたしてると家で産む
羽目になりますよ、って言われた」
えーそれってガバガバってこと…どうりで最近…いや、
そんなことを言うと嫁に殺されるので
「そうすると僕が仕事中だと間に合わないかもしれない。
頼む、産まれるなら夜にしてくれ。それか日曜日で頼む」
嫁のお腹を撫でながらトロにお願いをしたのであった。
出産予定日は10月1日だが、もっと早まるかもしれない。
「産まれる時になると、上の子(長女R:2才)が妙にはしゃぎ
出すこともある、って言ってた」
「ふーん。小さい子供だけに分かる前兆があるのかね」
しかしRのいつもの行動は
「おいでー」(何かと僕を連れまわして遊ぼうとする)
「ぽーん!」(キャッチボールをしようと激しく誘う)
「もっかい!」(デジカメで撮ったRの動画を何度も見たがる)
「あんまん!」(アンパンマンのヴィデオを見せろとしつこい)
という感じで…
「いつも最高潮にはしゃいでるじゃないか」
「そうなんだよね」
普段からハードゲイ並みのハイテンションのRでは判断できない
という結論に至った。しかし一応聞くだけ聞いてみるかとRに
話してみた。
「R、トロちゃんはいつ産まれて来るか分かるかな?」
「ねんね!」
寝ろ!ということで…。
果報は寝て待て、と言いたいのかもしれない。
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