実家の母がいろいろな物を送って来てくれたらしい。
お母さん、ありがとう…と言いたいところだが、全て
嫁の采配により摂取されてしまったので、何を送って
くれたのかが定かでない。
僕が見たのは既に空っぽになったダンボールだけ。
少し寂しかった。でも僕、負けない。ありとあらゆる
災厄が飛び去って行った後のパンドラの箱のように、
箱の中にはたったひとつだけ残っているものがあるかも。
そう。それは「希望」…
と思って覗いたら希望じゃなくてゴボウの欠片だったので
激しくつまらなかった。
一方でつまらないどころか大はしゃぎしたのが娘・R(1才半)
であった。Rはダンボールを見るなり箱の中に入っていった。
自ら箱入り娘と化したのである。
「R、楽しいのか?」
「きゃはははは!」

箱入り娘というよりも、これでは捨て猫のような趣である。
まるで僕が捨てたみたいではないか、と胸が痛んだ。
Rを箱入り娘に育てたいのは山々である。しかし深窓の令嬢
ならともかく、そんな世間知らずでは世の中渡って行けまい。
そんな育て方をしてもウチは思いっきり庶民であるので、Rは
深窓の令嬢にはなれない。貧相なキャバ嬢が関の山である。
文字通り箱入り娘のRの姿から将来のことまで考えてしまって
いたら、当のRは「よいしょ」と立ち上がり、ダンボールから
出ようとしていた。おお!Rが自ら箱入り娘を卒業…しかし…
どおおおおおん!
足を取られ、ダンボールもろ共転げ落ちた。
「フギャアアアア!」
災厄の元となったこのダンボールはRにとってパンドラの箱となって
しまったようである。そう。これは僕にとってもパンドラの箱。
何故ならばそこに残されたRこそ「希望」そのものなのだから。
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