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■あの子の一周忌。 Life Goes On…
2003年08月02日(土)
産婦人科の医者はおなかの中のRちゃんの出産予定を

「あと1週間以内です」

と告げた。この言葉を聞いた僕は胸が締め付けられた。

「あと1週間以内です」

昔、末期がんの親父を見舞いに行った時も
僕と母だけが医師に呼ばれ、そう告げられたのだ。
親父はその日の夜中に死んだ。

新しい命を待ち焦がれている時なのに
強烈な死の記憶が蘇るとは。

しかし、更にもうひとつの死の思い出が蘇った。
そうだ、去年流産してしまった子の命日じゃないか。

クソ暑さと死の重みを背負いながら病院に行った日。
嫁が中絶手術の麻酔から醒めるのを傍らで待った日。

帰り際「あそこでやったの」と嫁が指差した手術室を覗いたら
そこが残虐な処刑場に見え、立ち止まらなければ良かったと後悔した日。

その夜「水が流れる音がする」と一晩中怯えていた嫁を
抱いて守るしか術がなかった日。

全てを失った心境になった日。それが去年のこの日。

それから嫁が再び身篭っても、僕らには死への恐れが付き纏っている。
Rちゃんが産まれる時まで消えることはない。

でも、当のRちゃんはというとそんな僕らの恐れを
打ち消してくれようとしているのか
嫁のおなかの中でぼっこんぼっこん動いている。
肉親の死が悲しかった分、それがいとおしくてたまらない。

「そこにはね、君のお兄さんかお姉さんがいたんだよ」

Rちゃんがなかなか出て来ないのは
ひょっとしたら兄弟で話でもしてるんじゃないか、
などとも思えた。

まあゆっくり出て来なさい。

親父にも見せられたら最高だったなあ。



アリガトウゴザイマシタ。
今日もアリガトウゴザイマシタ。

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