銀の鎧細工通信
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2009年08月02日(日) ベイビー、スターダスト [上] (近高そよ、続き物10話目)

 
 まさかターミナルそのものを壊すだなんて思うわけがない。誰も。

 神楽が真剣な目をして見つめていた画面からは、予想もできない言葉と混乱しきった状況が流れてきた。新八は「え・・・?」と絶句したまま固まり、銀時はひたすら押し黙って新聞を広げたきりでいる。ブラックアウトした後の画面に数秒砂嵐が広がり、ぶちりと途切れると「臨時ニュースです」と真っ白い顔色をしたキャスターが一礼した。
 「え、地震?」
 うまく内容の飲み込めない言葉に耳を傾けていると、不意に地面が揺れた。外を見れば、突き抜ける青空の彼方で溶けていく塔。
 「出かけてくるネ!」
 『暫定内閣は選挙の後に解散、一切の権限は白紙。ただし、新議員が意見を求めることは自由とし・・・』
 まつわりつくキャスターの声を跳ね飛ばす勢いで神楽が飛び出した。
 「何処に行くっていうの!」
 慌てて追いかけようとしたものの、足が縺れてよろけた新八の横で舌打ちがした。するや否や、銀時が追い越して白い影のように駆けて表に飛び出していった。
 「ちょ、待ってくださいよ!僕も行きます!」
 いったい、何処へ?


 『副長!駄目です、大混乱ですよぉ!』
 「泣き言なんざ聞きたくねぇな。だからそこにいるんだろうが!」
 一喝して無線を叩きつける。そんな土方の目の前でも、ずらりと並んだ天人たちが激しく睨みつけてきている。双方これ見よがしに危なげなものを手にしていた。相手は虚仮にされたと頭に血が上りきっていて、市街地で銃火器を用いることに何も躊躇いがないのは明白だった。
 「と、こっちもそんな状態なもんでしてね。まぁ紳士的にいきましょうや」
 (避難勧告は出した。だが人が死ななきゃいいってもんじゃねえ。分が悪ぃ・・・)
 「何が紳士的だ!こんな無体をされて、まさか我々に黙っていろとでも仰るつもりか?」
 叫んだ天人の頬は引き攣っている。一触即発。土方が覚悟を決めたその時に、「あっ、やべっ」と緊張感のない声がした。炸裂音がしたかと思うと、もうもうと煙が渦をまく。たちまち辺りを深い靄に沈めた。
 「くそっ、ふざけやがって」
 「何だこりゃぁあ!?」
 「あちゃ〜、どうもすいまっせぇん。ところで今のどなたです?優作みたいで良かったなあ。あ、優作ってご存知ですか?松田優作」
 ゆるい口調で話しつつ、山崎がとん、と指先で軽く土方の肩を押した。そのまま滑るように土方は走り出し、滑らかに抜刀した。霞がかった視界を切り裂くような鋭さで怒鳴る。
 「制圧しろ!」
 緊急時の布陣などには幾つかの決まりごともあるにはあるのだが、実際にそうした場に出くわすと、『切れ者』『真選組の頭脳』と名高い当人が真っ先に敵に突っ込んでいってしまうため、あまり用を成したことがない。かつて柳生に『泥臭い田舎剣法』と揶揄されたこともあるが、事実ゲリラ的で乱戦に強い喧嘩の様相を土方は好んだ。『効率的なのは好きだが、整然とお行儀よくやるにゃあこの街は複雑すぎる』。艶然と笑みを浮べた面を山崎は思い浮かべる。
 そんな中、無線が拾ったどこかの大使館前の音は喧騒に掻き消えた。
 「ちょっとちょっと、なぁに莫迦騒ぎしやがって。困るのよねえ、こんなに暴れられちゃあ。そんなにお暇ならうちの店へいらっしゃぁあああああああああい!!!」
 城下ではあちらこちらで大使館付近を中心に天人との小競り合いが始まっていた。
 「今、この時をもって抑えられなかったら、あの時の二の舞になる。・・・行くぞ!」
 背後で応!と威勢良く湧き起こった声に、隊士が振り向いて目をむく。ぶわりと羽のように長い黒髪が舞ったかと思うと、もう真横に滑り込んできている。
 「かっ、桂!?」
 「ここは俺たちに任せてもらおう。他の隊の応援なりへと行くがいい」
 「だっ・・・しっ、しかし」
 桂の周りで狼狽しきっている数人をぼこぼこと殴りつけると、珍妙な白い生きものが『そんなことを云ってる場合なのか、今は』と書かれたボードをひょいと掲げた。
 「へーえ、思ってもない援軍のお出ましだぃ」
 黒く影がさしたかと思うと、桂の頭上から声が降ってきた。重たい剣戟の音がしたかと思うと、既に影は数歩飛び退り「おい、他所行くぞ」と走り出していた。「次は捕まえてやらぁ、かぁ〜〜つらぁ〜〜」とドップラーな捨て台詞を聞きつつ、桂は薄く笑った。
 (今はその時ではない?否、今こそが、その時だ)
 今度こそ負けはしない。もう何をも失うつもりはない。


 「さて、お聞かせ願おうか」
 ずらりと三の郭の奥に勢ぞろいした大使に加え、状況を知って駆けつけてきた一部の王族を眺め、そよは満足げに微笑んだ。
 「まあこれは皆さまお揃いで・・・間に合って良かったですわ」
 周囲へほぼ影響を与えることなくターミナルを沈めてみせた少女を、天人たちは底冷えのする思いで見るようになっていた。魔女か化け物か、莫迦莫迦しいトリックが何かあったに違いない、移動の車中で口々に取り交わされた。ただひとつ確かなことは、トリックにしろ技術にしろ、あの場の誰も、そう天導衆さえもおそらくは、あのようなことが可能だと知らなかったのだ。哀れな傀儡と侮りすぎていたのではないのか。飼い殺されたからといって、犬の牙が勝手に折れるわけなどないのに。老いて牙を抜き去ったと思った男の、その娘がまさかこんな形で牙をむくとは。
 「実はお話しすることは特になくって」
 おっとりと口火を切ったそよに対し、もう誰も迂闊に罵声を投げ付けることができない。ぐっと固唾を呑む。
 「既に公表している通りですから。準備会にお招きした方たちのことも・・・皆様が知る必要は、ありませんわね」
 今度こそ本当の地震か、と思うような重い振動が部屋を軋ませた。
 「!?」
 「なんだ!?この揺れは」
 「今度は一体何なのだ!」
 「訂正します」
 そよが呟く声は動揺のざわめきの中で禍々しく響いた。すかざず天導衆のひとりが口を開いた。
 「一体何事だ」
 「ターミナルが墓標なのではない。ここがお墓です。私とあなた方、すべての」
 そよが口角を吊り上げる。するりと持ち上げた手から、ぽとりと小さなリモコンが滑り落ちた。スイッチは、ひとつ。絵に描いたような自爆装置。
 「正気か!城まで潰すとは」
 「残すわけにはいかないの。全部、壊してしまわなければ」
 嘘だった。
 総て壊さなければならないのに、そよにはそれができなかった。

 「茂茂様お早く!」
 既にいつでも飛び立てる状態のヘリに、引き摺られるようにして先の将軍が促される。
 「離せ!離さぬか!そよは何をする気だ。そよと話をさせろ、あいつはどうなる!」
 激しく抵抗しながら、これまで家臣の誰も聞いたことのないような荒々しい声で喚きたてる。
 「お言付けを預かってございます」
 「何?」
 「勝手ばかりをごめんなさい。水戸の叔父様にお話はしてあります。逃げて、新しい世界を見届けてください。将軍としてではなく、どうかただのひとりの人間として」
 古くから仕える老臣が、深い皺のひとつと見まごう程に目を細めて訥々と呟いた。そして項垂れる。
 本当は、彼も生かすわけにはいかなかった。将軍になるために生まれ、将軍になるために生きて育ってきた。彼の存在はあってはならなかった。残してはいけなかった。
 兄は他の生き方を知らない。将軍として在ること以外の生きる道を。それでも。
 「ふざけるな、私にだけ生きよと申すか!いいからそよのところへ連れてゆけ!」
 「茂茂様、今が引き時。なぁ〜に兄妹喧嘩ならあとでやればいい。死なせやしないさ。ほれ、うちの莫迦がアホ面下げて走って来た」
 ヘリの巻き上げる粉塵越しに見下ろすと、黒い人影が疾駆して城に駆け込もうとしている。
 「死なせやしない」
 松平が繰り返した。ゆるゆると顔を上げて松平の目を見た。その隙を突いて、老臣が2人をヘリに突き飛ばすように押し込んだ。一息に舞い上がるヘリ、既に足元の揺れは真っ直ぐに立っていられないほどのものになっていた。爆発音があちらこちらから聞こえてくる。
 「待て、お前は・・・!」
 叫んだ茂茂の声はエンジン音と爆発にかき消され、彼には届かなかっただろう。そよと茂茂の父の代から仕えてきた老翁は、ひどい揺れの中だというのに美しい姿勢で深く深く頭を下げた。その姿が遠ざかっていこうとする。
 生まれ育った城が崩れていこうとしている。妹が、何も告げぬままひとりで死んでいこうとしている。
 「っ何故だ・・・っ!!」
 茂茂はわけのわからないままこみ上げてきた涙声を振り絞り、身を乗り出す。
 「おぉっと、そんなに顔だしちゃあ危ねぇなあ」
 ぐいと襟を後ろに引っ張ると、そのまま黒いコートをばさりと翻して松平がヘリから飛び降りた。
 「松平!!」
 ずだん!と重い音をたて、足から脳天へと付き抜ける痺れをやりすごす。松平が動こうとしない老臣を抱えるように引き摺っていくのが、爆風に吹き上げられ城から離れる茂茂の目に写って消えた。





 慌てふためき、逃げ惑う大使たちをそよは静かに見つめていた。城内で迷わなければ余裕で逃げ延びられるだろう。もし本当にここで何人か死んだとしても、代わりが来ることなら解っている。彼らの誰が死のうが、生きようがもうどうでもいいことなのだ。自分がここで死んだところで、もう。
 そよはそれを哀しいとは思わなかった。
 (知ってたわ。私じゃなくても良かったし、誰だって良かったってことくらい)
 そんな肩書きに縛られてきたことを、ただ憎んだ。あまりに、重すぎた。音がどんどんと遠ざかり、かたく閉じた瞼の裏側の闇は深く、濃くなっていった。
 (もう、いい。これで終わりだ)
 絶望とは、こんなにも静かなものなのか。自分は何を恐れていたのか。そよは己を心の中で嘲笑う。
 その時。
 「御免」
 不意に耳元で声がしたかと思うと、ひょいと身を担ぎ上げられた。悲鳴を上げる間もなくそれは廊下へと躍り出ていた。
 「!?・・・全蔵さん!どうして!」
 「俺は仕事はキッチリこなすタチなんだ」
 「あの人は、高杉さんは!」
 私のことなどいいのに、とそよが呻いた。全蔵の背を掴む指が小刻みに震えている。
 「全蔵さん、ねえ!お願いです!私はいいから、あの人を助けて!」
 全蔵は応えないまま炎上しだした廊下を駆ける。
 「高杉さんを死なせないで!!」
 そよが血を吐くような悲鳴を上げる。その時全蔵の耳はある足音を捉えた。方向転換をし、来た道を戻ってゆく。背中から「お願い、あの人を死なせないで」と、か細い声が繰り返す。
 「そこだ!」
 声を張り上げると、そよを担いでいない方の腕がしなるようにしてクナイを放った。廊下の向こうを駆け去ろうとしていた近藤の鼻面近くにがつんと突き刺さる。
 「うおっとお!!!」
 その声にそよが身を捩った。決して来て欲しくなかった人、決して来てはいけなかった人、それなのに、誰よりも駆けて来て欲しかった人。
 「近藤さん!」
 「そよ様!」
 全蔵はそよを肩から下ろそうとはしなかった。けれど話しやすいようにと身体を傾ける。
 「近藤さん、お願い。あの人を助けに行って!
  きっと真っ暗な中で死にそうになってるわ。
  早くあの人を自由にしてあげて」
 次の廓の西端なの・・・、声が歪んだ。
 「わかった!」
 「どちみち下っていかねえと俺もどうしようもない、通路くらいは作ってやる。ブチ抜くぞ!」
 忍者ってのは一体どれだけの物を持ち歩いているのか、と近藤は咄嗟にいぶかった。今度は手榴弾か何かを投げたらしい。壁に穴が空き、外が見えた。どちらにしても燃えさかってはいたが、倒壊の危険性が減るだけ速く進めるだろう。近藤はそよの髪を撫でると「先に行ってます」と呟いて走り去る。城は唸りを上げて燃え、みるみるうちに崩れていく。爆発音はまだ鳴り止まない。
 がらがらと音を立てて崩れていく城で視界を満たし、そよは煙に咳き込む。すべて壊してしまおうと思ったのは自分だ。もう全部、全部全部終わりにしたかった。それには必ず誰かを、大切に想う人たちを巻き込むことも解っていた。自分ひとりで総て成しえると、思いあがれるわけもない。
 それでもできることなら誰をも巻き込みたくはなかった。それがどれだけ後に苦しみを残す結果になろうとも、蚊帳の外に追いやって、そうして決着だけ付けてしまいたかった。その後のことを彼らに託そう。
 それは信頼にこじつけた甘えだったのかも知れない。彼らなら、その後を生きて、生きてどうにか切り抜けていってくれるだろうと思った、願った。とにかく死なせたくない、そればかりがそよを突き動かす総てだった。
 (解ってる、私の願望だ・・・!自分が逃げ出したいだけのくせに・・・)
 そよは涙を流さない。煙に滲む涙は目の奥でみるみる冷えた。


 「高杉!!っ、あんたは?ああ、そうか、あんたもお庭番か。ここはもういい、俺に任せてくれ。ああ、お宅の長は脱出中だ」
 遠くから知っている声が聞こえる気がする。居てもおかしくはない、それなのに高杉は(何故、お前がいる)と咄嗟に強く激しく思った。
 (こんな時に、こんなところに、何しにきやがった)
 幻聴ならいいと思った。同時に、そんな幻聴を聴くような自分に反吐が出る。幻聴であればいいという期待を他所に、その声の主は姿を現した。重く痺れる舌を、弱々しく打つ。
 「高杉!」
 牢の鍵を開け、その鍵を投げ捨てながら見慣れた影が飛び込んでくる。既に煙を吸いすぎた身体は、その視界と意識をおぼろに追いやろうとしている。
 (なんで、いる・・・なにしにきやが・・・った)
 暗く霞んでいく高杉の視界の中、真っ直ぐに手が伸ばされた。自分の身体を抱き起こす、その腕を高杉は呪った。
 (もう、いい。ここで、終わらせろ)


 目を覚ましたら、酷い揺れを感じた。おぶわれている、そして走り抜けている。片方の眼球をめぐらした周囲は炎の渦の中だ。不意に、かつて守れなかった人の名が口をつきそうになった。それを堪えると、高杉は「おい・・・」とだけ呟いた。その声の弱さが忌々しい。
 「お前たちは面白いな。云ってることもやってることも、願ってることも全然違うのに、たまにこんな風になるってのがさ」
 高杉をおぶった近藤が笑う。走っているためのとは違う揺れが高杉の身体に伝わった。
 耳を澄ますと、途切れ途切れに聞こえてくる無線。近藤の襟に付けられた機械からあちこちの怒号が届いている。
 そしてその声はどんどん増えていった。断続的に。
 桂の声がした。銀時がいる、坂本までいる。真選組がいる。お庭番衆がいる。西郷がいる。
 誰も彼も仲間でもなんでもないのに、同じようにただ莫迦のように喚き、ひた走っている。
 あの時減ってゆくばかりだった仲間、今増えてゆく仲間じゃない奴等。
 (やめろ。もう、いい。何をしてやがる・・・)
 一度かたく目を瞑ると、高杉はそれを見開いて絶叫した。
 「俺のことなんざ放っておけ!!今更なんだってんだ!」
 あの時、あの人をむざむざ死に追いやった世界が、今自分を生かそうとしている。これ以上無いというほどに高杉の中で憎悪が湧き起こった。激情の強さに涙が出そうになるほどに。
 あの人はもう居ないのに、あの人を殺したくせに奪ったくせに、そうして俺から鬼兵隊を奪い、あいつらを、
 (違う。違う違う違う、あいつらを殺したのは、この、俺だ・・・!)
 「おろせ!もううんざりだ!!」
 「うるせえ!知らねーよお前のことなんか、俺は俺のしたいようにさせてもらう。
 皆てめーで選んで、てめーで決めてんだ!」
 近藤の背中を、握り締めた拳で叩いた。どうしてこんなにも、何もかもがままならない。そうだ。自分で選び、自分で決めたのだ、皆。そんなことは知っている、判っている。それでも罪悪感は消えない。自分の無力感も。こみ上げる憎悪も。少しもなくならなかった。



 高杉さんはただ復讐がしたいんじゃなく、それしかないと復讐によって生きている。
 赦されないことが必要で、そのために死ぬことも生きることもできない。
 赦さなくても、生きていくことはできるのに。それも良しとはできない。
 選ぶべきだ。復讐を遂げて死ぬか、復讐を続けながら生きるのか。
 でも誰を殺しても何を壊しても復讐は終わらない。
 勿論幕府は赦せないだろう、天人だって憎い。だけど何より、あなたは自分自身を赦せない。
 自分だって復讐の対象だ。死ねもしない。
 何をしても、終わらないあなたの復讐。
 何をしても、終わらない。
 (私の絶望はただ深く静かだ。それなのに、あなたの絶望は、こんなにも、痛い。
 解ってる。私の自己満足だわ・・・!それでも、あなたに、)


 (あなたが悪いんじゃない。誰もあなたをうらんでない、そう云いたいじゃない・・・!)



 城下では、変事の報せを受けた春雨がここぞとばかりに破壊でもって国を呑みこもうとしていた。自滅の途を辿るならば面白い、手伝ってやろうと云わんばかりに。砲門を市街に向け、その殺戮の戸を開こうと押し迫る。
 「華陀様!春雨の艦隊が江戸上空に接近!住民は避難していますが、各大使館周辺では武装警察、攘夷志士入り乱れての混戦状態です!」
 「面白い。この博打、わしも賭けてみとうなった。行け。奴らの手足、封じてしまえ。宇宙海賊ごときの意のままになる孔雀姫ではないと思い知らせてやるがよい」
 「はっ」
 スクリーンで無骨な戦艦を眺めつつ、孔雀姫は怖気をふるうほどの艶めかしい笑みを唇に乗せた。
 「この賭場、無粋な輩どもに荒らさせるでない。ふふ・・・賭け賃は命とな・・・またとない大一番よ。さあ、思う様足掻くがよい」
 白銀に輝く戦艦がかぶき町上空に浮かび上がり、春雨の艦と対峙する。
 「江戸の人間に組する天人が出るとはね・・・時代も変わったってモンだ」
 それを見上げ、白い褌を返り血に染めた屈強な男がぽつりと呟く。その時かすかに浮べた笑みに誰も気が付きはしない。















すいません字数制限越えました。分けます。


銀鉄火 |MAILHomePage