Sports Enthusiast_1

2008年03月30日(日) 迷走から暴走へ

報道によると、今月25日に東京都内のリハビリテーション施設を退院したイビチャ・オシム前日本代表監督が、30日のJ1の川崎―千葉を観戦し、26日のワールドカップ(W杯)アジア3次予選で日本がバーレーンに負けたことを念頭に置いて、「代表チームで問題があるとしても、(この試合では)選手はよくやっている」と話したという。

このコメントを翻訳すると、バーレーンに負けた責任は選手にはなく(岡田代表)監督にある、ということだ。

岡田(現日本代表監督)はバーレーンに負けたのは前任者(オシム)の残滓を一掃できなかったからだといい、オシムは負けた責任は選手にはなく、岡田にあるという。日本代表をめぐっての混乱が、ますますひどくなっている。このままいけば、6月の3次予選3連戦前に、日本代表は空中分解するだろう。

さて、岡田が「脱オシム」として行った第一の施策は人事のようだ。報道によると、岡田は、札幌、横浜M時代の腹心だった小山哲治(50)を代表チームの“GM”として招へいし、Jクラブ、海外クラブとの折衝などを任せる意向。小山の“岡田ジャパン入閣”は、4月7日の日本協会常務理事会、10日の同理事会を経て正式決定するという。

第二の施策は守備の変更のようだ。「人につく守備は本来、オレ(岡田)はやっていなかった」と報道陣に明かし、「オシム流」のマンマークDFから、ゾーンDFに変更することが明らかになった。

筆者は岡田に直接、会ったことはない。だが、ここのところの彼の混乱ぶりから察するに、岡田という人間を評する最も的確な表現は、「行き当たりばったり」だと思う。あるいは、「思いつき」で行動する人物。「浅はか」ともいう。

岡田の戦術変更はこれで何度目だろうか――筆者が報道等にて知る限りで、その迷走ぶりを列記してみよう。

まず、岡田ジャパンが本格始動した1月、岡田が掲げた戦術スローガンは、ラグビー戦術からパックった「接近、展開、連続」だった。その具体的表現として、狭いエリアでのパス回しを徹底させた。ところが、デビュー戦・チリ代表との親善試合で強いプレスをかけられて「接近、展開、連続」は機能せず、狭いエリアのパス回しのリスクがあまりに高いことが判明して頓挫、以降、「接近、展開、連続」と狭いエリアのパス回しは雲散霧消した。

次に、岡田は何をしたかというと、実は何もしなかった。東アジア選手権では、指示なし・選手任せが判明して優勝を逃し、一般紙のA新聞で叩かれた。

一番大事な第3次予選のバーレーン戦では、直前のドバイ合宿で練習したとはいえ、いきなりの3バック。このシステムは岡田がもっとも得意とするもので、本番・必勝のための“伝家の宝刀”だったが失敗。岡田流の“迷走極まれり”であった。

戦術の迷走の次に予想されるのは、代表選手の大幅な入れ替えだろう。おそらく、オシムチルドレンのMF山岸(川崎)、MF羽生(F東京)、FW巻(千葉)が切られ、その代わりに、いまのところ、MF小笠原(鹿島)が呼ばれる可能性が高い。小笠原は鹿島ではボランチだから、中村憲(川崎)も正念場だ。左サイドには、新井場(鹿島)、相馬(浦和)あたりが有力で、MFには中村俊(セルティック)が当然入る。でも、山岸、羽生はもともと、代表で先発起用されることは少なく、岡田の権限で代表から外したとしても、どこからも文句が出ることはなかったはず。岡田はいったいだれに遠慮・気兼ねをしていたのか、首を傾げたくなる。

重要なことは、就任から3か月、岡田の掲げた戦術で成功したものは何もない、ということだ。それを前任者の責任だと発言する岡田の人間性については、直前の当コラムに書いたとおり。選手起用・代表選考についても、いまさらオシムの息がかかっているとは思えないし、岡田には誰はばかることなく、選手を選択する自由と権力があったはずだ。

欧州各国のリーグ戦が終了する6月、中村俊(セルティック)、稲本(フランクフルト)、松井(ルマン)、中田浩(バーゼル)、長谷部(ヴォルフスブルク)らの海外組や、新たなに国内組として、小笠原(鹿島)、トゥーリオ(浦和)、三都主(浦和)らが復帰すれば、強い代表チームに戻るかもしれないし、そうならないかもしれない。ビッグネームを集めたからといって、必ずしもいい結果が出るとは限らないということは、かつての“ジーコジャパン”で実証済みだ。岡田がそのことを知らないわけがない。

そればかりではない。代表チームというのは、予選を戦いながら、チームが強くなり、選手が育つようでなければならない。さらに重要な使命を加えれば、日本サッカーの方向を定めなければいけないものだ。岡田の「行き当たりばったり」路線では、日本サッカーに夢や希望が抱かれない。日本中のサッカーファンが代表を通して、日本サッカーの明日を見られるようでなければならないはずだ。

バーレーン戦以降、岡田は迷走から暴走をし始めた。このままでは、日本代表がどこに行くのかわからない。早いところ岡田の暴走を止めなければ、代表どころか、日本サッカーが地獄へ向かうか、奈落の底に落ちていってしまう。


 < 過去  INDEX  未来 >


tram