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2007年07月26日(木) 混沌のアジアに埋没か

●サウジアラビアのほうが実力は上

直前の当コラム「アジアから聞こえる警鐘」に書いたとおり、サウジアラビアは強かった。2−3の結果からは惜敗のように思えるが、サッカーの質、選手の才能を比較すると、サウジアラビアの方が日本をはるかに上回っている。僅差の得点差は、サウジアラビアの伸び白の多さを表象している。このままならば、サウジアラビアはもっと力を伸ばし、日本との差を広げていくに違いない。日本はアジアの混沌の渦に巻き込まれ、その湿潤した風土に埋没する可能性が高まった。

●筆者の反省点―日本のDF陣はNG

アジア杯に係る筆者の記述について、反省すべき点が多くあった。それらについては、虚心坦懐、改めなければならない。

まず、最大の反省点は、日本のDF、とりわけ、CBの中澤、阿部に合格点をつけたことだ。日本はグループリーグから準決勝のサウジアラビア戦まで、無失点試合がなかった。サッカー評論家諸氏は、日本のDFの不安を指摘していたが、筆者はPK戦勝利のオーストラリア戦までを総括して、無失点試合はないものの、よくやっていると書いてしまった。

ところが実際には、サウジアラビアのスピードをもったFWに簡単に振り切られた。CB同士の連携もドタバタだった。その一方、サウジアラビア戦における日本の2得点は、CBの中澤、阿部が上げたもの。とりわけ、阿部のシュートは、これがDFのしかもCBの選手のものかというくらい、すばらしかった。阿部のポリバレント性は証明されたけれど、DFが相手の個人技にやられっぱなしで3点も取られてしまったら、勝てない。

●阿部のCBはオシム采配のミス

筆者は、阿部のあのシュートを見て、得点力のない日本が阿部をCBで使うのはもったいないと思えた。阿部をボランチに上げ、鈴木と組ませたほうがいい。中村憲が控えだ。阿部はJリーグ(浦和)では、左SBに入ることが多くなった。CBは代表戦しかやっていない。今回のアジア杯では、トゥーリオが欠場したため、阿部をCBで起用せざるを得なかったが、新しいチームをつくるのならば、CBはスペシャリストに任せ、阿部を前に出し攻守の中心に据えたほうがいい。

●日本のアキレス腱ー左SBをだれにするか

それだけではない。問題は左SBだ。筆者は、いまの日本代表に中村俊以外にレフティーがいないことを指摘してきたが、レフティーのサイドプレイヤーがほしい。駒野はいい選手なので彼を貶めるつもりはない。あくまでも、戦力的に見ての判断だ。

●ガソリン切れの原因究明を

サウジアラビア戦で筆者を最も驚かせたのは、日本選手の疲労感だった。ハノイに居座り、高温多湿の気候に慣れ、決勝トーナメントで調子はさらに上向くと思うのが常識的な見方だろう。ところが、肝心のサウジアラビア戦で、日本の選手はまったく走れなかった。とりわけ、鈴木、遠藤、駒野の3選手が精彩を欠いた。一方のサウジアラビアは、準々決勝のウズベキスタン戦で走り続けて勝った。そのうえで、インドネシアからベトナムに移動、休みは日本より1日少ないのだ。日本代表がなぜ、ガソリン切れになったのか。徹底した原因究明を行ってほしい。なお、当コラムで、筆者は開催国間のフライト時間を概ね2時間と書いたが、ジャカルタ〜ハノイに直行便はなく、乗り継ぎで8時間かかることを後で知った。これは筆者の完全なミス。訂正します。

●益々難しくなった代表チームづくり

アジア杯ベスト4の日本だけれど、W杯南アフリカ大会に向けた代表チームづくりについては、むしろ混沌の度を増した。アジア杯ではっきりしたのは、W杯ドイツ大会の主力組(=中村俊、高原、中澤、駒野、川口、さらに当時控えの遠藤を含めて)はここで「お役ごめん」だろう。今後も彼らに依存したままならば、日本は退歩する。ところが、彼らに代わる新戦力がまったく見出せない。アジア杯で強豪相手に得点を上げたのは高原とDF陣だけと言っても過言ではないくらい。もちろん、遠藤、中村俊、巻も得点者だけれど、力の劣るベトナム戦とUAE戦のみ。つまり、高原以外の攻撃の選手は、アジアレベルで点をとれなかったことになる。さらに言えば、新戦力として、彗星のように現れてほしい、若手も不在だった。オシム監督は、グループリーグ初戦に起用された山岸、スーパーサブで起用され続けた羽生、佐藤、パワープレー要員の矢野にチャンスを与えたが、目だった結果はでなかった。

●オシムの次の一手は
常識的な見方だけれど、シード権をかけた韓国との3位決定戦に先発出場する選手たちが、そのヒントになるだろう。もちろん、筆者としてはボランチ阿部を見てみたいのだが。


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