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2007年05月09日(水) 不調、松坂

日本プロ野球で「平成の怪物」と呼ばれ、鳴り物入りで西武からボストンに移籍した松坂が不調に喘いでいる。MLB開始前、移籍直後の松坂を評して、そう簡単に勝てないと予想した評論家は、管見の限りでは張本勲氏ただ一人である。

筆者の記憶では、朝のTV番組に出演した張本氏が、MLBのキャンプ等で投げる松坂の投球フォームを見て、投げ方が悪いと指摘した。そのときの表現が、「かつぐような」という表現だったので、野球素人の筆者には理解が及ばなかった。「かつぐような」というのは筆者の勝手な解釈では、肩と肘の角度の不具合かもしれない。「肘が下がる」という表現もあるし「角度がない」という表現もある。いずれも専門用語なので理解不能。

素人にわかるのは、松坂はオーバースローの投手で、武器となっているのはスライダー。ブレーキがあって横に変化するものと、縦に割れるように曲がるものの2種類がある。後者が、落下するくらい角度があれば、リーチの長いMLBの打者から空振りがとれる。

さて、「肘が下がる」とボールがシュート回転して、真ん中に威力のないボールが集まりやすく、長打をくらいやすい。だが、すべてそれがだめなわけではなく、ランディ・ジョンソンはスリー・クゥオーター気味からの速球、スライダーでMLBの大投手になった。ジョンソンくらいのパワーとリーチがあれば、肘の角度が下がろうと関係ない。

そこで松坂だが、ジョンソンほどのリーチ、パワーがないわけだから、速球のコントロールと、スライダー、チェンジアップ、フォークボール等によるコンビネーションが重要になる。バックのミスなどもあるものの、松坂が勝負どころで打たれているのは、スライダーが高くブレーキも曲がりも少ないから、リーチのあるMLBの打者には打ち頃の高さ・ゾーンになる。彼のスライダーは、どちらかというと、右打者に引っ張られているように思うのだが。

改善の方法はあるのだろうか――最近の朝番組に出演した張本氏は、勝てない松坂の原因を、松坂のウエートコントロールの失敗だと指摘した。簡単に言えば、体重が重いと。この指摘も妥当だと思う。

筆者の想像では、松坂はウエート・トレーニングをやりすぎて無用の筋肉を上半身につけてしまったのではないか。スポーツ選手全般にパワーアップのための筋トレが不要とは言わないが、投手に必要なのは筋肉の内側の強化であって外側ではない。松坂がそこを見誤ったとするならば、専属トレーナーのミスだ。MLBの強打者を見て、パワーアップ=筋トレに励み、それが体重増を招き、本来のフォームを崩した可能性を否定できない。

トレーニング方法としては、チューブや軽いダンベルを使って、筋肉の内部強化に励むこと、さらに、体重を日本で投げていたレベルに戻すこと、そして、完投を狙わないこと――が必要だと思う。

いまの松坂であれば、1試合で投げるイニング数は6回で十分。この回数は肩への負担軽減という面もあるが、MLBの投手システムに従うという意味もある。MLBでは投手分業制度が確立していて、中4日間の先発ローテーションが確立している。ということは、4人が完投すれば1チーム4人の投手で賄えることになるのだが、そんなことをしたら、先発以外の投手の出番がなくなるわけで、ブルペンの投手の生活を圧迫することになる。

松坂がイニング数の増をコーチに要求するのは、チームの和を乱す原因となる。とにかく、自分の責任回数を6回程度に定め、それ以降のイニングをブルペンに託すことだ。さらに言えば、「日本式調整」と称して、試合前に100球以上も投げ込んで「肩をつくる」なんてのは愚の骨頂である。

焦ることはない。結果がほしい気持ちはわかるが、1年目に先発完投で20勝という夢は追うべきではない。松坂に必要なのは、頭の切り替え。大報道におだてられて大投手ぶり、「俺流」を貫くのは実績を上げてからの話。ルーキーなのだから、コーチの指示にまず、従ってみてはどうか。ケガでメジャー昇格に失敗した元読売の桑田だが、桑田の調整は順調だった。松坂に桑田くらいの頭脳と適応力があれば、松坂はスタートからもっと勝てたと思う。


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