妄言読書日記
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※ネタバレしています
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| 2006年04月15日(土) |
『ひよこはなぜ道を渡る』(小) |
【エリザベス・フェラーズ 訳:中村有希 創元推理文庫】
大好きな、トビー&ジョージシリーズの見納めです。 本当に洒落た英国ミステリと言う感じで、毎回翻訳されるのを楽しみにしていたのですが、5作しかなくて残念です。
それにしても、このシリーズは翻訳が上手い。 原題『Your neck in a noose』なのですが、それを作中のジョージのセリフである『ひよこはなぜ道を渡る』にしたのなんていいセンスだなぁと思う。 で、毎度毎度表紙もかわいいし。
で、中身ですが、ジョージがほとんど出てこなくて、二人の軽妙なやり取りが少ないのが最終巻なのに寂しかった。 ジョージの謎解きへの絡ませ方が、いつもよりも精彩を欠く感じがする。 だからこその、最終巻なのかなぁという気もしましたが。 そうだね、ジョージをもうそっとしておいてあげるのがいいのかしら、なんて思うんですが、トビーと一緒にいる限り安寧はないんじゃないかな。
さて、このシリーズの難しい所は(推理する側としての)探偵役が率先してミスリードしていくところでしょう。 トビーがありきたりな迷探偵であれば、読んでいる側としても、ああ、またあさっての方向へ行っちゃって、と思えばいいのですが、トビーの推理は全部間違っているわけではない。半分くらいはあたってる。 でも最後の最後の詰めで間違ってる。 読者としては、トビーの自信満々な推理のどこが違うのかわからず、仕方ないからトビーの後を付いて歩く感じ。 こういうパターンの推理小説って他に見たことないな。
最後の最後に、ジョージがこそっと、トビーの間違いを指摘してみせるところがまた、粋でいいんですよねぇ。 今回そこのシーンが甘い。 でも、明らかな事件現場に明らかな自然死の死体が一つ、というシチュエーションはフェラーズらしいユニークさ。
全五作、楽しませていただきました。
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