妄言読書日記
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2006年04月12日(水) 『ブロークバック・マウンテン』(映)

【監督:アン・リー アメリカ】

いや、困ったな。どうしよう。
なんと感想を述べたものか。
気軽な気持ちで観に行ってしまったら、思いのほか打撃を受ける内容でした。
エンディングロールが終わった後も、もうしばらく暗闇の中で考えさせてくださいという気持ちになる。
この観終わった後のどうしようもない感じは、昔観た『桜桃の味』という映画にちょっと似てる。あれはまあ、意味がよくわからなかったというのもあったんですが・・・今観たらもう少し理解できそうですけど。

激しい映像も激しい言葉もないし、どちらかと言えば言葉少なめの、静かな映画です。
随所に映る、きれいだけど物悲しい気持ちになる青空と、峻厳な山の風景がこの映画の全てのような気もする。

これは男同士の愛を描いた映画なのだけれど、愛っていうのはどういう形でも美しいとか尊いとかそういう話しではない。
表面的に見れば、ジャックとイニスの20年に及ぶ愛情はけなげであり、二人にふりかかる別れは悲恋と言える。
だけどだからといって、この二人の姿は美しいのか、純粋なのか、と言えばそれはやっぱり違うと思う。
そもそも、愛情が美しくて善良であるという価値観をこの映画に持ってくることが違うんじゃないかと。
善か悪しかない二極化の価値観がこの二人を楽園から追放したのではないか。
それなら、観る側はイニスが妻を欺くことも、ジャックが他の男で餓えを満たそうとすることも、二人の愛の間では美しいものとして観るべきなのか。

私には二人の二十年は、どうしようもなく惨めで醜いものに見える。そして悲しくてもどかしく見える。
それはなんの報いなんだろうと、ずっと思っていた。

ただ、最後にイニスの娘が父を結婚式に招待しにくるシーン、あれがあって少し救われる気持ちになる。

二人の理想郷で、楽園だった、山の光景は美しいのだけれど、楽園と呼ぶにはあまりに険しく、厳しい姿をしていたと思う。
あの山は優しくもなければ、癒しもしない。結局、二人があの山に戻っていけないことの暗示のようにも見えた。

最後に一つ不満なことは、イニスとジャックを男と女に明確に分ける必要があったのかと言う点。

いずれにせよ、気の滅入る映画でした。いい映画ですけど。



蒼子 |MAILHomePage

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