妄言読書日記
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※ネタバレしています
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| 2004年06月08日(火) |
『歩兵の本領』(小) |
【浅田次郎 講談社文庫】
これはかなり面白かった。 浅田次郎は初めてで、お涙頂戴ものなイメージがあって読む気してなかったんですが(失礼)、解説が五條瑛ということで読んでみました。 中身は自衛隊青春グラフィティー、という帯そのまま。 ただし現代の自衛隊ではなく、70年代の自衛隊。 浅田先生の経験が生かされているんでしょうが、それにしても面白い。 そこかしこに散りばめられたユーモアにかなりくすくす一人で笑ってました。 読まず嫌いでごめんなさい。 でも『鉄道員』は読まないと思う。
「若鷲の歌」 滑稽な中にある哀愁に、浅田はこうやって泣かせるんだな、と納得しました。
「小村二等兵の憂鬱」 かなりおかしかったです。 森士長が素敵すぎ。 こっそり洗っててくれたんですねぇ。
「バトル・ライン」 好きでした。 上官を殺してやろうと思ってる話なのに、気がつけば後味すっきり。
「門前金融」 これも笑いました。 借金戦線は着々と広がってるようです。 ランドセルのエピソードは汚いです。泣かせようとしてからに。乗らないぞ! でもやっぱり森士長素敵です。
「入営」 前は本当にこんな風に隊員を確保してたんでしょうか。 今じゃ考えられません。 倍率高いですからねぇ。ああ、でも派遣後はどうなんでしょうね。少しは落ちてるかもしれません。 青春って感じでした。
「シンデレラ・リバティー」 隊員のみなさんはシンデレラ。 切ないです。
「脱柵者」 バディっておいし・・・いいね、という話。
「越年歩哨」 赤間くん再び。 みんなかっこいいなぁという話。 加賀士長も好きです。
「歩兵の本領」 表題作は隊を去っていく人の話。 うまい並べ方ですね。 最後になかったら、隊を去っていく罪悪感や寂しさはいまいちわからなかったでしょう。 しみじみ。
自衛隊問題はとりあえず置いておいて、この小説は小説として面白かった。 でもふと、自衛隊ってんだろうな、とも思う。 五條氏の言うとおり、この時期が一番よかった、なんてことにならなければいいですが。進歩していると思いたいねぇ。
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