妄言読書日記
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2004年03月30日(火) 『絶叫城殺人事件』(小)

【有栖川有栖 新潮社文庫】

新潮社の推理小説ってなんとなく物珍しいです。
帯が仰々しくて可笑しいですよ。新潮文庫さん。
「恐怖は脳髄を貫き絶望は眩暈を誘う」
ホラー小説ですか。これ。

「黒鳥亭殺人事件」
有栖川有栖的ロマッチック表現に、苦笑いしつつ、これまた有栖川有栖な残酷なオチにうなり。
有栖川有栖の残酷さは、事件にあるのではなく、全ての謎が解かれた時に立ち現れるもの。
珍しくやりきれない火村先生。

「壺中庵殺人事件」
密室、という感じの密室。
推理小説の手本、みたいな話でした。
面白味には欠ける。

「月宮殿殺人事件」
作家としては、いちかばちかのネタのように思います。
読者がサボテンに詳しかったら一発でバレるネタですからねぇ。
私は分らなかったですけれど。
花屋で月宮殿、探そうかと思いました。
サボテン面白いですね。

「雪華楼殺人事件」
どことなくどこかで、見かけたようなネタだったように感じます。
有栖川有栖は実際にこういう事件があったと書いていますが、そういうんじゃなくどこかで。
アリスの空想はちょっと恥ずかしい。二人がここでどうやって過ごしていたか、についての。

「紅雨荘殺人事件」
冒頭のシーン、なんの伏線・・・?と思わないでもないですが。
映画観てうっかり涙してるアリスが可愛いので、まあいいです。
火村先生の愛車は復活したのでしょうか。

「絶叫城殺人事件」
絶叫城はゲームの名前。
「刻命館」と「クロックタワー」を足したようなゲームですね。
有栖川有栖はゲームやるんでしょうか。推理作家って、ゲーマーが多いイメージですが。
今回の短編で一番、合理的、論理的、だったと思います。
面白かった。
火村先生、宇多田ヒカルの着メロだと判明。生徒にやられたのか。アリスのいたずらじゃないのー?
連続殺人犯と戦う火村先生のことを心配するアリス。

強く呪われるかもしれない。私はそれを危惧しているのだ。彼はすでに犯罪に呪われ、縛られているというのに。

そういうこと思って、いつも先生にくっついてたんだなぁ、と分りました。ただ、好奇心だとばかり…
もう一個、アリス。

「理不尽にも、ただ殺すことだけを目的に男が行きずりの女を刺す。いつの時代、どこの国でも起こる事件や。その逆は聞かない。俺が女やったら、その事実だけで男を信じない」

そういうことに思い至ってくれるアリスが好きですね。
本当にね。世の男性諸氏は女性の寛大さに感謝して欲しいくらいです。

残酷なゲームや小説や映画が犯罪を引き起こすか、って問題ですけれど、考えるまでもないのではないですか?



蒼子 |MAILHomePage

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