妄言読書日記
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2004年02月25日(水) 『黒い仏』(小)

【殊能将之 講談社文庫】

ああああっ…(頭抱えつつ)

いつものことですが、ネタばれの準備の方はよろしいでしょうか。
まあ、この話に限ってはネタばれしたからと言ってなぁ・・・

殊能、三作目にして大きな爆弾投下、といった感じであります。
いやあ、まさか石動さんが守られキャラだったなんて!!!
そこかよ!という皆様のツッコミが聞こえるようだ。
ちょっとした冗談ですヨ。
本当は石動って清廉なキャラなの!?
そこじゃねぇだろ!!と、どうぞつっこんでやってください。
だってびっくりしたんだもの。
「あんたみたいな汚らわしい化け物と関わっちゃいけない人だ」
なんて言うからさ。アントニオが。

解説で読後別の物語が浮かび上がる、と書いてありましたが、私も別の物語が浮かんだようです。
作者の意図とは全く関係ない予期もしないであろう別の物語が
ところで、アントニオ石動と書くと、どんなレスラーだ、と思われそうですね。
ちょっと強そうな字面だ。

と、下らないことから始めましたが、そろそろ内容をばらしていこうと思います。

『美濃牛』では、なんだか印象に残らなかった名探偵石動。
見た目もぱっとしませんし、ちょっと変な人どまりでしたから。
しかし今回、そのぱっとしない名探偵が、冴えないが故に逆に印象的になりました。
前作ではキャラとしてぱっとしなかったのですが、今回、駄目であることが逆にキャラを立てることになったような気がします。
それもこれも、アントニオの功績だと思いますが。
だって、影ながら化け物から<力>で守ってるんですよ。
私は途中で、この本って退魔針だっけ?あれ、菊地作品??と思ってしまいました。
今度の事件はどんな名探偵だって、解決できないでしょう。
JDCを総動員しても無理かと思います。
時間を遡るは、法力とやらを使うわ、空を飛ぶわ…これは推理好きであればあるほど、受け入れ難い作品かもしれません。

ノックスの十戒なんて、とうの昔に遺物となってはおりますけれど、未だにやはり推理小説に超常現象は御法度、というイメージは根強い。
私は、推理小説に超能力でも幽霊でも怪物でも出てくればいいと思います。
それが、その作品の設定として読者がちゃんと理解できるように書かれていれば。
読者に対してフェアであれば、何出しても良い、そう思ってます。

で、今回のコレですが、フェアなのかどうなのか。
まず、読者が推理することは無理です。
もうこれは、読者をあんぐりさせるために用意された後半だとしか思えません。
特に本格ミステリを愛好する人たちを。
なんとなくイジワルな意図を感じます。
けれど私は、この話しはこの話で有りだと思います。
「悪いけど、ぼくはそういう荒唐無稽な話、だめなんだよ」
という最後の石動のセリフのおかげでしょうか。

途中で、突然、蜘蛛の化け物が出てきた時は本当にどうしようかと思いましたけれど。
な、なにいってるの?え?え????
と。

名探偵と助手、という構図を完全に形骸化したように感じました。
面白かったです。
名探偵の謎解きシーンがこんなにおかしかったのは初めてです。
石動さんとアントニオのこの後のシリーズがどうなっているのか非常に気になりますね。人類の存亡がどうなったのかも。
前作では、まさかアルバイトのアントニオがこんなキャラであるとは思いもよらず(ラストでちょっと登場しただけ)。
思った人は凄いというより、考えすぎの人です。

ところで、前作から石動の容貌が想像できず、今回も悩んでいたのですが、わかりました。
三谷幸喜です。
私の中で、石動はこれから三谷幸喜の姿形で想像されることになると思います。
こんなイメージじゃないですか?石動って。



蒼子 |MAILHomePage

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