冒険記録日誌
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2021年05月20日(木) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その18

 ミノタウロスの住む迷宮に入った拙者じゃが、今まで過去の拙者たちが散々探索したのじゃ。すでに地図はしっかりつくられておる。
 ここで読者に、この迷宮の状況をご教授しんぜよう。
 この迷宮の構造は、2階へあがる階段があったり、炎の燃え盛る床や、方向感覚をみだすトラップなどがあって一見したところ複雑そうじゃが、実は立ち止まる箇所を1ブロックとすると、8×8ブロックの碁盤上に近い構造をしているシンプルな迷宮じゃ。迷宮内は全部で70ブロックくらいあるので正確な正方形ではないがな。
 とちゅうで遭遇する光景や迷宮に落ちている品物はほとんどが罠で、ヒントを使用したり品物を拾おうとすると、いたずらに名誉点を消耗したり恥辱点を増やす結果になるものが、ほとんどじゃ。いつぞやの時のように、ひどいときにはミノタウロスの不意打ちまでくらうこともある。しかし、それらを無視して移動するかぎりは、この迷宮はまったく安全なのだ。
 各通路にはヘラクレスやペルテウスなどの英雄物語を彩る壁画などもあるが、これも地図に書き出してみると、兄じゃテセウスの遺骸が眠っている部屋まで向かうヒントになっている。ほかにもNとかOとか記号の刻まれている箇所がいくつかあったが、これは意味があるのかわからなかったな。

 そんなわけで拙者はほどなく、テセウスの遺骸の眠る部屋にたどり着いた。ここで少しばかり拙者は迷った
 ここでテセウスの剣を拾うかどうかの選択肢があるのじゃが、拾うとその直後にミノタウロスの不意打ちをうけてしまい、“軽傷”の状態から戦闘を開始しなければならないのだ。これは痛い。戦闘で、もう一撃でもくらえば拙者は“重傷”状態となり、勝利はほぼ絶望的だからだ。
 テセウスの剣の威力はきわめて強力で魅力的じゃ。じゃが、今回は拙者は鍛冶屋の神ヘパイストスに賜った魔法の武具を装備しているのだ。そこで拙者はその剣を拾わずに、兄じゃの遺骸に一礼をすると通路側に向き直った。
 案の定、そこにはミノタウロスが待ち構えていた。
 守り神に勝利の祈りをささげると(名誉点1を得る)、拙者は剣を正眼にかまえて、ミノタウロスの凄まじい突進を迎え撃ったのだった。

 まずは先制攻撃じゃ!以前のように戦いの神アレスの加護を受けておらぬうえ、テセウスの剣を使わない拙者は攻撃力が不足気味じゃ。クリティカルヒット(攻撃のさいのサイコロで11・12の目がでたら自動的命中)以外ではミノタウロスに傷ひとつ負わせることができん。
 そこで攻撃のたびに名誉点を7点消耗して、確実にダメージを与えることを心がけた。この戦いで負ければ、名誉点など惜しんでも意味はないのだ。
 ミノタウロスの突進をかわしながら、斬りつける!じゃが、ミノタウロスは毛ほども痛みも感じぬとばかりに、猛烈なパンチを繰り出してきた!
 防御まで名誉点を流用する余裕など本当はないが、サイコロが7以下の目で攻撃を受けてしまう。とっさに1点だけ使用。これで傷を負うのは6以下の目となり防御が半分以上の成功率となる。
 かがみこむ拙者の頭上をミノタウロスの腕がうなりをあげて、通り越していく。次の攻撃も名誉点7点消耗して攻撃成功。しゃがんだ状態からバネのように体を伸ばして、刃でミノタウロスの厚い胸板を薙ぎ払った。これでミノタウロスは重傷状態のはず。
 が、なんたること!ミノタウロスは拙者の体を持ち上げ投げ飛ばしたではないか!(ミノタウロスの攻撃成功)
 悪魔のミノタウロスは最後の一撃を無効にしたのだ!(ミノタウロス戦に限り、もう一撃余分に攻撃を成功させる必要がある)
 壁に叩きつけられた拙者にミノタウロスが串刺しにせんとばかりに頭のツノを向けて突進して襲い掛かる!
 ぬぅぅ!ゼウスよ!守り神よ!兄じゃよ!このアルテウスの戦いをしかとごらんになれ!
 床を転がるように交わす拙者。振り返るミノタウロス。悪魔の背中に剣を突き立てる。吼えて暴れだすミノタウロス。振り落とされぬよう背中にしがみついて必死で剣をさらに深くえぐりこませた。
 戦いの決着はついた。3度の傷を負ったミノタウロスは今度こそ重傷となり、神の防具に身を固めた拙者にはダメージを与えられなくなったのだ。もう名誉点を消耗することもない。
 そのまましばらく戦闘が続き、やがて拙者の剣が(クリティカルヒット)ミノタウロスの首を切裂いた。ミノタウロスはしばらくもだえていたが、やがてどぅと倒れ、口から血を吐いた。
 それがミノタウロスの最後だった。(名誉点を15点得る)

 やったぞ!ついに拙者はミノタウロスを退治いたし、兄の仇を討ち取った!
 ここで迷宮内が大きく振動しはじめる。地震が治まると、ミノタウロスの骸は天井から落ちてきた瓦礫の山が埋めていた。奴にはふさわしい墓場となったわけだ。

 だがこれで困ったことになった。というのも、地震のために迷宮の様子が一転してしまい、出口への道がわからなくなったとの事でござる。
 史実では兄上テセウスは、アリアドネ姫からもらった毛糸の玉を使い、入り口から糸をたらして帰り道の道しるべとしたようだが、残念ながら今回の冒険ではそのような物をもらっておらんかった。
 仕方なくあてどもなく迷宮内をさ迷い歩く。(なお、帰りの迷宮は双方向システムではない)
 出口が見つからぬまま、どのくらい時間がたったろう。疲れ果てて、拙者は通路に腰をおろして休みをとっていると、ふいに目の前に青いドレスの女の姿が見えた。幻覚か?
 「アルテウス。私は出口を知っているわ。こっちよ!」
 幻覚ではなかった!なんとアリアドネ姫が拙者を探しに迷宮内に降りてきていたのだ。
 拙者はアリアドネ姫に引っ張られるように迷宮の中を進み、やがて陽光の差す出口へとたどりついた。礼をいう間もなく、アリアドネが拙者に抱きついた。
 「アルテウス。いとしい人!私をお嫁さんにして!」
 拙者は一にも二にもなく頷いた。アリアドネ姫の用意したボートに乗り込むと、拙者らは父上の船へと向かった。
 船長は拙者を見て大喜びしてくれた。すでに生贄となる予定だった14人の若者も脱出に成功したらしく、船の上で笑って歓迎してくれた。
 さあ、拙者は帰るのだ。王子として夫として、祖国に。

第二部 完

by銀斎


2021年05月19日(水) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その17

 次の朝になった。
 あの皮肉屋の老人ディプティスが反乱を計画したかどで投獄されたりと、他にも宮廷内ではいろいろ大騒ぎがあったようじゃが、説明するとややこしくなる内容は端折っておく。
 さて、いよいよ決闘の時間がやってきた。決闘はデメテル神の神殿内で行われるそうだ。
 ここクレタのデメテルの神殿は、拙者が第一巻で体験したデメテル神の神殿と大きくは変わらない。
 水の入った壷と、穀物の入った鉢が祭壇に供えてあるのも一緒だ。
 しかし、さらに首をはねたサギの頭が供えられている。さらに厳しい護衛に囲まれた、この後生贄となるアテネの7人の青年と7人の娘たちの姿も見えた。生命と成長と豊穣をつかさどるデメテル神への祭りとしては、クレタ人のやりかたはなんとも冒涜的じゃ。
 まっておれ。アテネの若者どもよ。拙者が必ず助け出してみせるからな。

 高僧のパングリオンが声高に宣言をした。
 「女神デメテル。我々はあなたを讃えるため、ここで二人の若者が戦います。競技者よ。前に出よ」
 対戦相手のクレムトンが、腰布一つの裸になって、腹をピタピタ叩きながら、大股でリング内を歩き回っている。
 「まるでチャンピオン気取りだな。アルテウス、君の健闘を祈るよ」
 オプリスが拙者の上着を脱がせながら、激励してくれる。向かい側の貴賓席を見ると、なんと(今回の冒険では)初対面のアリアドネ姫が、拙者に向かって投げキッスをしてくれたではないか。
 よーし、やる気が出てきたでござるよ!

 決闘がはじまった。パンクラティオンという競技らしいが、内容はボクシングのようなものらしい。
 この決闘は通常の戦闘ルールではない。説明すると次のとおりだ。

1.攻撃するときはヘッド、内股、ボディの三箇所のうちどこを攻撃するか決め、サイコロを一つふって、クレムトンがどこを防御していたか判断する。
2.うまく攻撃を当てられたら、ヘッドは3点、内股は2点、ボディは1点を相手の持久点から引く。
3.次は反対に拙者が三箇所のどこを防御するか決め、サイコロを一つふって、クレムトンがどこを攻撃してきたかを判断する。ダメージも同じ。
4.以下、この繰り返し。先に持久点が0になったほうが負け。

 クレムトンの持久点は50点。拙者は47点。
 決闘のルールをもう一度よく見て考えた。理屈ではヘッドは6分の1、内股は3分の1、ボディは2分の1で命中することになっている。つまり、内股への攻撃が一番効率がいいのではないか?
 そこで、拙者はひたすら、クレムトンの内股を攻撃し、自分の内股を防御し続けた。案の定、最初は互角の戦いだったが、少しずつクレムトンの方の持久点が減り始める。
 「とどめじゃ!」
 拙者の最後の一撃が決まるとクレムトンは、リングに崩れ落ちた。すさまじい戦いに群集が歓声をあげる。ここで選択肢があった。「クレムトンを殺すか、助けるか」
 ミノス王との約束ではクレムトンを殺さなければならない。しかし、拙者はそのまま黙ってリングから降りて、オプリスと勝利を祝いあった。
 動かない者を殺すのは恥ずべき行いじゃからな。

 「血が流された!」
 ミノス王の突然の大声に、拙者は驚いて振り返る。なんと、クレムトンは小姓たちによってハンマーで頭を割られているではないか!
 「血は血であがなわなければならない。デメテルよ。この異国人の犠牲を受けたまえ。衛兵ども、こいつを迷宮に放り込め!」
 ミノスの号令と共に大勢の衛兵が拙者を取り囲んで押さえつけた。なるほど、どのみちミノスは最初から裏切る気だったのだ。
 そのとき、拙者と友好関係にあったデメテル神が、オリンポスから拙者の体内に光臨した!
 自分でも信じられぬ怪力で衛兵どもを投げ飛ばすと、高僧パングリオンにつめよる。デメテルは拙者の口を借りて宣言した。
 「パングリオン!お前は私の祭りを、人間の忌まわしい一面である死の祭典へとおとしめた。さあ、その報いを受け取るがよい」
 そのとたん、パングリオンは全身がオレンジやマンゴーやバナナなど無数の果物でできた奇妙な像へと変わった。静まり返る神殿の人々の前で、それらはしばらく人型になっていたが、やがてくずれおちて果物が祭壇中にころがっていった。
 女神は去っていったが、拙者は声をかぎりに叫ぶ。
 「拙者の武具をもってこい!自ら迷宮に入って、悪魔を綺麗さっぱり退治してやろう!」
 全ての武器と防具がすみやかに運んでこられた。まだ、騒然としているクレタの人々をチラリと見てから、迷宮へつながる穴へと飛び込む。(名誉点5を得る)
 さあ、時が来た。今度こそ、ミノタウロスを退治して見せようぞ!

by銀斎


2021年05月18日(火) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その16

 次の日の朝、宮廷内を軽く散歩するがタイジアの姿は見えなかった。
 彼女はスパイのはずじゃから、いないほうが好都合ではあるが。
 「彼女ならお母さんの元へ帰ったわ。お祭りが終わるまでは帰ってこないわよ」
 アンドラという女性が、タイジアのことについて拙者に教えてくれた。
 「そんなことより、私と恋愛の価値についてじっくり語り合わない?」
 折角の誘いじゃが、拙者、もう少し宮廷の様子を見ようかと考え、誘いを断っって一人で宮廷内をしばし散策する。
 廊下のとおりすがりに2人の男女がなにやら話し込んでいるのが見えた。
 男のほうは昨日、王の息子のクレムトンと一緒に酔っ払って乱入してきた奴だ。
 拙者の存在が気にかかるのか、男はこっちを見て出て行いった。すると女性が拙者の胸に飛び込んできたではないか
 「アルテウス、愛しい人!あなたはあのしつこいミトクロスの誘いから、助けてくだすったのよ!」
 わけがわからないでござるが、いい気持ちじゃわい。ぶるる。いかんいかん。何事にも冷静にいかねば いかんぞ。
 「私はプシケ。果物は外皮じゃなくて、中身を見ることよ。そうすればあの色っぽいアンドラの虜にならずにすむわよ」
 プシケと名乗った女性はにっこりして、その場を去っていった。
 誰が敵か味方かわかりにくいのぅ。もっと刃を交える戦いの世界の方が拙者には楽でござる。

 それから夕方までは気を引き締めるため、修練場にいき、衛兵長のポリクラテスとボクシングの練習をして汗を流す。<持久点+10>
 練習が終わり、ポリクラテスが汗をふきながら、感心したように言った。
 「本気になればお前はなかなか強い。いまの稽古が役に立つといいがね」
 「礼を言うでござる。が、役にたつとは?どういう意味かの」
 「なーに、今にわかるさ。さあ、昼食の時間だ」
 ポリクラテスは意味ありげにかすかに笑って、先に修練場から出ていった。

 廊下の途中で拙者はミノス王に会う。王は共の者も従えず一人きりであった。ミノス王は厳しい目でこちらを見つめて、いきなりこう切り出した。
 「わたしはお前を観察してしたのだ。アルテウス、お前は賢い。いつの日にかお前はアテネの王になるだろう。だが、クレタの王になることもできようぞ」
 ふむ、以前にあった展開に戻ってきたな。つまり、王は酔いどれ息子のクレムトンに変わって、拙者が王になるつもりはないか?と問うているのだ。
 前回は、きっぱりとはねつけた話じゃが、今回は王の提案にのってみることにいたそう。
 「よく言ったアルテウス。してその手段だが、お前は祭りの日の朝、儀式に則ってクレムトンと戦うのだ。その間になにが起こっても不思議はないだろう?」
 「もし拙者が負けたら?それにクレムトンと拙者は戦う理由がないでござろう」
 「お前が負けたときは、お前が死ぬだけだ。しっかり訓練しておくといい。これから昼食の席だ。お前はクレムトンをうまく侮辱すればいい。あとは、私がお前とクレムトンを決闘せざるえないようにしむけよう」

 そのようなやりとりの後、宮廷の面々が集まっての昼食会が始まる。王の配慮なのか、クレムトンは拙者とテーブルを挟んだ対面に座っていた。
 何気ないそぶりで、熱い野菜シチューの鉢をクレムトンに向かってこぼす。クレムトンはシチューが自分の膝に滴っているのを一瞬呆然と見つめたあと、すぐに大声をあげて飛び上がった。
 「やりやがったな!アテネの虫けらめ。明日のデメテルの祭りで決闘だ。貴様が血みどろになって命乞いするまで殴りつけてから、殺してやるからそう思えよ!」
 こう叫ぶや、彼はシチューの滴る股間を押さえて、食堂を飛び出した。
 くくくっ。奴のあまりの単純な引っかかりように、拙者、笑いをこらえるのに懸命であったわい。
 ざわめく宮廷の人々の前で、黙って経緯を見ていたミノス王が、今がタイミングとばかりに大声で宣言をする
「クレムトンの言うとおりだ。彼には決闘を申し込む権利がある。明日の祭典で二人は戦うのだ!どちらかが死ぬまでな」
 つまり拙者がどう選択肢を選ぼうと、クレムトンとの戦いは避けられないわけじゃな。
 拙者も傲然と決闘を受けてたつと、宣言をしてから、大騒ぎになった食堂を立ち去り、自室に戻る。

 さて、ここからだが以前と同じ選択肢を選ぶのも芸があるまい。
 そこで今回は大勢の奴隷たちが働く調理場へこっそりとしのびよる。
 一心に聞き耳をたてるときれぎれに彼らの話し声が聞こえてくる。
 「……でも彼は民衆をそそのかしているところを連中につかまって……」
 「……メロンの蔵をほじくって、あれをすっかり見つけ出したそうだ……」
 ふむ、きなくさい噂じゃな。はっきりとはせぬが、ミノスに反旗を翻す者どもがいるということか。(情報点4得る)

 その後、拙者はアンドラの強引な誘いにのって舞踊会に出席する。ここは以前の冒険で暗殺者にやられたシーンだ。このまま進めては、殺されてまたゼウス神の厄介になる羽目になる。
 アポロが守り神か、酒の神ディオニソスと有効関係か、という選択肢もあったが、残念ながらどちらも該当しない。そこでヒントを使うと、踊り手の一人のサンダルから刃が飛び出しているのに気づく。その踊り手がふいに拙者に蹴りかかってきた。
 とっさによけたが、なんたること!暗殺者の蹴りはアンドラにあたってしまい、失敗した暗殺者は呆然とした群集を押しのけすばやく逃げ出してしまった。
 アンドラは死んでいた。刃には毒があったのじゃ。目の前の女性を守れなかったとはなんたる不覚!(恥辱点2増える)

 夕方になった。拙者は雄牛とびの訓練の続きをすべく、グラビアの待つ地下の訓練場に向かった。
 「上出来よ。まだ貴方のお兄さんほどではないけど、優等賞はあげられるわ。明日の決闘をがんばりなさい」
 夜も遅くなるほどの訓練のあと、ついにグラビアは拙者の胸に金の雄牛のブローチをつけて認めてくれた。(持久点5点、名誉点2点得る)
 しかし、いちいち兄者と比較しないで欲しいものである。
 くたくたになって、自室のベットに横たわる。
 明日こそデメテルの祭典。ミノスがアテネからの人身御供をささげる日だ。そして、拙者はクレムトンとの決闘が待っている。

by 銀斎


2021年05月17日(月) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その15

 拙者は何度目かの復活を果たして薄目を開くと、ここは船の上だった。
 「まったく、なにやってるんだ。お前は修学旅行で酒を飲んで先生に見つかった高校生か」
 やれやれ、何の意味だかわからぬが、ヘルメスの嫌味にもすっかり慣れたわい。

原攻撃点  4  ヘパイストスの剣(攻撃力+4)*
原防御点 10  ヘパイストスの胸当て(防御力+4)*、ヘパイストスの盾(防御力+4)*
名誉点  23
恥辱点   6
所持品  母の宝石、アイゲウス王からの親書、メダル(戦闘時に攻撃力か防御力のどちらかに+2の効果)、ブローチ
* 神々やそれに属する生き物との戦闘では、ポイントが6に増える。
* 守り神はポセイドンのまま。

 船から降りると、ミノス王に会いに行った。ミノス王に親書を手渡し、客人として世話になることになった。
 歓迎の宴も徐々に解散の時間が近づいてきた頃、老人ディプティスの部屋にいく。
 老人ディプティスは、以前の冒険と同じく、宮廷の内部事情を拙者にもらしてくれた。(情報点4を得る)
 それにしても客人扱いとはいえ敵国の王の息子に、このような内情をあけっぴろげに話しをするとは、ディプティスとはどういう人物であろうか。

 その後、宮廷でひらかれた舞踊会に出席した拙者は、しばしタイジアと楽しく時を過ごした。(ただし踊りの途中で滑って転ぶ失態があったため、恥辱点1を加える)
 タイジアは二人で外に出ましょうと誘いかけたが、拙者は断った。タイジアは気を悪くしたように肩をすくめて踊りの輪の中に入っていった。
 そして拙者は舞踊会場を去り、老人ディプティスに出会う前に声をかけられた、クラビアという女性のもとを尋ねる。
 彼女は拙者に雄牛跳びを教えてくれると言っていたのだ。
 その訓練室は地下室にあり、雄牛の角のようなハンドルを生やした木馬の傍で彼女は待っていた。
 「あれを飛び越えてごらんなさい」
 なんのこれくらい。拙者は彼女の命じるままに、二三度、逆立ちをしてから、おもむろに木馬に飛び乗った。
 しかし、ハンドルを掴んでバランスをとろうとすると床に投げ出されてしまう。
 「はっ、田舎者!もう一度やり直し」
 彼女の厳しい声が飛んでくる!はぅ!
 拙者はハァハァあえぎながら、しばらくの間、懸命に木馬と格闘に明け暮れた。
 「よろしい。貴方のお兄さんほどじゃないけど、まずまずね」
 クラビアは満足げに拙者の胸に、小さな銀の雄牛のブローチをつけた。(持久点2、名誉点1を加える)
 「これであなたは、雄牛跳びをなかば習得したわ。明日の夜、仕上げにきなさいな」
 うむむ。厳しい女性というのもなかなか良いものでござるな。あの鞭のように鋭い声がな。ごほ、いかんいかん。
 その後、拙者は自分にあてがわれた部屋で、ぐっすりと睡眠をとり、長い一日の疲れを癒したのだった。

by 銀斎


2021年05月16日(日) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その14

 船はゆっくりとクレタ島の港に接近する。
 拙者は何度目かの復活を果たして目を開いた。
 「いさぎよいのはいいが、ゲームが進まないぜ。サムライボーイ」
 ヘルメスが呆れ顔で言うと姿をかき消した。
 拙者だって本意ではなかったわい。ルールが悪いのじゃよ。
 ミノス王の宮廷から始めるので、守り神はポセイドンのまま。状態は次の通りだ。

原攻撃点  4  ヘパイストスの剣(攻撃力+4)*
原防御点 10  ヘパイストスの胸当て(防御力+4)*、ヘパイストスの盾(防御力+4)*
名誉点  23
恥辱点   6
所持品  母の宝石、アイゲウス王からの親書、メダル(戦闘時に攻撃力か防御力のどちらかに+2の効果)、ブローチ
* 神々やそれに属する生き物との戦闘では、ポイントが6に増える。

 船から降りると、ミノス王に会いに行った。お馴染みの歓迎パーティやら、奴の息子の狼藉騒ぎやら、もう見飽きた光景があった後に、ミノス王に親書を手渡し、客人として世話になることになった。
 歓迎の宴も徐々に解散の時間が近づいてきた頃。
 「もしお暇なら、ちょっと話しがしたいのだが。わしの部屋に来てくださらんか」
 先程、大胆にもミノス王に皮肉を言っていた老人ディプティスが、杖にすがって拙者に近づき、そうささやくと去っていった。
 「アルテウス、今晩集まってちょっとやろうと思うんだ。仲間にはいらないか」
 若い宮廷人のオプリスとラクトリスが、酒を飲む仕草をしながら誘ってくる。
 今回はオプリスとラクトリスにつきあって、彼らの部屋で酒を飲むことにした。

 それがいけなかった。
 実は祭りの前には、酒を飲む行為は禁じられていたらしい。そうとも知らずに、一緒に酒を飲んでいた拙者を神官が発見してしまったのだ。
 拙者たち3人は部屋からつまみ出された。
 「あいや、またれい!実はオプリスとラクトリスに誘われたのじゃ。拙者そんなこっとは露知らず」
 「連帯責任だ。オプリスとラクトリスも後でしかるべき処罰を受ける。お前は牢獄行きだ」
 こうして拙者は、またしても牢獄ですごすことになった。そしてそのまま、丸腰で迷宮に挑むことになる。
 結果は予想通り。ミノタウロスに負けてまたやり直すことに。
 迷宮の地図が完成したことが、せめてもの救いでござる。

by 銀斎


2021年05月15日(土) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その13

 そのあと、女神デメテルを称える舞踊会に参加することになる。
 しばらくアンドラという女性と一緒に踊っていると、不意に腹に激痛が走った。
 見ると、サンダルから鉄の刃を飛び立たせた男が、逃げていくではないか!何者かが雇った暗殺者らしい。
 傷は浅いが刃物には毒が塗ってあったようだ。薄れ行く意識の中で拙者はゼウス神に祈った。

 医神アスクレピオスの面影がまぶたに浮かび、拙者はベットから飛び起きる。(持久点5を失う。また、ゼウスに復活させてもらったので、名誉点1、恥辱点0の状態になる)
 なんとか助かったらしい。それでも、名誉点の貯金がなくなったのは痛すぎるわい。
 窓を見ると夕日が見え、長い一日も終わろうとしていた。

 深夜になった。拙者は自分の寝室を抜け出して探索を続ける。
 石の階段を上り、ぶらぶらと人気のない宮殿の最上階へ向かってみると、カシの木で作られた立派な扉が見えた。隣には大きく口を開けたカエルの像が飾られていて、何となく奇妙な光景じゃった。
 扉を開けようとすると、カエルの口から矢が飛んできて、拙者のこめかみに突き刺さる。
 拙者は薄れ行く意識で、もう一度ゼウスに祈った。

 ハッ、とベットで目を覚ますと、窓からは明るい光が見える。もう明け方が近かった。
 やれやれ、連続でゼウス神に祈る羽目になるとは、油断しすぎたな。もうゼウスは願いを聞いてくれないぞ。
 大広間に行ってみると、なにやら様子がおかしい。宮廷の重鎮たちが、お互いに錯乱したり、なだめたりして騒いでいる。拙者の知らない間に宮廷の裏ではいろんなことがあったらしい。(恥辱点1増える)
 自分の部屋に引き返すと、やがてオプリスが鎮痛な面持ちでやってきた。
 「どうしたのじゃ?」
 「ラクトリスが死んだ。しかも、たぶんにわれわれの手落ちからだ」(恥辱点がさらに1増える)

 なに?

 ちょっと待て。

 置いてけぼりの展開もさることながら、恥辱点を1加えよ、じゃと!?

 ゼウスに復活させてもらったばかりの拙者は、名誉点が1しかないんじゃぞ!

<注:このゲームでは、恥辱点が名誉点を上回ったら、ゼウスに雷に打たれて死ぬか、英雄としての良心に耐えかね自害して、ゲームオーバーになるのだ。> 

 うおおおおぉぉぉぉぉぉ!
 なんと拙者は不名誉なことをしでかしてしまったのじゃ!
 「な、なにをするつもりなんだ。アルテウス!」
 オプリスは突然、部屋においてあった剣を抜いた拙者の行動にうろたえて叫ぶ。
 拙者の名誉はまったく失われてしまった。
 ただ、一つだけ名誉ある行動が残されている。拙者は切腹すべきなのだ。
 自分の剣を腹に向け、みずから死をえらぶ勇気を奮い起こす。この世に別れを告げる切腹の儀式によって、拙者は侍の面目をたもつことができるのだ。
 いざ!さらば!



by 銀斎


2021年05月14日(金) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その12

 廊下を歩いていると、ばったりとミノス王に出会った。いや、ミノス王が待っていたのかもしれない。彼はお供の人間もつけずに、拙者の前に立ちふさがった。
 「わしはお前を観察してしたのだ、アルテウス。アイゲウス王の息子よ、お前は賢い。いつの日にかお前はアテネの王になるだろう。うまくすれば、このクレタの王にもな」
 拙者はだまって聞いていた。クレタの王になれるだと?どういうつもりなんだ。たまらずヒントを久しぶりに利用してみる。

―――キョロキョロするな!恥辱点1を負って四二七へ戻れ。

 「わけがわからんわ!」
 拙者が思わずつぶやくと、ミノス王はそれを自分への返事だと思ったらしく、うなづいて言葉を続けた。
 「わしは無からクレタをここまで築き上げた。だが、わしの愛する3人の息子は全て事故で死に、跡継ぎはあの飲いどれの馬鹿息子クレムトンただ一人のみ。奴に王座をつがせれば、この国はめちゃめちゃになるのは間違いがないのだ。わしは王だ。奴が死に、わしの眼鏡にかなった奴が次の王になるべきなのだ」
 王の意図はわかったが、拙者はどうにも胡散臭さを捨てきれずにいた。この宮廷にやってきたばかりの拙者を、王にしようと考えるなど、普通ありえるだろうか。
 「王よ。自分の息子を殺せと拙者にいいなさるのか。悪いが拙者、そんな侍の風上にもおけぬ振る舞いはできぬ」
 「さあ、どうかな。お前はクレタを手中に収める絶好のチャンスを、むざむざ捨てようというのだぞ。まあいい、昼食の席で会おう」
 ミノス王は肩をすくめるとさっさと立ち去ってしまった。拙者は立ちつくしたまま、今の出来事を慎重に吟味していた。

 しかしその後、事態は思わぬ方向へ向かってしまった。
 大広間に入り宮廷の人々と一緒になって、果物と熱い野菜のシチューの昼食を堪能していた拙者だが、あとからやってきたクレムトンがわざとらしく拙者にぶつかって、突き飛ばしたのだ。
 「邪魔だ、よそ者め」
 あまりの無礼な振る舞いに、パンチで報復すると、クレムトンももんどり打って床に倒れる。奴も怒りの表情で立ち上がると、拙者に飛びかかろうとした。
 「そこまでだ!」
 ミノス王がいかめしい顔で一喝して、その場を止めた。
 「気をしずめて、精力をためておけ。明日の祭りでお前達は拳闘試合をするがよい。豊穣の女神デメテルは、どちらかが命乞いするか死ぬまで、リングで殴り合うことを要求している。それまで2人は離れておれ」
 ミノス王は手を振って、昼食会は解散となった。
 やっかいなことになったと思う。ミノス王はこの機会をとらえて、公式の場でクレムトンを殴り殺すように、拙者に要求しているのだ。

 少し時間をもてあましたので、アリアドネ姫の部屋に向かってみた。
 今回の冒険ではまだ彼女とは出会っていない。一度は面会しておいたほうがいいじゃろう。
 アリアドネ姫の部屋の扉では、アマゾンの女戦士が一人で門番をしていた。レンブラだ。
 彼女にアマゾンの女王からいただいた宝石のブローチを見せると、レンブラは拙者に敬意を示してあっさりと通してくれる。(名誉点1を得る)
 アリアドネ姫は、物怖じせずに拙者の話し相手をしてくれ、毛糸の玉をくれた。
 「これはなんでござるか」
 「あの兄(ミノタウロス)のいる迷宮に放り込まれた時に、使うといいわ。毛糸の端を入り口に結び付けて歩いていけば、いつでも毛糸をたどって入り口まで帰ってこられるから」
「なぜ拙者が迷宮に入るのでござるか?」
 拙者は少し驚いた。彼女は拙者がミノタウロス退治にきたのを知っているのだろうか。しかし、彼女の答えは違うものだった。
 「あら、だって父(ミノス王)は、どのみちあなたを迷宮に放り込んでミノタウロスへの生贄にするつもりだもの。あなたは気づかなかったの?生贄を差し出すのは許してほしいというアテネの願いは、絶対に応じられないのよ。そうすればクレタは滅亡してしまうから」
 やはり、食えない奴であったな。ミノス王は。
 「でも、あの迷宮を通り抜ける簡単な秘訣があるわ。それは……」
 アリアドネ姫が言いかけたとき、レンブラがあわただしく部屋に入ってきて拙者を部屋の外に連れ出した。
 「誰かがやってくる。アルテウス!さっさとここからお逃げ」
 あの迷宮の地図はすでに大部分は完成しているが、姫の言葉が気になるでござるな。

by 銀斎


2021年05月13日(木) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その11

 朝日がやさしく窓辺から差し込む。拙者はベットの上で、薄くまぶたを開いた。
 かたわらにはタイジアが、傍で横になっていた。拙者が目を覚ましたのに気がつくと、彼女は微笑んで拙者の唇に接吻をする。
 「ねぇ。あなた、自分が寝言をいうのをご存知?」
 「いや…?何か言っていたでござるか」
 旅の本当の目的を喋ってしまったのではないかと、少し不安になる。タイジアはベットから起き上がり、きらびやかな黄金の腕輪を腕にはめ、化粧台に座ると香料を顔にすり込み始めた。
 「あら、別になんでもないのよ。食事にいきましょうか」
 オリーブやブドウを軽くつまんだ後は、オプリスの誘いもあって、海にタイジアともどもボートに乗って漕ぎ出した。沖の波がやさしくなったところで、ボートを停止させる。
 船の中は広いのでしばらく寝転がっていると、オプリスが世間話しをしたがってきた。
 「まあね、僕は死人の悪口を言うつもりはないのだが」
 オプリスはそういって、ミノタウロスを生んだミノス王の妻の話しを始めた。
 彼の話しが本当なら、ミノス王の妻は相当にひどい人物だったらしい。なんとなく憂鬱な気分になって立ち上がると、ボートが揺れて拙者の体は海に落ちてしまった。
 ポセイドンの加護のおかげか、溺れることなくボートの淵にしがみついて、オプリスに引き上げてもらったが、服はびしょぬれだ。
 「大変!オプリス、早く陸へ向かって!アルテウスさんが風邪をひいたら大変だわ。早く宮廷に戻って着替えしなくちゃ」
 心配しなくてもいいと言ったのじゃが、タイジアは頑固に拙者につきそって、ミノスの宮廷まで戻ってきた。うむうむ、良いおなごじゃのー。

 「これで、いいわ。じゃあ、私も着替えるから、後で私の部屋にきて。おねがいよ
 拙者の着替えが終わり、今度はタイジアが自分の着替えに部屋に戻っていった。それにしても、タイジアの目はつややかじゃったな。
 「何をやっている。アルテウス」
 声がした方を見ると、ディプティスが自室の扉の影から手招きをしている。不審に思いながらも、老人の話しを聞くために近づくことにした。
 「タイジアの部屋にいくつもりか」
 「そ、それは拙者の勝手でござろう」
 老人は厳しい目で拙者を見据えた。
 「いかにもそうだな。しかし、わしがあんたの立場ならもうすこし慎重に考えるな。例えばタイジアがなぜそなたに接近したのか、などな」
 「それは拙者の魅力というものでござる」
 「そうか、ならばいい。それではなぜ、彼女がミノス王から高価な黄金の腕輪を与えてもらったのか、知りたくはないか。わしなら、なぜかと疑問に思うがね」
 そこまでいうと、ディプティスは部屋の扉を閉めてしまった。
 な、なんじゃと。
 ぬぬぬ。ディプティスとタイジア、どちらを信じるべきか。ここは重要な選択肢でござるな。

 「ツバメ殿。正直に話してくれ」
 ツバメとはタイジアの愛称である。拙者はタイジアの部屋で、静かに彼女に問いただしたのだ。
 タイジアは涙を流し、すすり泣きながら答えた。
 「ええ、ミノスからあなたの目的を探り出せと命じられたわ。本当は嫌だったけど、仕方なく。そうでなかったら、私しなかったわ。絶対に」
 緊張に耐えかねたのか、彼女はそこまで言うとわっと泣き出した。
 拙者がひしと抱きしめると、彼女は徐々に落ち着いてきた。
 「ここを出て行くわ。ミノスの怒りから逃れる為に、母のいるクレタ南部の羊飼いたちの所に帰るの。お願いアルテウス、私を許して。時々は私のことを思い出してね」
 悲しみにつつまれながら、拙者はタイジアの部屋を出た。
 食堂から昼食を知らせる鐘の音が聞こえる。食欲はないが、行った方がいいだろう。

by 銀斎


2021年05月12日(水) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その10

 歓迎の宴も徐々に解散の時間が近づいてきた。続いてこの広間では舞踊会が催されるらしい。
 「もしお暇なら、ちょっと話しがしたいのだが。わしの部屋に来てくださらんか」
 先程、大胆にもミノス王に皮肉を言っていた老人ディプティスが、杖にすがって拙者に近づき、そうささやくと去っていった。
 「アルテウス、今晩集まってちょっとやろうと思うんだ。仲間にはいらないか」
 若い宮廷人のオプリスとラクトリスが、酒を飲む仕草をしながら誘ってくる。
 ここでの選択肢は5つもある。
 このまま舞踊会に出席するか、ディプティスに会うか、若者たちと酒を酌み交わすか、あてがわれた自分の寝室に戻るか、この隙に迷宮へこっそり進入するか、だ。
 宮廷の中では武具を持ち歩いていないので、今、迷宮に入っても駄目じゃろう。
 考えたあげく、ディプティスに会いに行くことにする。

 ディプティスの部屋は相当に広く、そして風変わりじゃった。部屋の中央に大きなプールが水をたたえており、その中には人工のちゃんと土で作られた小島が浮いているのだ。小島には植物も生えており、二頭の犬のような奇妙な生き物が島を動き回り、何かの肉の固まりを貪っている。
 プールの傍ではディプティスが、無感動な顔つきで肉を投げ与えていた。奴は拙者がやってきたのをチラリとだけ見て確認したあとで言った。
 「ダイダロス(あの迷宮を作った設計主)が竜の卵を持ってきてくれたんだ。宮廷の馬鹿者たちは、私が子供も育てずに竜を育てていることをあざ笑うが、子供より竜の方がずっとましさ。こいつらは私に感謝もしないし、私もそれを期待しない。父親のように裏切られることもないというわけだ」
 なるほど、ディプティスは正真正銘の変わり者らしい。しかしそのまま話しを促すと、この宮廷の人間模様や権力事情について長々と語ってくれた。
 ミノタウロスが生まれた経緯、ミノス王の息子たち(3人は死んでしまいあの馬鹿な4男だけが残った)のこと、トラキア人とクレタ人との派閥抗争、オプリスとラクトリスの人物像などだ。
 「アリアドネはどうなのだ」
 拙者はそう問うたが、ディプティスは肩をすくめて答えた。
「問題にならない。ミノス王は密かにあれが自分の娘でなければいいと思っているだろう。彼女は物の数ではない」
 ディプティスは語りつくしたようだ。何を考えているのか図りかねるところもあったが、彼のおかげで役にたつ情報を得たのは間違いないだろう。(情報点4増える)

 礼を言ってディプティスの部屋を退席した拙者は、舞踊会の様子を見に行った。そこでは大勢の奴隷達が、竪琴と笛と太鼓の音に合わせて、何かを演じた踊りを披露していた。
 「これは、ミハキノと呼ばれる海女の踊りよ。豊穣の神デメテルに捧げる感謝の意味があるの」
 昼間、拙者の世話をしてくれたタイジアという娘が、いつの間にか傍にいて解説をしてくれた。
 しばらくすると曲調が変わり、舞踊会に出席している全員で踊りの輪が作られた。
 「こんどは私たちが踊る番よ。この民族舞踊を踊らないなら、クレタにきた意味なんてないわよ」
 しぶる拙者をタイジアは強引に連れ出した。しぶしぶ参加するが、不慣れな踊りにステップを間違えて転んでしまう。(恥辱点1増える)
 「いたた。戦場では遅れをとることはないが、踊りは無粋な田舎暮らしをしてきたものでな。踊りはどうにも苦手でござる」
 照れながらタイジアに話すと、彼女はクスッと笑って部屋の片隅に拙者をひっぱり、「外にでましょう。外の方が涼しいわ」と誘いかけてきた。
 宮廷の庭は広く、涼しげな風がほてった体に心地よかった。月は木々の上にのぼり、大理石のベンチに2人で腰掛ける。
 「夢みたいね」
 彼女は、拙者に自分の体をもたれかけさせた。
 「私の母は平凡な羊飼いよ。なのに娘の私は、こうして王の息子と一緒にいるだなんて」
 「王の息子だからといって、どうということでもござらぬよ」
 おお、なにかしらぬが、良い雰囲気ではないか。
 夜はさらにふけ、月が静かに天空を横切っていくが、拙者らはいつまでもそこに寄り添っていた。

by 銀斎


2021年05月11日(火) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その9

 船はゆっくりとクレタ島の港に接近する。拙者は強い日差しに目をしばたたかせ、大きく背伸びをした。
 ついに到着したな。母上のもとより旅立ってからまだひと月もたっていないのに、かなりの時間がかかった気分じゃな。
 前巻終了前の状態は次の通りだ。

原攻撃点  4  ヘパイストスの剣(攻撃力+4)*
原防御点 10  ヘパイストスの胸当て(防御力+4)*、ヘパイストスの盾(防御力+4)*
名誉点  18
恥辱点   6
所持品  母の宝石、アイゲウス王からの親書、メダル(戦闘時に攻撃力か防御力のどちらかに+2の効果)、ブローチ
* 神々やそれに属する生き物との戦闘では、ポイントが6に増える。

 名誉点は前回にクレタ島に到着したときより低いが、代わりにこの冒険全体を通してゼウスの加護を一回余分に受けられる権利をもらっている。
 さらに前の巻では、1巻に一度だけ使用できるゼウスの助けを一度も借りていないので、ゼウスに祈って「いつでも名誉点をサイコロ一つ分増やせる力」を行使することにした。サイコロの目は5。これで「ミノス王の宮廷」での名誉点の初期値は23となった。

 ヘパイストスの武具も手に入れているし、なにより今回は親書をちゃんともってきている。完璧じゃな。
 「また会ったな、アルテウス」
 ふいに聞こえた声に物思いは破られた。前を見ると、あのおなじみの使者の神ヘルメスが目の前に立っている。
 「実際のところ、予想した以上に進行が遅いな。まあ、怒るなよ」
 こぶしを振り上げると、ニヤリと笑ってヘルメスの姿はかき消えた。
 そういえばこの巻は陸地の冒険じゃから、守り神であるポセイドン神の出番はほとんど期待できないじゃろうな。

 船から降りると、普通にミノス王に会いに行った。お馴染みの歓迎パーティやら、奴の息子の狼藉騒ぎやらがあった後に、ミノス王に親書を手渡す。
 内容は「ミノス王へは今以上の金品を捧げるので、若者達を生贄として差し出すのは許してほしい」というものである。
 ミノス王はしばらく親書に目を通していたが、やがて顔をあげて拙者を見た。
 「話しはわかった。このことについては3日後にせまる祭りの後にゆっくり話そうではないか。それまでは客人として自由にくつろがれよ」
 こうして拙者は牢獄以外の宮殿内を、自由に歩き回れる機会を得たのである。


by銀斎


2021年05月10日(月) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム1 アルテウスの復讐(P.パーカー他/社会思想社) その17

 やむを得ず、拙者の下した結論は、第一巻からやり直すことだった。

***

 前と同じく母上に旅立つことを告げると、嘆き悲しみながらも、拙者の決断を応援してくれた。
 守り神はどうしようかの。アレス神の加護による戦闘力の加点は欲しい、切実に欲しいが、リプレイ的には最初からの冒険なので、新たな守り神が良いじゃろう。
 そんなわけで、ポセイドンを選ぶ。
 ポセイドンに祈りを捧げると、地面から泉が湧き出してきた。水が見る間に老人の姿を形作る。
 「お前がアルテウスか。ふむ、とても英雄の器にはみえんな。お前の兄や父親にも遠く及ばぬわい。まあよい。海でたら我を頼るが良い。それまでは迷惑をかけるなよ」
 そういいすてると、ポセイドンを形作っていた水は地面に吸い込まれて消えた。

原攻撃点  4  棍棒(攻撃点+1)
原防御点 10
名誉点   7
恥辱点   0


 旅を開始すると今まで進んでいない道を選んでみた。狼が襲ってきたので退治して、皮をはいで身にまとう。(防御力+2の鎧の効果、名誉点+1)
 夕方になり例の盗賊どもが居る、エピダウロスの町に入ったが、今回は宿に入らず素通りすることに決める。奴らと戦うのは分が悪いし、冒険に必要な戦いでもないからな。
 野宿をすると、乞食や犬畜生のように道端で眠るのは、英雄にふさわしからぬ行為と言われて、恥辱点が2点加算される。納得できんのぅ。
 翌日、ヘラの変身した老婆をおぶって川を渡ってやる(名誉点+2)と、クレオネの宿で一泊する。

 さらに翌日には、海辺の都市ケンクレエへ向かい、海路をとってアテネの町へ向かうことにした。旅人たちを乗せている船長に銅貨を投げてから、船に乗り込む。
 なにせ拙者にはポセイドン神がついているのだから、船旅のほうが安心できるわい。
 恐ろしい嵐が船を襲い岩礁に乗り上げそうになる。そのとき、三叉の鉾をもった巨大な老人が海中から現れて、海をしずめてくれた。その偉大な手で船を岩礁から安全な海面まで押し戻すと、挨拶代わりの大波を一つたてて、海中の珊瑚の宮殿へと帰っていった。
 こうして船は無事に到着した。ポセイドン殿に感謝じゃ。
 船を下りて、旅を続けているとイノシシが襲ってきたので、棍棒で殴り倒してやる。
 イノシシから逃げ惑っていたクロムミオンの町の人達は感謝して、拙者にお礼にと槍(攻撃力+3、防御力+1)をくれた。(名誉点+6)
 続いてはパガイの町に入った。女神アテナの神殿の前を通ったとき、パガイの領主が拙者を呼び止める。
 「異国の人よ。あなたは旅人でこの町の災厄についてご存知ないようだ。この町にはネズミによる疫病が猛威を振るっているのです。あなたなら、われわれを救うことができるかもしれない」
 領主は拙者を町外れの納屋に連れて行った。これは最初の冒険にあった展開じゃな。
 「ここがネズミどもの巣だ。君を英雄と見込んでお願いする」
 そういうやいなや、拙者を薄暗い納屋に押し込んで扉を閉めてしまう。
 また恐ろしいネズミの大群が襲ってきたが、今回は軽傷を負っただけで、ネズミどもを退治するのに成功する。もっとも傷口から病原菌が入ったようで、肌にはかさぶたができ、数日間寝込む羽目になった。
 薄情なものでパガイの人々も、拙者の病気を気味悪がって近寄ってこない。(名誉点−2)
 じゃが、ようやく意識を回復すると、目の前に光り輝く女神アテナが現れたではないか。
 「よくやったアルテウス。そなたがネズミどもからパガイの町を救ったのだ。英雄のそなたに礼をいうぞ」
 アテネ神と友好関係になった拙者は、さわやかな気持ちで体を起こして背伸びをする。
 もう大丈夫だ。旅を再会するでござるよ。

 アテネ神の祝福を受けた拙者は、デルフィの町にたどり着くと春の儀式に参加した。(名誉点を3点増やす。デルメルの好意を得る。金のブローチを得る)
 デルフィを出て、そのまま真っ直ぐいけばアテネの町に到着するがちょいと寄り道をして、アルカネへ向かう。途中で子犬をヘカテへの生贄に捧げようとする住民どもに出会ったが、無視をして先へ進む。
 アルカネの町は祭りの最中で夜になると戦車競争が始まるのだ。
 戦車競争を見物に行くと、何台もの色鮮やかな小型戦車たちが獰猛な馬にひかれ、塀の中をものすごい勢いで周回をしていた。たまに戦車が横転し御者が手綱に絡まってひきづられ、他の馬に蹴散らされると、興奮した観衆は怒号の声をあげる。
 危険きわまりないが、もしこの競争に出場して優勝すれば大変な名誉でござろう。そして稼いだ名誉点はミノタウロス戦で役に立つ。
 拙者は参加料の代わりにデルフィの巫女にもらったブローチを差し出して、次の競争に申し込んだ。
 青い戦車に乗り込んで、競争の開始を待つ間に、馬の神でもあるポセイドンに祈りを捧げる。(名誉点+1)
 競争のルールは簡単だ。サイコロを2つ同時に振ってそれぞれの目で判定する仕組みだ。出走する馬車は全部で4台。1〜4の目が出た場合、それに対応した番号の戦車が1マスずつ進む。5の目が出たらポセイドンの加護のついた拙者の馬車だけが進む。6の目が出たら全車両が1マス進む。6のゾロ目が出たなら、事故が発生してしまう。
 最終的に一番先に10マス進んだ戦車が優勝する。ポセイドンが味方にいる拙者は、有利でござる。
 競争がはじまった。楽勝と思われたが3番目の黄色の馬車が、思いもかけずぴったりと後をついてきて冷や汗をかくが、最終コーナーをまわったあたりで勝負はついた。
 一着でゴールした拙者は、群集の歓声の中、戦車からおり、頭に月桂冠をかぶせてもらう。(名誉点を5点得る)一晩中、ちやほやされすこぶる良い気分じゃ。賞品がないのが、物足りないがの。

 翌朝は爽快な気分でアテネの町にある父上の宮殿にたどり着く。
 「よく来てくれた。息子よ、また思いもかけないときにこの宮殿を訪れたものよ」
 ここにくるまでに恥辱点が4点増加したが、ヒントを使い、アイゲウス王に母の宝石を見せると、父上はあっさり拙者が息子であることを認めてくれた。
 これであの雄牛との戦いは避けられたわい。もっともミノタウロスに比べれば、あの雄牛なんぞ可愛く見えるがな。

 その後の拙者の活躍は、前回とそう相違ない。違う点だけを書いていくでござる。
 アマゾンの女戦士たちを軽く打ち倒して凱旋した後は、父君に挨拶もせずに宮殿から抜け出して、クレタ島に向かって旅立つ。
 とちゅうで恐るべき運命の魔女グライアイ姉妹が男に罰を与えているところに行きあったので、甘いケーキに蜜をたっぷり塗ってミルクをかけた魔女たちの大好物の供物を捧げて追い払ってやった。男は感謝しながら「妻殺しの罪で責められていたのです。今からアテネ宮殿に保護を求めにいきます」と言った。お礼に戦闘が少し有利になるメダルを貰い受ける。
 それにしてもミノス王の宮廷には「グライアイ姉妹の目を持っているなら」という選択肢があったが、目なぞ手に入れられる方法がなかったようじゃがなぁ。

 やがて港についた拙者は船に乗船する。ポセイドンが守り神だけあって、船旅も順調でござる。もちろん今回は、親書をしっかりと保護して旅を続けることができた。
 ある島で村人を困らせている黒騎士を退治してやり(このとき村人のお礼の品により、名誉点を10点消耗することで一回余分にゼウスの加護を受けられる権利を得た)、ヘパイストスの武具も間違えなく手に入れる。
 クレタ島を守護するタロスには今回も苦戦したが、退治には成功した。
 やれやれ、これでやっとクレタ島に到着だわい。次回から「ミノス王の宮廷」に戻れるの。

by銀斎


2021年05月09日(日) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その8

原攻撃点  6  ヘパイストスの剣  (攻撃力+4)*
原防御点 10  ヘパイストスの胸当て(防御力+4)*、ヘパイストスの盾(防御力+4)*、古びた兜(防御力+2)
名誉点  28
恥辱点   6
所持品  母の宝石
守護神  アレス神
* 神々やそれに属する生き物との戦闘では、ポイントが6に増える。

***

 拙者が意識を取り戻すと使者の神ヘルメスが目の前にあった。
 「また駄目だったな。そろそろあきらめるかい」
 またしてもヘルメスは拙者にからかうように言ってからクスクス笑ってパット消えた。あきらめるだと?とんでもないわい。
 起き上がってあたりを見渡すと、船の甲板に寝転がっていた。船はクレタ島の港についたところだ。
 しばしの間、座禅を組み黙祷しながら今後の対策を検討する。
 あの迷宮で兄の剣を発見できたのは、前回の冒険の収穫には違いない。問題はあの名剣をもってしても、ミノタウルスに勝つのは厳しかったということだ。しかも、あの剣を拾うと、ミノタウロスに必ず不意の一撃を受け“軽傷”状態から戦闘が始まってしまう。
 (注:このゲームの戦闘でダメージを受けると健康状態が→「軽傷」→「重傷」→「死亡」となる。重傷になると戦闘力が激減するため、実質あと一撃でもミノタウロスの攻撃をくらうと敗北するのだ)
 戦闘に名誉点を全て注ぎ込むとしても、まだ足りない。互角に渡り合うためには、攻撃の方はアレス神の加護に頼るとしても、最低でも防御力にあと7・8点は欲しいところだ。
 ざっと計算して、今のままではあの剣を使っても勝率は2割もないだろう。
 それに、迷宮内の探査はまだ全て完了していないが、あの様子だと他に助けになるアイテムはない気がする。

 心を決めて目を開眼する。迷宮に入る前にまだ使用していない選択肢があるはず。その中に、武具をもって迷宮に潜入する方法があるに違いない。それをしらみつぶしに探していくのみ!
 拙者は脱兎のごとく、船から駆け降りると港を駆け出した。衛兵が慌てて拙者を追ってくる。
 「待て奴隷め!脱走者はその場で切り捨てるぞ!」
 衛兵が追いついてきたのを、あっさり返り討ちにいたすと(名誉点を3点得る。この3点もミノタウロス戦には貴重じゃ)、前回とは違う道を走りつづけた。迂回して追っ手をまいたあとは、迷宮に直行じゃい。
 いきなり拙者は網につつまれて木の枝にぶら下がる。草むらに仕掛けられた罠にかかったらしい。我ながらなんと情けない姿じゃ!
 なんとか網を脱出して逃げようとしたが、衛兵達から弓矢を射掛けられ、そのうちの一本の矢が脳天に命中してしまいハデスの住む世界に直行してしまう。




 拙者が意識を取り戻すと、またまた使者の神ヘルメスの姿が目の前にあった……。
 その後も3回の再挑戦をしたが、どうしても衛兵に殺されるか、牢屋にぶち込まれてミノタウロスに殺されるかになってしまう。
 うむむ。戦闘での強運を祈ってこのまま二巻の挑戦を続けるか、一巻から仕切り直すかのどちらかの選択でござるな。


by銀斎


2021年05月08日(土) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その7

原攻撃点  6  ヘパイストスの剣  (攻撃力+4)*
原防御点 10  ヘパイストスの胸当て(防御力+4)*、ヘパイストスの盾(防御力+4)*、古びた兜(防御力+2)
名誉点  28
恥辱点   6
所持品  母の宝石
守護神  アレス神
* 神々やそれに属する生き物との戦闘では、ポイントが6に増える。

***

 拙者が意識を取り戻すと使者の神ヘルメスが目の前にあった。
 「たいぶてこずっているな。アルテウスの復讐からやり直して親書を手に入れたらどうだい」
 ヘルメスは拙者にからかうように言ってからパット消えた。一巻からだと?とんでもないわい。
 起き上がってあたりを見渡すと、船の甲板に寝転がっていた。船はクレタ島の港についたところだ。

 船長と衛兵がなにやら話しこんでいるのが見て、心を決めた。ミノス王の宮殿に行けばどうしても武具を失ってしまう。しからば、最初から逃亡してはどうだろう。
 拙者は脱兎のごとく、船から駆け降りると港を駆け出した。衛兵が慌てて拙者を追ってくる。
 「待て奴隷め!脱走者はその場で切り捨てるぞ!」
 奴隷ではござらん!衛兵が追いついてきたが、あっさり返り討ちにいたすと(名誉点を3点得る)、そのままミノタウロスの住む迷宮を目指して、道を走りつづけた。

 いきなり、草むらからまた二人の衛兵が飛び掛ってきた。完全にフイをつかれてタックルを受けた拙者は地面に転がってしまう。なんたる不覚!
 衛兵は拙者を牢にぶち込める。トホホ、結局捕まってしまうわけか。
 いや、待てよ。ここは親書がなくてぶち込まれた牢屋と似ているがパラグラフ番号が違う。
 試しにヒントを使って見ると、拙者は見張りの目を掻い潜って窓から脱出することができた。
 回廊を進む選択肢もあったが、そのまま衛兵に見つからないよう建物の上へ上へと、壁をよじ登っていくことにする。てっぺん近くの窓にたどり着く頃には、腕がしびれてもう耐えられなくなっていたので、その窓から部屋に転がり込んだ。
 「誰だい?」
 するどい誰何の声が飛んできた。振り返ると、アマゾンの女戦士が1人槍を構えて立っていた。
 アマゾンの女などミノスでは珍しいはず。そういえば!
 「レンブラ。そなたはレンブラだな」
 「なぜ私の名前を知っている?」
 「私はアマゾンの女王アンティオペから、困ったときはそなたに助けを求めるように言われたのだ。拙者は今、衛兵に追われているのだ。しばらく身を隠させてもらえまいか」
 レンブラが鼻をフンと鳴らした。
 「なにを言う、アマゾン人は後ろ暗いことはせん。さあ、ミノスのところに言って、一緒に決着をつけようではないか」
 なんということだ。アンティオペの助言は役に立たなかった。
 おまけガチャガチャと音をたてて、衛兵達までやってきて飛び掛ってくる。もはや絶対絶命。
 「お待ち!」
 そのときレンブラが衛兵達を一喝した。
 「私の前でかってなことはさせないよ。これは何の真似だい」
 「レンブラ様。こやつは牢から脱走したのです!危険な奴でして」
 「私にとって危険などあるものか。私がミノス王のところに連れて行く。女王アンティオペの友は私の友。弁明の機会も与えないのは不公平というものだ。さあ、そこをどきな」
 衛兵達はオドオドと道をあけた。レンブラは拙者にだけわかるように片目をつぶると、「悪名高いのも役に立つのさね。あとでアンティオペの様子を聞かせておくれ」と囁いた。

 レンブラと共にやってきた玉座の間には衛兵が立ち並び、ミノス王が立派な椅子に堂々と腰掛けていた。
 「レンブラ。おまえは衛兵を殺したうえ、捕まった後も牢を抜け出すようなこの男を信頼するのか」
 「はい。彼が衛兵を殺したのも、半ば正当防衛のようなもの。私が身元引受人になります」
 拙者は、玉座の間につくまでの間にアマゾンの女王アンティオペとのいきさつをレンブラに語っていた。
 幸いにもレンブラは、アンティオペを堂々と打ち負かした男に敬意を示してくれ、全面的に拙者の味方をしてくれることに決めたらしい。
 レンブラの弁護を聞いて、ミノス王はしばらく考え込んでいたが、やがて拙者を無罪放免とすることに決めたようだ。
 「わかった。では彼を改めて客人として、扱うことにしよう」
 「ありがたき幸せ。こちらも改めて挨拶をいたしたい。拙者、冒険者のアルテウルスと申すもの」
 「詳しい話は後で伺おう。おい、タイジア!客人の身なりを整えてやれ。旅の汗を流させてから宴席の場にお連れするのだ」
 ミノス王の言葉にほっとすると、タイジアと呼ばれた若い娘について部屋を出て行った。役目を終えたレンブラは自分の居場所へ帰っていく。
 拙者は部屋に案内され、宴席に出席するため身支度を整えることになった。

 いや、まてまてまてまて。これじゃ、最初の冒険の時と同じ展開に戻っただけじゃないか。
 数時間後、やはりというべきか宴会の席で親書がないのがばれて、再び牢にぶちこまれてしまう。
 そして二日後には、迷宮に裸同然で放り込まれるわけだ。
 うむむむ。こうなったら、仕方がない。迷宮内に強力な武器が転がっていることを祈るしかあるまい。
 今度はマッピングして丹念に迷宮を探索してやろうと決意する。

 石造りで湿った迷宮の中に拙者は再び放り込まれた。
 今回も持参できたのはアリアドネ姫からいただいた毛玉だけだ。松明やランプなぞ持っていないので、攻撃点と防御点から二点ずつマイナスのペナルティを受ける。
 今回は慎重に歩みを進め、マッピングをしていく。時々、迷宮の床に竪琴などのアイテムが落ちていたり、水溜りに行き逢って「水を飲むか」などの選択肢が登場するが、一通りマッピングするまではと、無視をして歩いていく。
 革張りの小箱が迷宮の壁に設置してあった。む、宝箱のようで誘惑があるのぉ。これは開けてみるか。

オオオオオオオオオオオォォォォォオ!

 壁を揺るがすほどの恐ろしい大音響が響きわたった!ミノタウロスの位置が近いのだ!
 恐慌をきたして箱を取り落とすと、走ってその場を離れる。(恥辱点を1点負う)やはりだ。この迷宮は、こちらから何かしようとしたときのみ、危険が発生する仕組みらしい。
 この事件で懲りた拙者は、マッピングに専念することにした。イベントを無視すれば危険がないとわかれば、こんなものは単調な迷路にすぎない。
 そして最初の冒険でふれたとおり、迷宮の壁の多くには、数々の神話を解説した見事な壁画が描かれているので、探索中も退屈することはなかった。中にはミノタウロスの犠牲者の骨の山など、芳しくない見世物もあったがな。

 どのくらい歩いたじゃろうか。
 前方に明かりが見えたと思うと、ほどなく設置された松明に照らされる小ホールにたどり着いた。
 そんなにまぶしいわけでもないが、久しぶりの光に目を細くして部屋を見渡す。
 ガランとした、調度品など何もない空間だが、床には一体の骸骨が転がっていた。拙者はいぶかしい思いでそれをまじまじと眺める。
 骸骨は立派な鎧を着込んでいたが、鎧の破損のぐあいからして、背後から何か猛獣の(むろんミノタウロスじゃろう)一撃を受けたらしい。それがそのまま致命傷になったようだ。
 そして骸骨からほんの少し離れた位置に、一振りの剣が転がっていた。たいそう素晴らしい、まるで神々によって鍛えられたかのようにオーラを放つ剣が。
 「ま、まさか」
 拙者は体の震えが抑えられなかった。兄上であるテセウスは、女神ヘラからこのような剣を与えられて、この迷宮に入ったのではなかったか。すると、この骸骨は!
 こみあがる衝撃とミノタウロスへの怒りをたぎらせながら、拙者は兄の剣に手を伸ばした。
 そのとき背中に重い一撃を受けて、拙者は床をふっとぶ!(軽傷状態になる)
 かろうじて剣をつかんで振り返ると、ミノタウロスが斧を振り上げてもう一撃を拙者に加えんとしている所ではないか。
 「おのれ!許せん!」
 兄の剣は予想通り強力な武器だった。攻撃力+8のうえ、なんと防御力にも+8の効果があるのだ。
 それに、ここは明かりのある小ホールということだから、本文に指示がないものの暗闇によるペナルティはこの際、無視してもかまわないだろう。
 「くたばれ、化け物。キェェェェェ!」
 ミノタウロスの脇に、拙者の渾身の一撃が決まる!奴の傷口から血が噴き出した。(ミノタウロスが軽傷状態になる)
 じゃが、ミノタウロスはダメージには一切かまわず、拙者にもう一撃を振り下ろした。命中!
 拙者は重傷状態になってしまう。しまった!こうなると、攻撃力を決める際にサイコロを一つしかふれなくなるのだ。ミノタウロスはさらにジリジリと拙者に近づいてくる。
 無常にもミノタウロスのトドメの一振りが拙者の体に食い込み、拙者は床に崩れ落ちる。



by 銀斎


2021年05月07日(金) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その6

 第二巻「ミノス王の宮廷」の冒険を再開する最初の状態は、以前と変わらず次の通りだ。
 冒険の途中なので守護神はもちろんアレス神のままである。
 ルールでは、死んだ場合は第一巻の最初からやり直せと書いてあったが、さすがにな。

原攻撃点  6  ヘパイストスの剣(攻撃力+4)*
原防御点 10  ヘパイストスの胸当て(防御力+4)*、ヘパイストスの盾(防御力+4)*、古びた兜(防御力+2)
* 神々やそれに属する生き物との戦闘では、ポイントが6に増える。
名誉点  28
恥辱点   6
所持品  母の宝石

***

 拙者が意識を取り戻すと使者の神ヘルメスが目の前にあった。
「ミノタウロスは強かったかい?まあ、頑張れよ」
 ヘルメスの姿はパット消えた。起き上がってあたりを見渡すと、船の甲板に寝転がっていた。
 船はクレタ島の港についたところだ。船長と衛兵がなにやら話しこんでいるのが見えた。
 やれやれ、二巻の最初に戻ってきたようじゃわい。
 ヘルメスが問うまでもなく、ミノタウロスのことを考えてしまう。
 奴は予想以上に強かったわい。ヘパイストスの武具を装備していて、名誉点をギリギリまで使えばなんとか勝てるくらいか。おまけにこの戦闘ではゼウス神の復活も認められないのは厳しい。
 迷宮に役に立つアイテムが落ちている可能性もあるが、まずは武具を取り上げられずに迷宮に潜入する方法を探さねばいかんな。
 拙者は前と同じように王宮に向かい、ミノス王と握手をしながら慎重に選択肢を伺ったが、それらしい選択肢がない。ヒントを見ても名誉点を失うペナルティしかなかった。タイジアも登場して、ベルトコンベヤーのようにこの前と同じ展開に進んでいく。
 まずいな。このままではまた親書がないのがばれて、牢にぶち込まれるのが見えているぞ。
 内心で焦っていると、これも前と同じように王の息子が酔っ払って騒ぎを起こし始めた。
 このとき拙者の目は、次の選択肢に釘付けになった。

───この隙に広間を抜け出して、迷宮を探しにいこうとするか?

 好機でござる!
 急いで宮殿のパーティから抜け出すと、迷宮へ向かう。
 奴隷女に道を尋ね、ひと気のない通路を歩いていると神殿を発見した。確かあの中に迷宮への入り口があったはず。
 そっと、神殿内を覗き込むと衛兵が1人退屈そうに見張っていた。いいぞ。
 不意打ちを仕掛けると、衛兵は声もあげずにあっさりと気絶した。しかし、次の文章を見て愕然とする。

───それから、彼の剣を手に、迷宮内にすべりこむ。君の武器はこの剣(攻撃点2)だけで、防具はなにもつけていない。

 拙者の武具は?そうか、さっき着替えた時に部屋に置いてあるのか。トホホ、こんなかぼそい剣一つでは、お守りにもならんわい。迷宮はやはり薄暗く、攻撃点と防御点から2点ずつマイナスのペナルティを受けてしまう。
 途方にくれながら迷宮内を歩き始めると、

ウオオオオォォォォォォオオオ!!

 な!なに!いきなりミノタウロスの登場か!
 怒り狂ったミノタウロスとの戦闘になり敗北してしまう。



by銀斎


2021年05月06日(木) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その5

 迷宮の中に古びた竪琴が放置してあった。拾い上げようとすると……。

オオオオオオオオオオオォォォォォオ!

 またもや壁を揺るがすほどのミノタウロスの大音響が響きわたった!またしても恥辱点を1点負って、拙者は逃げ出す羽目になる。
 どうやら迷宮に落ちているアイテムを拾うと、こうなるらしい。しかしアイテムの中には有益なものもあるに違いない。
 拙者は道に迷ってすっかり焦っていた。もしこの冒険が失敗したら次はマッピングをしよう。などと、つい弱気なことも考えてしまう。
 いかんいかん、せめて剣の一本でもあれば、心強いのじゃが。

 迷宮はたんたんと続く。壁画が描く絵は、いくつかの物語が紙芝居のように続いているようなので、それを辿って歩いてみようかと思い始めたその時、拙者はよろめいて壁に手をついた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 そのとき、壁に何か鋭いものがあるのを視線にとらえた。目を凝らすとそれは槍の穂先だった。槍には小さな文字が刻まれているようだが、暗くてここからは読めない。
 「ぶ、武器じゃ」
 クレタ人の武器か、アテネの若者が隠し持っていた形見の品なのか。拙者はそれを震える手で拾おうとした。
 するとすぐ背後で大咆哮が轟き渡った。しかも今までよりも格段に近い距離から。
 恐れていた事態が起きてしまったようだ。槍を拾う間もなく(拾ってくれよ)振り返ると、ドドドドドドドド…という擬音とともにミノタウロスのシルエットが見える。
 ヘラクレスもかくやというほど、発達した筋肉に覆われた人間の体。その頭部は牡牛の形をしている。ミノタウロスは伝説のとおり恐るべき姿だった。
 ミノタウロスの攻撃点と防御点を見て絶句する。あの神の作った巨人、タロスよりはるかに強いではないか。対するこちらは丸腰のまま。しかもフイをつかれたので、攻撃はミノタウロスの先制攻撃だそうだ。まず勝ち目のある戦いとは思えない。
 ミノタウロスの最初の一撃で、拙者はひとたまりもなく跳ね飛ばされてしまう。通路を駆け抜けたミノタウロスは、トドメを刺そうと角をぐいぐいと回しながらターンしてきた。
 ぐすぐすしている暇はない。奴は正確にあと5秒くらいで拙者のところに突っ込んでくるだろう!
 そこで選択肢!どうやってあの攻撃をかわすべきか?
 ひとつだけ選びなさい。

答え ッ砲涼罎涼法▲▲襯謄Ε垢脇庸“新發離▲ぅ妊△ひらめく
答え◆ゥリンポスの神々がきて助けてくれる
答え.かわせない。現実は非情である

 拙者がマルをつけたいのは答え△世期待はできない。
 オリンポスの神々があと数秒の間にここに都合よくあらわれて、「まってました!」と間一髪助けてくれるってわけにはいかないじゃろう。
 やはり答えは……………,靴ないようじゃ!
 拙者は、名誉点を12点も消耗して防御力をアップ!突進にそなえた!
 攻撃の方はサイコロで11か12の目(クリティカルヒット)が出るのを祈るしかない。
 サイコロの目は7。かろうじてかわす事に成功!
 しかし、拙者の攻撃はあっさり外れ。次のターンの防御で名誉点を使い果たしてしまう。

 だ… だめだッ!

 答え  −   答え    答え 

 拙者は殺されてしまった。
 い、いや。この巻では、まだゼウス神の助けを借りておらん!△犬磧どこか安全な場所で復活させてもらうのじゃ!
 拙者がゼウスの加護を頼む選択肢を選ぶと、ゼウスのいかめしい声が聞こえてきた。
 「愚か者め!この戦いで、このわしから助けを期待するな。潔く死ね!」
 宣言とともに拙者の魂は肉体から吹き飛ばされ、ハデスの王国まで流れてしまった。



by 銀斎


2021年05月05日(水) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その4

 迷宮の中は石造りでじめじめしていた。せまる戦いに、心は血気盛んに吠え立てるが、ミノタウロス相手に丸腰のまま戦うのははっきりいって自殺行為だ。
 おまけに迷宮内は薄暗く、松明かランプを持っていないと、攻撃点と防御点から二点ずつマイナスのペナルティを受けるらしい。
 きっと迷宮内のどこかに武器か、役に立つアイテムがあることだろう。それを信じて今は進むしかない。
(また、この迷宮に入ってからは、自由に移動できる双方向システムにゲームが変わる)
 役に立つアイテムがないかとチェックしてみる。ここでの選択肢は5つあった。

・毛玉を持っているなら
・迷宮の地図を持っているなら
・青銅の鍵を持っているなら
・グライアイ姉妹の目を持っているなら
・どれも持っていないなら

 ふむ。持っているのは毛玉だけだが、展開によっては他に鍵だの地図だのが入手できるわけなのか。
 武器もない。明かりもない。アイテムも毛玉一つしかないとは、最悪の条件のようじゃな。
 とりあえず近場の岩に毛糸の先を結び付ける。こうして糸を伸ばしながら迷宮内を歩いていき、戻りたくなったら糸をたどって戻ればいいわけだ。(名誉点を1増やす)
 迷宮内を歩き始め、数分が経過した。ミノタウロスはまだ離れた位置にいるのか、あたりは物音一つしない。
 暗闇に目が慣れてくると、迷宮の壁には数々の神話を解説した見事な壁画が描かれているのに気づく。犠牲者を引き裂くミノタウロスの絵、ヘラクレスの冒険の絵、黄泉の王ハデスがペルセポネを誘拐する場面を描いた絵、アテネとヘルメスの絵、などなど。ミノタウロス以外に誰もいない迷宮に、なぜこのような芸術的な絵を施しているのか、理解に苦しむわい。それともこの絵に何か秘密の意味でもあるのだろうか。
 通路の端に女性をかたどった彫刻の腕の部分と思われるものが転がっているのを発見。何かの役にたつかもしれないので、持っていくことにする。
 「こんなものより、武器が転がっていないものじゃろうか…」
 さらに歩き続けると、突然若い女の姿がぼぅ、とあらわれた。
 女の姿は透けていて、頭から血を流しながら悲しそうに微笑んでいるが、それ以上は何もしてこなかった。
 情報を得るためにヒントを見てみる。

───アルテウスよ。もっと自分の使命に集中せよ。これはミノタウロスに惨殺された女の亡霊に違いないのだ。自分の勤めを忘れたため、名誉点1点を失い、恥辱点を1点負う。

 トホホ。あいかわらずの不条理な罰則を喰らってしまったわい。
 さらに進むと牡牛を形どったサファイアの指輪が転がっていた。指輪を拾い上げようとすると

オオオオオオオオオオオォォォォォオ!

 壁を揺るがすほどの恐ろしい大音響が響きわたった!ミノタウロスの位置が近いのだ!
 ま、まだ拙者は、戦いの準備が整っていないぞ!
 恐慌をきたして指輪を取り落とすと、走ってその場を離れた。(恥辱点を1点負う)

by 銀斎


2021年05月04日(火) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その3

 月明かりがやさしく独房を明るく照らした。巡回する衛兵の足跡が遠ざかっていき、あたりは静かになった。
 「……アルテウス。アルテウス」
 窓の外からかすかに声が聞こえる。見上げるとローブを来た人影が見えた。
 「あなた、本当にテセウスさんの弟なの」
 ローブがはねのけられると、美しい若い女の姿が現れる。その美しさに女神アフロディテ殿の助言を思い出した。アリアドネ姫!そなたはアリアドネ姫でござるな。
 「アリアドネ姫。拙者、エリデュロス殿からそなたに伝言を預かってきた」
 彼女は最初は警戒しているようだったが、アテネでエリデュロスを救った話しをすると、次第に打ちとけてきた。彼女の話によるとエリデュロスは彼女の昔の恋人で、それを快く思わないミノス王が彼を追放したそうだ。
 彼女は小さな丸い玉のようなものを牢に投げ込んだ。石の床に転がったそれを拾い上げるとそれは毛糸の玉だった。
 「たぶん、あなたは私の兄(ミノタウロス)のいる迷宮に投げ込まれことになるの。そのときこの毛玉を使えば迷宮から迷わずに脱出できるわ」
 アドリアネ姫がそう説明する。なるほど、拙者も14人のアテネの生贄と同じ運命というわけか。それにしても毛玉とはそれらしくなってきたではないか。(本物のギリシャ神話にも、テセウスが毛玉を携えて迷宮に入るエピソードがある)
 「かたじけない。それにしてもなぜ見ず知らずの拙者にこのように親切にしてくれるのじゃ?」
 「私はこのクレタ島から出て行きたいの。お願い。あなたが無事に迷宮から出てこれたら、あなた達の船に私を乗せて」
 拙者がうなずくと、彼女は手をふってから立ち去って行った。

 次の日になって衛兵がパンと肉と水をもってきた。夢中で水を飲んで一息つくと、パンと肉をガツガツと食べはじめる。なにげない雰囲気で拙者は衛兵に尋ねる。
 「囚人に肉とは気前がよいな。王の機嫌が直ったのか?」
 「いいや、どうやらお前の命もあとわずからしいんだ。お前は14人のアテネ人に先駆けて、迷宮に放り込まれる運命に決まったのさ。おっと」
 スキをついて衛兵に飛び掛ろうとしたが、衛兵はすばやく牢の扉を閉めて鍵をかけた。衛兵は笑いながらさっていった。扉を叩いてみるがびくともせず、守り神に祈って見るが反応はない。
 しかたなく座り込んでもう一日をすごす。
 さらに翌日の朝になると衛兵隊長のポリクラテスが部下たちと一緒に、拙者を連れ出しにやってきた。
 独房の長い廊下を歩いていくと他の牢の前を通り過ぎていく。
 「ここには14人のアテネ人達がいる」
 ポリクラテスが笑った。
 「もう二度とお前は彼らには会えないな」
 「嬉しそうだな。ポリクラテス」
 「なに、王の命令に忠実なだけさ」
 そのとき声を聞きつけたのか牢の中のアテネ人たちが一斉に歌い始めた。女神アテナを称える故郷の歌だ。
 ポリクラテスは腹ただしげに歌を止めさせようとしたが、兵士達が牢に入って鞭打ちをするまでアテネ人達は歌いつづけた。
 彼らは彼らなりにミノス王と戦っているのだ。拙者も負けるわけにはいかない。(名誉点を3増やす)
 拙者は神殿の中に連行された。神官が豊作の女神デメテルに祈りを捧げたあと、拙者を迷宮につながる穴に放り込む。
 こうして拙者は最終目的地であるミノタウロス住む迷宮にたどりついたのだった。

by 銀斎


2021年05月03日(月) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その2

 宮殿の奥にある玉座の間には大柄の男が立派な椅子に堂々と腰掛けていた。
 むっ、こやつ…できる!
 誰の説明も聞かずとも本能で彼がミノス王だとわかる。その体格と風格は、王が戦士としても一流の技量をもつと感じさせた。ミノス王は大声で拙者に話し掛けてくる。
 「遠方よりはるばるよくお越しなさった。アイゲウスのご子息とは、なるほどこう見てもなかなか品位がある。礼を失するなよ。ポリクラテス」
 ポリクラテスとは、衛兵隊長の名前らしい。衛兵隊長は肩をすくめて退席し、ミノス王は拙者の手を握って「わしがミノスだ」と名乗る。
 「丁寧なご挨拶、いたみいる。改めて紹介を。拙者は冒険者のアルテウルスでござる」
 「ほう、冒険者とは。それではここには何の冒険にいらしたかな?」
 ここで「親書を手渡すか」という選択肢が発生!ひきつった笑顔を出してこれを回避。
 「長旅で疲れたろうから、用件は後でゆっくりと話すことにしよう。おい、タイジア!客人の身なりを整えてやれ。旅の汗を流させてから宴席の場にお連れするのだ」
 ミノス王の言葉にほっとすると、タイジアと呼ばれた若い娘について部屋を出て行った。

 拙者は部屋に案内され、宴席に出席するため身支度を整えることになった。情報を得るために身支度を手伝ってくれているタイジアと世間話しをしてみる。タイジアは明るくて親しみやすい性格らしく、喜んで話し相手になってくれた。
 「わたしの名はタイジア。よろしくね。アルテウルスさんは何のためにここへ来たの?」
 「貢物をやめてもうらうようにミノス王を説得にだ。これ以上、アテネの若者の命を奪う事はできないのじゃよ」
 「でも、戦争になったらもっと大勢のアテネの人々が死ぬわ」
 「問題はなぜ死ぬのかなのだ。仮にそれが為に戦争になってもアテネの民衆は父上を指示するだろう」

 タイジアの顔がパッと輝いた。
 「あなたアイゲウス王の息子なの?するとテセウスさんの弟ね!」
 「知っているでござるか。兄者のことを」
 「ええ、でもテセウスさんはあなたのことは何も言わなかったわ」
 「……無理もない。我ら兄弟は別々の場所で育ったからな」
 そう答えては見たものの、少しばかり心が傷つくのぅ。拙者の立場はギリシャ神話の中では席がないからな。
 拙者は旅の汚れを落とし、仕上げに赤い上着を着せられると、再びタイジアの案内で玉座の間へ歩いていった。

 「おお、客人が戻ってきたぞ。みなの者、これがアイゲウスの息子、冒険者のアルテウスだ。そしてテセウスの弟でもある。みなもテセウスのことは覚えているであろう」
 玉座の間は、豪勢な食卓がセットされ、大勢の貴族たちが居並んでいた。
 ミノス王が拙者を紹介した後は、ワインが杯に次々に注がれ、拙者の健康を祝って皆が乾杯をしてくれた。拙者もお返しにクノッソスの王宮の繁栄と、そこの人々の幸福を祈って乾杯をすると拍手喝采が鳴り響いて、歓談が始まった。
 テセウスのことは全員が知っているらしい。兄のテセウスがこの宮殿でどう思われていたか知りたかったが、残念ながらそれ以上、兄に関する情報はなかった。
 やがてミノス王が宮殿の主だった、人間を拙者に紹介してくれた。高僧のパングリオン、先ほども見た衛兵隊長のポリクラテス、まだ年若い廷臣のオプリスとラクトリスなどなど。
 「わしの宮殿にはまだまだいるぞ。ボロリス!ボロリスはどこにいる?」
 ミノス王が上機嫌で喋っていると、広間の外から騒がしい音が聞こえてきた。ん、何事じゃ?
 タイジアが止めるのも聞かずに扉の方に近づくと、二人の男が王座の間に転がり込んできて倒れこんだ。
 「おい、大丈夫か。どうなすったのじゃ」
 拙者が二人に近づくと、その内の1人が拙者の上着にしがみついて立ち上がった。どうやらひどく酒に酔っ払ているらしい。酒臭い息がマトモに顔にあたる。濁った眼が拙者に向いてから男はわめいた。
 「おい、奴隷。ぼっとするな。さっさと酒を持って来い!」
 なにお!
 侮辱的な言葉に拙者は、そいつの顔面に怒りの鉄拳パンチを食らわせた。男はもんどりうって石の床に倒れたが、すぐに起き上がって拙者に掴みかかってきた。
 「そこまでだ!」
 ミノス王の一喝でその場が凍りついた。拙者は兵士達の手で男から引き離された。酔っ払いの二人もよろよろしながら逃げるように去って行く。
 「今のはわしの息子クレムトン。もう1人はその友人のミトクロスだ。客人が息子と殴りあうとは、穏やかなことではないが、クレムトンにはいい薬だろう」
 ミノス王は低い声でつぶやくように言うと、拙者に席につくように言った。玉座の間の空気が静まり返る。
 「ミノス、あなたは自分の息子さえコントロールできないでいる」
 ふいにローブをきた老人が、ミノス王に宣告をした。一瞬、ぎょっとした空気が流れるが、ミノス王は笑い出す。
 「アルテウス、この男の紹介をしていなかったな。この老人は皮肉屋のディプティスだ。こいつは今のように、よく私を楽しませてくれる。さあ、今度はお前が楽しませてくれ。お前がここにきた用件はなんだ?」
 うーむ。登場人物が一気に増えて混乱してきたぞ。などと言っている場合ではない。ここでの選択肢は4つだ。

・(持っていれば)父の親書を手渡す。
・ここに来たわけを説明する。
・エリデュロスの名を持ち出す
・親書をなくしたという。

 当然、親書は持っていないので最初の選択はない。エリデュロスとは、アテネでリンチに遭っていたのを拙者が救ってやった男の名だな。奴はミノス王と縁があるのか?
 とりあえず人間の貢物をやめてもうよう、父上から頼まれたことを説明することにした。
 ミノス王は聞き終わるとちょっと考え込んでから、言った。
 「アイゲウスはお前にわしへの親書を託したはずだが。お前が本物の王の息子なら、まずはそれを見せてくれ」
 「そ、それは……オリンポスの神々のいたずらか、数々の冒険の最中に行方不明になったでござる」

***

 しばらくすると、拙者は身ぐるみを剥がされ、独房の中で寝転がっていた。
 牢の外では衛兵が何度も巡回していて、脱出は難しそうだ。
 残念ながら交渉は不成立だな。釈明の機会も与えぬとは、噂に違わぬ非情な王だな。
 なんとか牢を脱出して迷宮に潜り込み、ミノタウロスを倒すしかあるまい。
 それにしてもヘパイストスから与えられた武具を没収されたのは痛いのぉ。この後、取り返すことはできるのじゃろうか。

by 銀斎


2021年05月02日(日) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その1

 船はゆっくりとクレタ島の港に接近する。拙者は強い日差しに目をしばたたかせ、大きく背伸びをした。
 ついに到着したな。第二巻「ミノス王の宮廷」を始める前の状態は次の通りだ。

原攻撃点  6  ヘパイストスの剣(攻撃力+4)*
原防御点 10  ヘパイストスの胸当て(防御力+4)*、ヘパイストスの盾(防御力+4)*、古びた兜(防御力+2)
名誉点  28
恥辱点   6
所持品  母の宝石
* 神々やそれに属する生き物との戦闘では、ポイントが6に増える。

 名誉点がなかなか高ポイントで、良い調子ではないか。強力な武具も手に入って戦闘もほぼ無敵じゃし、三度目の挑戦にしてはかなり上出来だ。
 クレタ島の陸地に足を踏みしめる前に「アルテウスの復讐」を読み返してみる。おおっ!?ヒントを使えば、あの牡牛と戦わずにすんだのか。なんとまぁ……。それにアイゲウスからの親書も、ヒントを使えば紛失せずにすんだらしい。
 じゃが、ヒントを覗くとよくペナルティを喰らうからな。今回、これだけ名誉点を貯金できたのも、ヒントにあまり頼らなかったからともいえる。結果的に良かったじゃろう。

 「よくやったアルテウス」
 ふいに聞こえた声に物思いは破られた。前を見ると、拙者にこの冒険の始まりをつげた、あの使者の神ヘルメスが目の前に立っている。ヘルメスはにっこりと笑って神々のメッセージを告げた。
 「実際のところ、予想した以上の出来栄えだぞ。だが、悪い知らせがある。ここクレタは古の邪悪な力がはびこっており、オリンポスの神々は力を振るいにくいのだ。おそらく、今後はそうそう助けてはやれないだろう。お前は今まで以上に自分の力でこの冒険を切り開いていかなければならないのだ。くれぐれも気をつけろ」
 ヘルメスの姿はかき消えた。なんの、神々の気まぐれに振り回されることが無くなって返って助かるわい。もっともアレス神からの授かった特典(原攻撃点に+2)はこの巻も有効のようなので、そこは少しほっとするぞ。
 さらにこの巻では、持久点30と情報点0という2つの能力ポイントが新たに備わった。何の役に立つかよくわからぬが、それはおいおい判明するじゃろう。

 船は到着した。拙者が船を降りると船長とミノス王の衛兵が会話をしているのが見えた。
 「ミノス王とアイゲウス王の協定にしたがって、14人の若者を連れてきました」
 「ごくろう。ミノス王が待ちかねておったぞ」
 衛兵は鷹揚な態度で船を下りて街道を歩くように指図する。船長はちょっとうらめしそうに衛兵を見上げると、言葉を続けた。
 「アテネ人はこの重圧にうめいています。もし民衆の叛乱がおきれば、あなた方には一切の貢物が得られなくなるでしょう」
 「ふん、それがどうした。貢物がなくなれば、軍船を何十隻とアテネに向かって繰り出すだけだ。ところでこいつは何者だ?」
 衛兵は拙者の方を指差した。拙者は鋭く睨み返すと「アイゲウス王の息子、アルテウスと申す」とだけ答えた。
 「ほぉ、アイゲウスがまた息子を堀り出したのか」
 衛兵はうさんくさそうにこちらをじろじろと眺める。無礼な。
 「彼のいうとおりアイゲウス王の息子です。そして彼は王からの親書を携えてきたのです」
 ふいに出た船長からの説明にぎくり、とする。ここで親書を紛失したとは口が裂けてもいえんな……。えーい、なるようにしかならんわい!
 拙者は開き直る事に決めた。そして荷物の搬送にいそがしい船員達を背に、ミノス王の宮廷に向かって大股でのっしのっしと歩き始めた。

 ミノス王の宮殿は思っていたより港から遠かった。振り返れば14人のアテネの若者達も、兵士どもにはさまれるように歩いていた。
 日差しの中を延々と歩きつづけたあげく、巨大な宮殿に到着したのは数時間後だった。そびえ立つ城門を見て拙者はからずも感嘆の声をあげてしまう。周辺諸国を恫喝して得た富であろうが、その繁栄ぶりは驚かされる。
 衛兵隊長がニヤニヤ笑いをしながら拙者を見ている。
 「よーし、到着したぞ。囚人どもを牢に入れろ。それからそこの田舎者はミノス王の前まで連行しろ」
 衛兵隊長の命令で拙者をつかもうとした兵士に、きつい蹴りを入れてやる。
 「心配には及ばん。自分でミノス王の前まで歩いてゆけるわ!」

by 銀斎


2021年05月01日(土) 続、アルテウスの偉大なる冒険談

 このギリシャ神話アドベンチャーシリーズのリプレイに登場する「銀斎」というリプレイキャラは元ネタがあって、それはファイティングファンタジーシリーズの「サムライの剣」に登場する浪人、余呂銀斎という敵キャラなのです。
 この浪人は、登場シーンはわずかしかありませんが、飛んでくる弓矢を刀で叩き落す腕前に加え、真っ当な果し合いで勝負をつけようとする、侍としてあっぱれな敵でした。戦闘力で言うと、技術点10に体力点16と、平均的な能力の主人公に拮抗する技量です。
 倒したあとに家探しすると、銀斎に似た子どもが2人遊んでいる絵柄の掛け軸が見つかるというのも、何か主人公には知りえない物語の想像をかきたてられて印象に残っています。
 なので、このアルテウスの冒険は、その銀斎がギリシャ神話の世界で活躍するというコンセプトにしました。(ちなみに銀斎が敬愛する武士の名を新免武蔵と呼んでいるのも、サムライの剣の世界での伝説的英雄の名前だからです。)
 つまり今風に言うと、異世界転生もの!「主人公に倒されたと思ったら、ギリシャ神話の世界にいた件」みたいな話しなわけです。(笑)

 さて、リプレイも続いては第二巻「ミノス王の宮廷」
 これは旅を続ける一巻と三巻の冒険とは違って、多くの人々としばらく生活をしながら、宮廷内の陰謀に巻き込まれていくのが前半部分です。まあ、あっさり投獄されて、ミノタウロスの生贄に迷宮に放り投げられる展開もありますが。
 後半はいよいよ、シリーズクライマックス。ミノタウロスのいる迷宮に入り、兄テセウスの敵をとるために、化け物を退治します。
 残念な点と言えば、クレタ島ではギリシャの神々の力が届きにくいとの事で、このシリーズの特徴であるゲーム中の神々の介入数が減っていることでしょうか。とにかく、ミノタウロスの強さが際立つこのリプレイをお楽しみください。


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