ぼくたちは世界から忘れ去られているんだ

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2002年03月31日(日) 謝罪。いいわけ。今日の夢。
ごめんなさい、続き明日って書いたのに更新しないで。
最後まで書いて、さぁメモ帳保存だ、「保存しますか?」で、いいえを押してしまいました。かなりショック。あたまのなかサイダーみたいにしゅわしゅわ。
シュワルツネッガーのようにパソコンを壊したい。思い切りネガティブになって「コピーはオリジナルをこえられないのね」なんてへこんでみたり。

ここの日記は、普段生活していて、ぼんやりと浮かんだことを書いています。
これもわたしだし普段げらげらわらいながら、塾の先生の似顔絵を書いて、はりきってみせて「これ俺?ふーん」とか適当な反応されて(先生国籍不明な顔立ち)「先生、ひでー、彼はきっと金城のつもりなんだ」とかいいながら因数分解でミスをするようなところもわたしそのものです。

今日、クマのプーさんに蜂蜜をかけられ、食べられる夢をみました。
ティガーがわたしの足元をとんでいました。ピグレットはプーさんのおなかをさわって食べすぎだといていました。
気付くとそこは電車の中でヘッドホン越しにゆらゆら帝国の坂本さんが「これはパーティじゃない」といっていました。

2002年03月29日(金) 「      」
 わたしの声は、きっと空の上、宇宙のかなたまで響く。



 わたしは生まれた頃からずっとすんでいた暖かい家を出て、東京にやってきた。
 歌手になるのだ、と決めていた。
 昔から、みんながわたしの声を誉めた。鳥のようだ、とおじいちゃんは言った。天使みたいだ、と幼い恋人はいった。そのどれよりも上だよ、とパパは言った。わたしはそれが誇らしかった。
 成功したら、また帰るからね、といって、わたしは一人で狭いマンションに住む事にした。
 東京はもっと輝いてる所だと思ったけど、汚くて、そのくせ夜中まで明るくて、歩いてる人はみんな俯いている。へんな街だ、とわたしは思った。

 初めての夜。冷蔵庫が唸る音が、わたしを不安にさせる。聞こえなくするには、自分も歌いたい、と思ったけれど、この小さな箱の隣にも、小さな部屋があって、人が住んでいる。だからダメだよ、と思って、外に出た。
 空気はだらしなく冷え、埃のようなお酒のようなごくごくわずかなかおりが、ふるさととは違うのだということを、わたしに知らしめた。
 マンションのそばに、小さな公園がある。暗くてよくわからないけれど、どうも人はいないみたいだ。わたしは泣きながら、少しだけ歌った。
「誰?」
 誰かが近付いてくる。どうしよう。知十七です、といった。
「へぇ、じゃぁ、高校生だ。わたしは二十七。オバさんだね」
 高校は、行ってません。田舎から、来ました。
「ふぅん、歌手、なりたいの?」らない人に違いないのに。
「歌ってるの?」
 わたしは頷いた。。そうです、とか言ったほうがいいかな、でも怖い。
「へぇ、ずいぶんと綺麗な声ね」
 やさしい声だった。わたしはそのやわらかい口調にすこし安心した。
「あなた、いくつ?」
 
 わたしは何度も縦に首を振った。この人は、最初の希望かもしれない。
「へぇ、じゃぁわたしについてきなさいよ。わたし、こう見えても芸能プロダクションの、社員よ。すっごくえらいわけじゃないけどね」
 わたしはその人に付いていくことにした。ここまでやさしいことを言ってくれる人だ、悪い人のわけがない。おばあちゃんがいつも言ってた。楽しく暮らしたければ、人を好きになって、人を信じて、生きていけばいいって。
 彼女のうちは、わたしの住んでいるところなんかよりずっとずっと綺麗なマンションだった。
 すごくおしゃれなソファがあって、テレビは大きく、冷蔵庫は静かだった。わたしは少しほっとした。
「あなた、名前なに?わたしは、ハナ。呼び捨てでいいよ苗字は、言いたくないんだ。ちょっと、いろいろあってね。あなたも下の名前だけでいいよ」
 わたしは答えた。
「サトコ。知恵の智に、子供の子。サトコ」
 じゃ、サトコ、よろしく、といって。彼女は客間へわたしを案内した。
「あなた、喋るの、苦手なの?」
 わたしは頷いた。
「大丈夫、最近はそういうのもウケるから。歌姫系。大丈夫よ、さ、もう寝て。明日からは、忙しいよ」
 わたしはやわらかく沈むベッドで幸せな生活を夢見ながら、そっと瞳を閉じた。



 真夜中に、怒鳴り声で目がさめた。隣の部屋を見る。どうやらハナが電話で誰かと口論をしているようだ。
「なんでよ!なんでわかってくれないのよ!最低!もういい、もういいってば!」
 そういうとハナは乱暴に電話を切って、ほうり投げた。
 わたしは、怖くてまた寝た。誰にだって、けんかをする夜ぐらいある。わたしはよく喧嘩した弟を思い出して少し泣いた。

 次の日の朝、わたしがおきると、ハナが朝食を食べていた。
 ハナが昨日みたいに怯えた、でも攻撃的な目になって、言った。
「誰あんた?ちょっと向こういってよ!ちょっと、ってば」
 ハナがわたしに近寄り、手を振り上げた、わたしはやめて、サトコです、といった。その声は小さすぎた。ハナは思い切り強い平手打ちをわたしにくれた。
「サトコです。昨日会った。思い出して」
 わたしがそういうとハナはあせったように言った。
「あ、ごめんなさい。わたし、酔ってたみたい。サトコね。ごめんなさい」
 ハナは取り繕ったような笑いで、わたしに朝食の卵料理は何がいいか、尋ねた。


明日に続く。

2002年03月28日(木) 最終回は突然やってくる。
 新連載ってすごく好きだ。小さい頃読んでいた雑誌があった。おはなしとかちょっとしたマンガとか「やってみよう」みたいなのがたくさんのってるやつ。それの次号予告で「来月、新連載!」とか書いてあるとわたしの胸は高鳴った。最終回は、嫌いだった。
 作者が死んで終わる、一話完結ものはすごく完璧に見えた。
 その作品の世界はけして動くことなく、そっと閉じていく。いや、開いたままだ。

 ドラえもんの最終回の、噂と言うのがある。
「ドラえもんなんて本当はいなくて、すべての物語は、植物人間状態ののび太のみた、夢だった」と言うものだ。わたしはそれを聞いたとき、真っ先に思ったのが、「ドラえもん」という話自体がないのではないだろうか、ということだ。
 そのドラえもんの噂話も、今目の前にいる人間も、わたしが見ている、夢だったら。
 そのときそう思い初めてまだわたしは、夢の中にいるような感覚で生きている。


 エリカは言った。
「エリカにとって特別な名前、なの。エリカって言うのは。パパもママもエリカのこと、エリカ、って呼ぶの。エリちゃん、とか、そんな風には呼ばないの。エリカって言葉は神聖な響きさえ含んでいるようにエリカには感じられる。エリカ、って自分の事呼ぶなってエリカ、何度も言われた。でも、こうでもしないと、エリカ、エリカでなくなっちゃうよ。でもね、エリカっていたの。たくさんいたの。英語の先生、いるじゃない?あの、外人の。あの人、エリカって言うじゃない。そしたら去年、最初の授業で自己紹介させたとき、エリカが、マイネームイズエリカって言ったの。エリカ、苗字なんて要らないから、エリカ、って言ったの。そしたらあの外人、オーウとかワーオとか言ってわたしもEricaよ、よろしくって言ったの。もちろん、英語でよ。
 そのとき、エリカの夢は終わったの。そのドラえもんとおんなじだね。エリカが特別だって信じてた、美しいと信じていたエリカとそのまわりの世界はエリカがずぅっとずぅっとみてた夢でした。って感じ。もう一度、夢がみたい。わたし、将来、結婚したら、だんなさんに、わたしのことエリカって呼ばせる。でも、そのだんなさんがエリカ以外の人をエリカってよんでたとしたらエリカ、だんなさん、殺しちゃうよ」
 一息に言い終えると、大きく息を吸って、吐いた。その吐息はどこか甘い匂いがした。

 エリカは、今の会話で、なんどエリカと言っただろう。わたしは考えてみる。そして、エリカに尋ねる。今、何回、エリカって言ったと思う?と。それを聞くと、わたしは目を閉じた。エリカの言葉に集中するために。エリカは一度に話す量がすごく多い。甘ったるい声で、でも早口で、今言わないと死んでしまうとでも言うようにまくし立てる。そうだ、エリカはいつだって人の四倍ぐらいの速さで生きている。

「何回言ったかな?エリカって。でもね、本当はエリカ、エリカって言葉が在れば生きていけるんだ。まわりの人が、エリカって微笑めばエリカ幸せ。エリカって、口調を荒げて言えばエリカ反省する。エリカって、愛を込めていってくれればエリカ愛を返す。
 広辞苑ってあるじゃない。でもあんなに言葉ってあるべき?」
 急にエリカはゆっくりと話した。ゆっくり、はっきり、と。四倍速のエリカが、突然標準モードになる。
「ほんと、エリカだけで良い」
 エリカは私のほうを見た。
 わたしはすこしさびしい、と思った。わたしは自分の中の感情を、「さびしい」と言う言葉にして、まとまった気分になっていた。もし、言葉が、なかったら。
「広辞苑っておっきいよねー。重いし。ん?こういう場合は厚いっていうのかな?」
 そうだね、とわたしは同意した。
「あれで人殴ったら、殺せるかな?」
 殺せないよ、なぐってみる?とわたしが言うとエリカは笑った。子供みたいだ。子供なんて嫌いだ。幸せと恐怖しか知らないから。羨ましいのかもしれない、エリカが。でも、それと同時に今すぐにでもこの場を―ここは汚い教室だ。まったく、特別でもなんでもない場所。ただ、そこにエリカがいるというだけ―去りたいような気分にさえなる。
「でも、あの中にある言葉全部ぶつけたら、きっと人は死んじゃう。綺麗な言葉もあるけど、ほら、綺麗な言葉ってすぐに忘れちゃうじゃない。エリカ、格言とか苦手。でも、嫌な言葉はずぅっとエリカを責めるの。だからきっと死んじゃう」
 エリカはまた嬉しそうに笑った。
 汚い言葉、わたしは何度心の中でエリカにぶつけただろう。綺麗な言葉、エリカからなんどあふれ出てきただろう。格言など、吹き飛ばせる。エリカ、の一言で。
 エリカは知っているのだろうか?
 言葉より重くはないけれど、広辞苑より重いものだったら、わたしだって、たくさん持っている、と言うことを。



★★★
自由に表現し、発表する。
こんなこともできないような国に、もしかしたら、なってしまうかもしれない。
青少年有害社会環境対策基本法案に、絶対に反対します。
http://members.tripod.co.jp/event0307/(ごめんなさい、コピペでいって)

あと、メールアドレス、およびメッセンジャーのアドレスを変えました。
neverendingcake@hotmail.comです。
よろしく

2002年03月27日(水) 今日こんな夢を見た。悪夢かもしれない。けれど夢から覚めたとき、何も知らなかった子供の頃のような幸福感がわたしを包んでいた。
 今日の午後、殺人鬼に会った。
 わたしが、やぁ殺人鬼、と声を掛けると殺人鬼は左手を軽くあげて、やぁ偽善者、久しぶり、と言った。相変わらずその左手にはぎらぎらと光る鋭敏なナイフが握られていた。
「殺人鬼、最近会わなかったね。どうしてた?」
「女の子にフラれたよ。あたし、殺人鬼なんかとは付き合わないって。ひどい話だと思わないかい?」
「それはひどい。殺人鬼だからって差別するなんて。相手は誰?」
「綺麗の町に住む歌姫だよ」
「あぁ、歌姫か。あいつは性格が悪いって有名だ。たしかに、綺麗だし、歌はうまいし」
 わたしの言葉をさえぎって殺人鬼がいった。
「だけど、あいつは歌姫じゃないか」
 わたしは同意した。
「そうだ、歌姫だ」
 だからしょうがないさ、と殺人鬼はいった。
「しかしなんで殺人鬼はだめなんだろうな。おれは人を殺したことなんてないのに」
 わたしは驚いた。わたしはてっきり彼は毎日のように人を殺し、生き血をすすって生きていると思っていたのに。
「へぇ、殺人鬼なのに殺人をしたことがないのかい?でも君の周りではよく人が死ぬけれど」
 殺人鬼は、心外だとでもいうように俯き気味に首を振った。
「どうしてなんだろう。しかし俺は殺人鬼なんだ。それだけは確かだ。あぁ、お前は偽善者らしいのになぁ。いつだって人ににやにやと媚び諂って、災難が訪れたら真っ先に逃げて」
「そうかい?君にそういわれると自信がつくよ。君もがんばればきっと、殺人ができるさ。君、殺人鬼になって何年になる?」
 殺人鬼は難解な数学の答えを導き出したかのような明朗な声で言った。
「三年と四百八十五日さ。もう少しで殺人鬼生活四年目になってしまう。殺人鬼の前は臆病者をやっていたんだ。その頃のくせが残っているのかもしれない」
「しかしわたしだって偽善者らしくなるには時間がかかったよ。わたしは偽善者の前はナルシストをやっていたんだ。だから最初のほうは、あぁわたしがなんでこんな奴に媚を売らなきゃならないんだ、っていっつも悩んでた。でもしばらくして慣れた。いまじゃぁ世界で一番の偽善者だって
博覧強記の奴にも言われるほどさ」
「あぁ羨ましい。おっといけない。俺は臆病者の前は羨ましがりをやっていたんだ。そのときのくせが残ってるんだろうか。ダメだなぁ。殺人鬼だったらすぱっと殺さなくてはなぁ。」
「しかし何故君は人を殺さないのかい?」
「なんというか、最初の一人を誰にしたらいいか、わからないんだ」
「それは確かに重要かもね。誰がいいかなぁ、死にたがりがいいか、厭世者がいいか。うーん、考えてみると難しいな」
「歌姫、は、どうかな?」
「歌姫?歌姫はダメだよ。彼女がいなくなったら、この世に歌が響かない。そうだ、憎しみの町に住む、詩人はどうだい?」
「詩人!ダメだよ、あいつがいなくなったら、大変なことになる。詩人の詩が失われたら、みんななんていうだろう?」
「それが、今度清らの村に詩人が生まれたんだって。生まれたときから詩人なんだよ?それってすごいよ。そんな人、滅多にいない。だから今の詩人はじきにいらなくなる。わかるだろう?詩人は他のものになるのをきらうからね。あいつらは自分たちが一番だっていつだって思ってるんだ」
「そうかぁ、でも、大丈夫かなぁ?」
「そうだよ。だってわたしこの間詩人の作った詩を読んだんだけどね、詩のほぼ全部が「死にたい」っていうような内容だったよ」
「そうかなぁ、だって詩人の書く死の詩は全部絵空事じゃないか。かっこつけに過ぎないよ」
「いや、わたしにはそれは本当の詩に見えたよ。素晴らしかった」
「よし、決めた、俺、詩人を殺しに行く。たぶん、一人殺したら、簡単に二人目も殺せるだろうし」
「がんばんな。じゃ、わたしこれから街の掃除に行くから」
「お、なかなか偽善らしいな。じゃぁな。また会おう」
 殺人鬼はものすごいスピードで走り出した。わたしはゆっくりと歩いた。
 わたしは殺人鬼が果たして無事に初仕事を終えることができるのだろうか、と、自分の事のように胸を高鳴らせて、広場へと急いだ。すると、殺人鬼はやっと自分の仕事の仕方を覚えたらしく、道行く人がすべて血の色に染まり、殺人鬼は狂ったような声をあげて左手のナイフを振り回していた。
「おい、殺人鬼!あんまり調子に乗ると、狂人になってしまうから、気をつけなよ」
 そうわたしが叫ぶと殺人鬼はサンキュー、と言ってまた人を殺した。
「あーあ、これじゃ、街が汚れちゃうよ」
 そういうとわたしはやりたくはないのだけれど、良いかっこをしようとして、わざとそうつぶやき、血まみれの噴水をデッキブラシで掃除し始めた。
 そろそろ殺人鬼が、わたしを殺すに違いない。
 わたしは殺人鬼を心のそこから褒め称えた。
 わたしは偽善者ではなくなったようだ。あぁ、これは死ぬのだ、とわたしは静かに悟り、後ろを振り返った。
 血まみれのナイフを振りかざす殺人鬼が、そこに、いた。

2002年03月26日(火) 、そして三年後

 そして三年後、私たちがどうなっていたかを話そう。
 宗司、幸せだよ、とだけ言ってわたしは宗司のもとを離れたのだけれど、そう、宗司は今もまだ幸せだという。わたしは、不幸せだ。
「陶子、久しぶり」
 宗司が言った。本当に久しぶり。わたし、ずっと、宗司に会いたかった。
「元気にしてた、わけ、ないよなぁ。ごめんな。俺のせいだ」
「そんなことないよ、宗司、今でも大好きだよ。三年もあえなくて、さびしかった」
 宗司はわたしのほうを見た。三年前と同じ大きな目。みつめられるだけで、どきどきする。
「三年間、宗司は何してたの?」
 宗司は思い出を語るような遠い目で答えた。
「んー、陶子にあえなくなってから、ずっと独りだった。最初はなんだか人間全部が敵に見えた。俺、陶子に甘えてたんだ、よね。なんか周りの目とか気になって。でも、いろいろあって、今は言える。いきてきて、良かったって。陶子、ありがとう」
 宗司の真剣な言葉に、わたしは不覚にも目が潤んだ。
「宗司、ありがとう。ありがとう」
 宗司はわたしを抱きしめた。三年前と変わらない、力強い、腕。
 あぁ、これは愛なんじゃないか。


★★★

 ドアを開ける。
 薄暗い部屋で、宗司が一人で立っていた。腕は誰かと抱きしめあっているように、輪を描いている。バレリーナのポーズにも見える。
「宗司?なにやってるの?」
 宗司がこちらを向く。
「バカ、お前失礼だぞ。な、陶子?」
 宗司が誰もいない宗司の隣を、なでる。女の輪郭が、見える。宗司がパントマイムの名人だなんて、知らなかった。
「おい、千葉、お前出てけよ」
 宗司が、嗜めるように言う。
「どうして?」
「どうしてって、みりゃわかるだろ。俺と陶子、今、感動の再会してるんだから。三年もあえなかったんだぞ。恋人同士だっていうのに」
 あぁ、宗司は、まだ、真実をみつめていないんだ。
「ほらほら、向こう行けって。お前、妬くなよ、バカ」
 みている方が、つらくなる、宗司の笑顔。
「宗司、ねぇ、聞いて」
「なに?」
「陶子、もう、死んだんだよ、三年も前に。いい加減、みとめなよ」
「はぁ?お前なにバカなこと言ってんだよ。な、陶子」
 宗司が、陶子がいるらしき場所に向かって、微笑む。何もない場所に、口づけをする。
「ちがうよ。自殺、したんだよ、陶子は。忘れたの?」
「自殺?なに、お前、頭おかしいだろ。ほんと、ゆっくり休めよ」
「思い出して!三年前、あんたが陶子を裏切った。陶子はあんたを恨んだ。そして、そして、ビルの屋上から、屋上から、飛び降りたんだ!」
 宗司の大きな目が見開かれる。その目は、急に現実に引き戻され、澱んでいた瞳の色がクリアになる。涙が溢れ出でる。声にならない、宗司の声。
「陶子、陶子、陶子」
 わたしは肌身はなさず持っている、陶子の遺書のコピーを取り出した。
 陶子はわたしの親友だったから、わたしが持っている。
 わたしは陶子が大好きだった。美しくて、やさしくて、不安定で、悲しくて。
 でも、陶子はもう、いない。


「わたしは宗司を恨む。
 わたしは宗司のそばを永遠に離れない。
 それがわたしの呪い。
 それがわたしの愛。」

 宗司は泣き崩れ、そばにあったナイフで、その体を、刺そうとした。
 わたしはそれを奪った。
 相手は三年間部屋から外に出なかった男だ。難しいことじゃない。
 わたしは宗司が泣き止むまでそばにいようと思った。
 そして、泣き止んだのなら、その息の根を止めてあげようとも、思った。

2002年03月25日(月) 雨に歌えば


「ねぇ、私のために、雨はふると思う?」
唐突に言い放ったユカリは僕のほうを見ると、ため息をついた。なきそうに潤んだ目が僕をみつめてゆれている。ユカリは何故雨など気にするんだろう。
「僕は、遠い空からふった雨が、ユカリの頭の上に落ちるのなら、それはユカリのための雨だと思う」
ユカリの頭。黒くて長くてさらさらの髪。それが雨にうたれたら。それはとてもきれいだろう。
「バカじゃないの?だいたい、何度言ったらわかるの?僕、なんていわないでよ。気色悪い。あんた、女でしょ?」
ユカリが僕をののしるとき、僕は僕でなくなる。
ユカリに、「僕なんていうな」って言われるとき、僕は僕でも私でもなくなる。

私という一人称をつかっていた頃、(一人称がややこしくなるから、ここでは自分のことを名前で呼ぼう)カナコは幸せだった。幸せだと思っていた。
それが変わったのはユカリにであったからだった。
ユカリは「ふあんていなこども」だった。
9才のユカリの髪の毛は腰まで伸び、まるでおひめさまのようだ、とカナコは思っていた。
ユカリは美しかった。
美しくて、わがままで、残酷だった。
カナコは醜かった。
その醜さが、事故などによってではなく、生まれつきのものであることも、カナコがユカリにコンプレックスを抱く理由の一つだった。
カナコはやさしい子供だった。自分でもそう思ってる。
見えているのかどうか判らないような細い目で笑いかけ、歪んだ唇でやさしい言葉をかける。
自分の顔をはじめて鏡でみたときから悲しかったから、悲しい人の気持ちになることなんて大得意だった。

ユカリはわがままで、周囲の子供に嫌われた。でも、すぐに信頼を取り戻した。

それぐらい、美しかったということだ。

ユカリはカナコを嫌った。多分、今でも。
カナコが12になったとき、ユカリはいった。
「死になよ。なんで死なないの?だいたいさぁ、そんな汚い顔、どうしようもないじゃない。これで洗ったら?あげる。バースデープレゼントだよ」
そういうと、ユカリはカナコに瓶をひとつ渡した。うらに小学校の名前と、「理科室」と書いたシールがはってある。
「硫酸だよ」
そういうと、ユカリは笑った。この世のものとは思えない、美しい微笑み。
カナコは硫酸のビンを持ったまま走り去った。

その日の夜、ユカリは事故でその美貌を失った。
残ったのは、ゆがみきった性格と、美しく黒い髪だけだった。

それからユカリはカナコとよくいるようになった。

中学に入ってすぐ、カナコが早く学校に来すぎて、机に突っ伏して寝ていると、教室に二番目に入ってきたユカリが、筆箱からはさみを取り出し、カナコのセミロングの髪を切り落とした。
すこし茶のかかったぼさぼさの髪はあまり好きでなかったカナコは、一瞬だけ、ふわりと空に浮き上がるようなふしぎな感覚を感じた。
でも、すぐにその浮遊感は憎しみとなり、細い目はユカリをにらみつけた。
ユカリは笑っていた。なきそうにも見えたし、恍惚としているようにも見えた。ユカリはカナコのかばんの中に、もうぐしゃぐしゃの髪の毛を詰め込み、自分の席にゆっくりと腰掛けると、本を読み始めた。ユカリはドストエフスキーが好きだった。

その日からカナコは、僕になった。

中学で二回目の冬、ユカリは叫んだ。
「カナコ、聞きなさい!整形よ!整形手術よ!」

ユカリはまたもとの美しいユカリになった。僕は僕のままだ。
しかし、ひとつだけ変化があった。
元に戻ったともいえるユカリは穏やかな少女になっていた。
メランコリックになっていかにも少女らしい考え事をするユカリは、天使みたいだった。
けれど、僕が自分の事を僕といったときだけ、昔の残酷なユカリになる。
カナコが僕になった日のことを、思い出すのかもしれない。
天使のようなユカリは、あの日のことをどう思っているのだろう?

二人で学校から帰っていた。誰もいない公園を近道のために歩いていた。
「ねぇ、ユカリ、雨をふらせてあげる。ユカリのための、雨を」
そういうと、僕はユカリに雨をふらせた。
12のときユカリに渡されたのよりずっとずっとたくさんの濃い硫酸が入った瓶。
それを右手で握り締め、左手で蓋を開け、ユカリの黒くてさらさらの髪に、顔に、腕に、胸に、脚に、雨をふらせる。

ユカリがうめく。くろくてさらさらのかみ。すらりとしたからだ。かわいいおかお。きれいなゆかり。きれいなゆかりみにくいぼくぼくぼくぼくぼくぼくみにくいみにくいみにくいみにくいぼくぼくぼくぼくゆかりゆかりゆかりゆかりがないているぼくはわらっているわらっているのはわたしわたしわたしカナコカナコカナコみにくいのはわたしわたしカナコカナコぼくぼくぼくぼくぼくぼくぼくぼくぼくユカリユカリユカリユカリユカリユカリ。叫ぶユカリ大すき大好き大好きだいきらいにくいころしてしまいたいでもだいすきだいすきわたし、嫌い大きらい大きらい大きらい殺してしまいたいでもだいすきだいすきだいすきだいすきあいしてるあいしてるこれはあいだ。らぶだ。あいだあいだ


「私、あんたのこと、あいしてる」

そう、ユカリに言うと、私は夕焼け赤く染まる公園を走り去った。

2002年03月24日(日) 愛についてパートスリー
 その日一日待っても丹羽は帰らなかった。
 わたしは丹羽を待つのをあきらめ、うちに帰った。
 途中のコンビニでお弁当とお茶を買う。日本代表のユニフォームの形の物にしようと一瞬思っが、中身がわたしの好みではなかったのでやめて、サンドウィッチ(イッチと書くよりウィッチと書いた方が、わたしにはおいしそうに見える。なんとなく、バターがたっぷりと塗られている感じがする)を買った。
 夕飯は、椅子の上で膝を立て、フィギュアスケートをみながら食べる。
 テレビの中で綺麗な男の子が踊り終え、わたしが卵サンドを口に運んだ瞬間、インターホンがなった。
 丹羽だった。
「もしもし、ぼ、ぼ、僕だけど。ちょっと入れてくれる?」
 やだ、とわたしが言うと、そう、とだけ言って丹羽は立ち去った。そういう男だ。
 玄関の覗き穴から外を見たけれど、丹羽はいなかった。なんとなく、この間観たアメリを思い出した。
 わたしは丹羽を追って外に出た。
 丹羽はマンションの前の横断歩道の信号が青になるのを待っていた。車なんて通ってないのに。
「まってよ!」
 わたしは叫んでみた。大きな声を出したかった。
「なに?」
 丹羽はいつものやる気のなさそうな声で答えた。
「何があったわけ?昨日から」
「なんかね、いろいろあったんだ」
「いろいろ?」
「秘密」
 丹羽が何かを隠すところなんてはじめてみる。
「いいけど、別に。言わなくて」
 丹羽が赤信号を無視して横断歩道を渡りかけ、真ん中あたりでとまった。白と黒の縞々の白の部分に立っている。
「ねぇ、ありがとう。僕いろいろ考えたんだ。僕、どうやって死ぬかとかどうやって生きるかとかそんなことはずっと考えてたけど、死んだ後どうなるかとか、これから生きててどうなるのかとか、考えたこと、なかった」
 良くわかんない、けど、わたし初めて知った。丹羽も生きた人間だってこと。
 わたしはいつも拒絶してきた。自分以外の人間も傷ついてるとか考えてるとか、認めたくなかった。
 トラックが、丹羽のもとへ走ってきた。
 クラクションを鳴らし、邪魔だよ、と叫んで丹羽の横をすり抜けていった。
 丹羽は間抜けな顔でトラックを見ていた。
「バカじゃないの?」
 わたしが言うと、丹羽は歩道の脇にある空き地から石を拾って遠ざかるトラックに投げつけた。けれど、石はトラックには届かず、冷たいアスファルトの上に落ち、音を立てて弾けた。
 丹羽は二つめの石を拾い、また投げつけた。
 みっつ、よっつ、投げていく。
 わたしも真似して投げる。
 トラックが走り去ってもわたしたちは子供のように石を投げていた。

おしまい

サイトはじめてから反応、ないんですね。
もう、全然☆って感じ。星つけちゃうよ。マジ。
さみしいからさー、つまんねーとでも言ってよ!メールフォームならバッチしこよ。
アドレスの所、ばれたくなければ、なんか適当に書いてよ。
おねがいでしたー

2002年03月22日(金) 愛についてパートツー
わたしは丹羽が、大きらいだった。
不細工、という言葉さえためらわれるような顔。背中はぐにゃりとまがり常に体をゆすっていた。
努力はしないくせに、一度好きになった相手への執着はすさまじく、いつだったか、丹羽に毎日追い掛け回され、疲れきったとある女の子が、彼女のすむマンションに帰ると、丹羽が管理人の老人とともにホールで話していた。そんな性格の丹羽と何故わたしはいつも一緒にいたのか。それは、話したくもなくないから割愛する。一言で言えば、「親戚」。それもずいぶんと入り組んだ。
「サナちゃん」、と、丹羽はわたしを呼んだ。丹羽はNの発音が上手にできず、「サダちゃん」、といっているように聞こえた。

今日の昼頃、丹羽から電話があった。
「サナちゃん、サナちゃん、(サダちゃん、とやはり言っているように聞こえた)今日の夜うちにきて。お、お、お、お願い」
わたしは丹羽のうちに行った。すぐに帰れるように言い訳は用意しておいた。
それが、どうしたのだろう。丹羽はいない。
わたしは丹羽のうちで一人で一晩過ごした。
丹羽の布団など使う気になれず、床で寝た。
次の朝、起きても、丹羽はいなかった。
ポケットの中の、携帯が震える。液晶の画面には、「丹羽祥平」の文字。丹羽だ。
「も、もしもし。サナちゃん?あのさ、ごめんね。僕、本当、ごめん。ごめ、ごめ、ごめん」
相変わらずの喋り方。
「それでね、僕、しばらく、帰れないから、あの、鍵、しめなくていいから、僕のうちは、ほっといて、良いよ」
永久不変の真理を見つけ出したように丹羽は言った。
「僕、死にたい、けど、死なないから。大丈夫だから、心配、しないで」
そういうと、丹羽は電話を一方的に切った。
丹羽が死ぬ?信じられない。いつだって焦点の合わないマンガのような眼つきでにたにたわらい、呂律の回らない口ぶりで、わけのわからないことばかり言っていた丹羽が。

わたしは丹羽を見捨てたいのに、それができないでいる。
どうして。


2002年03月21日(木) 愛について
丹羽の部屋に入る。
丹羽はもうそこにはいなかった。
パソコンのモニターがぼんやりと光を放っていた。電源を消し忘れたようだ。
wordが立ち上がっている。
長い長い文章。それは、ひとつの小説だった。わたしは丹羽が使っていただろうずいぶんと低い(丹羽は背が低かった)椅子に腰掛け、その小説を読み始めた。
主人公の名前は「ヨウヘイ」。丹羽の名前は「祥平」。わざととしか思えない。
主人公は転校生だ。東京の(丹羽は東京に憧れていた)中学に編入し、一日目にしてクラスの中心的人物になる「ヨウヘイ」。小説は「ヨウヘイ」の過ごす学校生活を描いたものだった。
ヨウヘイは恋をする。相手はクラスのマドンナ(これは丹羽が文中で使った表現だ。なんと言うセンス)である「サナエ」。わたしは気味が悪くなった。わたしの名前は「サナ」。偶然だといいのだけれど。
ヨウヘイはチンピラ(これもまた丹羽の表現)に絡まれるサナエを助ける。サナエは真っ白のハンカチをポケットから取り出し、ヨウヘイの擦り傷に当ててくれる。(洗ったほうがいい気がする)。サナエはありがとう、とだけ言うと、小走りに立ち去ってしまう。
そこから先、ヨウヘイの感じたサナエのハンカチのぬくもりだけで、一ページ使われている。偏執狂、という言葉がわたしの中に浮かぶ。一文書き抜こう。
『サナエが僕の傷口に当てていったハンカチはほんのりと暖かく、そのぬくもりの中に僕はサナエのやさしさ、そう、町外れの教会の聖母マリアの絵を見たときに僕が感じたものとそっくりなものを感じた。』
つたない文章。丹羽はキリスト教ではないし、教会に言ったこともなかった。
そして次の日、ハンカチを返すヨウヘイにサナエが告白する。
『ヨウヘイ君……、好き……』
ヨウヘイはサナエを受け入れる。
二人はクラス公認の中となり、ヨウヘイに片想いをしていた女の子(その数六人)も相手がサナエならね、と二人を認める。
そして体育大会でも文化祭でもヨウヘイは活躍し、サナエとの中は進展していく。
文化祭の後夜祭、フォークダンスのあと二人は輪を抜け出し、屋上で愛と命について語り合う。
『僕は思った。愛、というのは不確かなものかもしれない。しかし、僕が今感じている、この気持ち、やわらかく、すこし切なくもある、それが愛。それだけは確かだ』
ちなみに、丹羽に恋人はいなかった。しかしいつでも誰かに恋をしていて、相手は丹羽のストーキングにも似たアピールに恐怖感を覚えた。
とりとめもなく物語りはつづき、劇的な終幕を迎えるでもなく、「それからも幸せに暮らしました」という形で、締めくくられる。
最後に、「ヨウヘイ」ではなく、「祥平」の気持ちがあとがきのようにかかれている。
『僕は、ヨウヘイになりたかった。でも、ダメだった。僕は醜い。さようなら』

机の引出しを開ける。
何も無い。
丹羽は、どこかへ行ってしまったのだろうか。

つづく。多分、明日に。

気付けば大好きなサイトの模倣っぽくなってて、こまりげす。
大好きだから、なのかね。

2002年03月20日(水) ファルセット
助けて、助けて、あいつが追ってくる。
長い髪振り乱しはさみを構えてあいつが追ってくる。
あいつって誰なんだろう。このはてしなく広がる荒野はどこなんろう。
わからない。
「走るの、遅いね」
あいつの声は、変声期独特の嫌な声だった。
わたしはあいつにつかまった。
あいつの細い腕が、崩れ落ちたわたしの足首をつかむ。助けて、と、思わず声がでる。
「どうして逃げるの?」
あいつが言う。
あいつの顔を、見ようと体をひねる。
あいつがしゃがみこむ。
「ねぇ、ねぇ」
あいつがわたしに顔を近づける。その長い前髪がじゃまして、顔が良く見えない。
つややかな唇だけが、はっきりと見て取れる。
血のように紅い。あいつは舌を出すと、自分の下唇をそれでゆっくりとなぞる。
それがあまりにも怖くて、わたしはまた逃げようとする。
あいつの手が伸び、わたしのスカートのすそをつかむ。わたしの足首を地面に押し付け、わたしを歩けなくさせる。あいつがわたしに問いかけた。
「どうして逃げるの?なんでこたえてくれないの?」
怖いからだよ、そういいたいのに言葉が出ない。
やだ、やめて、そういうのが精一杯だ。
わたしは逃げようとする。でも、あいつの力は強い。
逃げられない!
息が苦しい。多分、わたし今泣いてる。
「助けて!」
やっとはっきりと声が出た。けれどわたしの声に反応する人はいない。太陽さえ見えないのに、空は青く突き抜けている。
あいつが唇の端を持ち上げる。きっと笑っているんだ。
「助けてほしいの?」
そうだ、という意味をこめて首を持ち上げ、縦に振る。
「無理だよ」
どうして。
「どうしてだと思う?」
わからないよ。
「だって僕は君だから」
そういうとあいつははさみで髪を切り落とした。長い髪の向こうから出てきたのは、わたしの顔だった。わたしにそっくりな、でもわたしじゃない、顔。
おそろしくて悲鳴さえ出ない。
「僕は君の悪意。君の心の中でもっとも醜くもっとも美しいもの。僕は君の憎しみ、嫉妬、憎悪、自己嫌悪、後悔、殺意、自殺願望、破壊衝動」
まって、やめて、と叫ぶ。
「ねぇ、悲しみはちがうの?」
そう、今のわたしの中を占める心、それは諦めにも似た悲しみだ。それがもしあいつの一部なのだとしたら、わたし、きっとあいつに取り込まれてしまう。
「悲しみ?奴は清くて尊いね。悲しみは、君の、ここにある」
そういって、あいつはわたしの体を起こし、わたしののどを細長い指でなぞる。爪はとがり、光沢を帯びている。
わけがわからない。
「君には僕は殺せない。僕には僕を殺せない。でも、僕は君を殺せる。わかる?どうしてだか」
泣きそうなあいつの声。裏声にも似ている。
わからない。何を言っているのか。
首を振るわたしを、あいつはあきれたように一瞥して、あいつは
はさみを
 ふ
   り        あ
  げ  
     た
       。
    お
            ろ
   し
 た     
         さ    さ
っ    




た。



はっと、気付くと布団の中だった。
夢だ。
「今時夢オチかよ。最悪」
そんなことをつぶやきながら、顔を洗いに起き上がる。
蛇口をひねり、冷水を出す。ふと、視線を上に上げる。
鏡の中に人がいる。

それはわたしではなくて、あいつだった。



「」「」「」


ここからさきは、お願いです。
ここのサイトには掲示板がないので、
読んだ方は、よんだよ、とでもメールフォームから送っていただけるとうれしいです。
お願いします。

2002年03月19日(火) わたしをつかまえて
わたしをつかまえて。
ヨリコが突然はいたあまりに陳腐なそのセリフにわたしは驚かされた。
ヨリコは、自分自身の美学を持って行動する、悪く言えば自分だけしか見ないようなひとだから。「わたしをつかまえて」そのセリフが使われるのは、たいてい恋人同士で、これは偏見なのだろうけど、砂浜で笑いあったり、そんなシーンが目に浮かぶ。
そういったあまりにありきたりなものをヨリコは嫌悪していた。
ヨリコは一度わたしに言った。
「ねぇ、どうしてみんな鏡を見ないの?本当にやるべきこと、美しいことは、自分の中から出てくるはずよ」
今時の中学生には珍しい丁寧で穏やかな口調。中途半端に真似れば嫌味になりかねないヨリコのキャラクターは、あまりにも完璧で、周囲の人々は、戸惑いながらも受け入れてしまった。
そのヨリコが、「わたしをつかまえて」、だなんて。
ヨリコは、いつだってその胸の奥で静かにわく泉からきれいな水だけをくんで生きているような人だったのに。その泉は枯れてしまったの?
「どうしたの、複雑な顔して。あたし、何か変なこと言った?」
悩みこむわたしにヨリコはソプラノで問いかけた。
「言ったよ。私をつかまえて、だなんて突然」
口調を荒げるわたしにヨリコは首を傾げていった。
「そう?おかしいかしら。この状況、申し分ないわ」
どこが、「申し分ない」のだろう。今は昼休み。わたしたちは学校の屋上でお昼を食べている、そんな平凡かつ日常的な状況だというのに。
「あたしはね、本当につかまえてほしいの。わからないかしら。屋上、ランチ、快晴、ほら、ひこうきぐも。完璧だわ」
ヨリコは空を仰いだ。セミロングの髪が光に透けて明るい茶色になる。
屋上の周りに張り巡らされた金網のもとへと歩み寄り、ヨリコは金網を指でなぞる。
ちょっと、まってよ、といってわたしもヨリコのもとへかけて行く。屋上には、わたしたち二人しかいない。
「なんだか、歌でも歌いたくならない?でも、わたしは知らないわ。こんな日にあう歌を。やっぱりクラッシックかしら?ワルキューレ?」
ワルキューレってなんなんだ。名前しか聞いたことない。
「上へ、上へって歌うのよ」
ヨリコはゆっくりと歩いて、金網の鍵のあるところまで言った。
「ねぇ、知ってた?この鍵、簡単に取れちゃうのよ」
ヨリコは器用に鍵を外す。嫌な予感がした。
「わたしのこと、つかまえられなかったのね」
ヨリコはその長い足で屋上のふちをけると、蒼の世界へと飛び立った。
わたしは一人取り残され、立ち尽くしていた。

2002年03月18日(月) 小説書きに百の質問、に答えてみた。
1 まえがき(あなたの意欲をどうぞ)。
自己顕示欲の塊なので、呼んで突っ込みを入れていただけると私はうれしい。
2 あなたのペンネームを教えてください。
ギビ、なのかな?
3 小説の中の人物として○○○○(←あなたのペンネーム)を描写してください(自己紹介)。
ギビは、くだらない人間だ。この小説の中にも、これ以上でてこないだろう。
じゃぁ、わたしがなんでギビのことなんて書いてるのか、それはわたしがギビだからだ。
4 あなたの職業は?
中学生
5 あなたのバイト遍歴を教えてください(あれば)。
ない。やってみたい。
6 小説書き歴は。
小学生の頃にはメモ帳に「おはなし」を書いていた気がします。
7 小説書き以外の趣味を教えてください。
んー、喋ったり。
8 好きな小説のジャンルは。
現代小説。ジュブナイルもよく読みます。
9 好きな作家は。
ひとり、といわれたら、森絵都さん。外国の人だと、アクセルハッケとか。
10 尊敬する作家は。
赤川次郎。ものすごいペースで小説を発表するから。
11 好きな小説は。
森絵都「つきのふね」梨木香歩「裏庭」、「からくりからくさ」武井武雄「ラムラム王」
12 好きな映画は。
ゴーストワールド。
13 好きな漫画・アニメは。
西原理恵子「ぼくんち」、「ゆんぼくん」遠藤淑子「ヘヴン」石原まこちん「THE3名様」(最近のマイブーム)山下和美「ガールフレンズ」
アニメはあんまり見ない。千と千尋はおもしろかったよ。
14 好きなドラマは。
ボーイミーツワールド(海外もの)
15 良く聞く音楽は。
邦楽。Cocco、ゆらゆら帝国など。
16 心に残る名台詞と、その出典は?
「大好きが大嫌いになるのはどうしてですか」「同じものでできてるからしかたがないんだよ」(西原理恵子「ゆんぼくん」より)
17 月に何冊くらい本を読む?
数えてないけど、一日一冊ぐらいだと思う。
18 小説以外ではどういう本をよく読みますか。
勉強系。
19 読書速度は速い方ですか遅いですか。
速い、と思うなー。
20 あなたは自分を活字中毒だと思いますか。
うーん、活字なら何でもいいかも。やったことのないゲームの攻略本でも良い。
21 執筆に使用しているソフトは。
メモ帳。
22 初めて書いた小説のタイトル・内容。
タイトルは忘れた。確かかまくらづくりを途中でリタイヤした女の子がカップ麺を食べるって話。小三ぐらいだとおもう。
23 小説のタイトルはどうやってつけていますか。
適当。「ミノリ」が良い例。
24 あなたが書く小説のジャンルは。
どうなんだろう。ジュブナイル、と自分では思うけど。青春小説?
25 一人称と三人称、どちらで書くことが多いですか。
一人称ばっかり。文章へただから。
26 短編と長編、どちらが多いですか。
短編かなぁ。長編は書いても人に見せずにおいとく。
27 どのくらいのペースで小説を書いていますか。
ひとつの作品が出来上がるのに、ぜんぜん時間がかからないときも、すごくかかるときもある。
28 ストーリーと登場人物、どちらを先に決めるか。
断片的に映像が浮かんでくる。
知らない人ごめんね、「ミノリ」っていうのは、サクラの木の下でせめられて泣いている女の子の映像からできた。
29 ストーリーはどういう時に思いつきますか。
ふっと。
30 ストーリーはどの程度決めてから書き出しますか。
結構適当。
31 人物の名前はどのように決めますか。
知ってる人のもじり。
見に覚えがある人がよんだら、「あぁーあ」となるよ。
32 資料をどのくらい集めてから書き出しますか。
資料要らないなー
33 小説を書くときにあなたが気をつけていることは。
自分が楽しい、というのを大事に。あと、タイプミス
34 小説を書く能力は、どのように磨きますか。
ないから、みがかない。
35 ネタが無いときはどうしますか。
すんごいどうでもいい話を書く。
そうするとだんだん、書きたいことが浮かんでくる。
36 あなたが小説を書く上で影響を受けたものはありますか。
影響受けまくり。今考えてみると、「ミノリ」は「トーマの心臓」(萩尾望都)に影響受けすぎ。
37 他の人の書いた小説を読むとき、ついつい注目してしまうのはどういうところですか。
おもしろさ
38 これから書きたいテーマは。
いじめられてる好きな人をいじめたくなるこころ。
39 感想はどのように得ていますか。
「メールちょうだい!」とか言う。
40 批評されても良いですか。
うん。
41 あなたの未来予想図、22世紀の世界はどうなっていると思いますか?
二十二世紀の人にとっての現実。
42 ますます発達する科学。人間のクローンについてあなたの考えは。
うーん、科学とか倫理とか抜きにして、「やだなー」って思う。
43 超能力やUFOを信じますか?
信じたい。
44 世界の終末はどのように訪れると思いますか。
わたしが死んだときに、この世界は消滅する、ということなのではないでしょうか。
45 世界平和は実現しますか。
どうだろう、完全な平和ってあるのかな?戦争がない、イコール平和ともいえないし、嫌いになったものは受け入れられなかったりするし。
46 最近の凶悪犯罪についてどう思いますか。
「最近」に限らず、凶悪犯罪って、あるんじゃないですかね。「最近」とかいわれると、ちょっぴし切ない。
47 政治家に物申す!
がんばれ!
48 宗教についてどう思いますか
いいと思う。ただ、その宗教を理由に人を傷つけるのは、許されない行為だと思う。
49 一日は二十四時間ですが、ほんとは何時間くらい欲しいですか?
日没から二十時間ぐらいほしい。平日だけ。
50 現代に生まれてきて満足ですか。現代以外ならいつ頃生まれたかった?(過去・未来どちらでも)
ベルサイユ宮殿で踊りたかった。
51 「ファンタジー」とは?
非現実であること?よくわかんないや
52 何処かに引越しをするとしたら何処へ引っ越しますか。
もっと学校のそばへ!(私立なのだよ)
53 旅は好きですか。何処へ行きたいですか。
好き。南国に行きたい。
54 登場人物の死についてあなたの所見を。
わたしはそのとき興味のあることを題材にするので、だれかが小説の中で死ぬのは、意味があればいいとおもう。
55 メールや掲示板の書き込みなどで「顔文字」や「(笑)(爆)(死)」の類は使いますか?
使わない。使ってる人見るとクロマティ高校のネット番長思い出す。
56 昨今の日本語の乱れについてどう思いますか。
言葉って生きてるんだなー。
57 社会に不満を感じることはありますか?どういう時ですか?
感じまくり。
58 小さい頃、将来何になろうと思っていましたか。
先生。
59 あなたの人生設計を教えてください。
高校出て大学入って今やりたい、と思っていることを勉強してそれが役に立つ職業につき、それをがんばりつつ私生活も充実。結婚願望は人並みにありますよ
60 外はどんな天気ですか。風景も含めて少し描写してください。
椅子から立ち、窓に歩み寄り、カーテンをあける。そんなことすらもできない。
今外はどんな天気なのだろうか。ひどい雨とか、雪とか、そんなのがいい、そう思う。もしもそうなったなら、あの人に会わないですむ。
61 読書感想文は得意でしたか。
うん。賞とったりしたよ。
62 国語は好きですか?好きだった学科を教えてください。
国語好き。好きな教科、というより範囲によりますね。
63 学校は好きですか。
好き。好きじゃなきゃ行かないもん。毎日行ってる。
64 運動は得意ですか。
ぜんぜんダメ。
65 鉛筆の持ち方、正しく持ってますか?
ダメダメ。
66 実生活で「あぁ自分は小説書きだな……」と実感することはありますか?どういう時ですか。
暇だと書きたくなる。
67 新聞はどこまでちゃんと読んでますか。
ぜんぜん読まない。朝日新聞なんだけど、「あ、今度からマンガしりあがり寿じゃん。やったー」ってレベル。
68 購読している雑誌は。
適当に買う。キューティ、オリーブあたり?あ、スピリッツとか月刊ガラスの仮面とか。
69 本は本屋で買いますか?古本屋?図書館派?
絶対本屋。
70 詩・短歌・絵など、小説以外で創作をしていますか。
詩は書くけど、絵は落書き程度。
71 恋人はいますか。
いません!いません!いません!らーらーらーいーなーいー
72 何をしているときが一番楽しいですか。
楽しい、とか考えないですむから寝てるとき。
73 あなたの人生の支えはなんですか。
まわりの人。
74 懸賞小説に応募したことありますか?その結果は?
ない。でも、塾で小説コンクールみたいなのがあって、それでなら賞とったよ。
75 日記は書いていますか?
書いてる。
76 今までで一番衝撃的だったことは。
一番最初の記憶。
自分が生まれた世界というのをはじめて認識したとき。
77 睡眠時間は何時間くらいですか?
七時間
78 夜、眠りにつく前に布団の中で何を考えていますか。
頭の中で映画みたいなのが流れる。
79 長時間電車に乗る時、車内で何をしていますか。
音楽を聴く。
80 ネタになりそうな実体験を教えてください。
これからするから教えない。
81 どうして小説を書くのですか。
楽しいから。
82 小説を書いていて嬉しい・楽しいときはどんな時ですか。
書いてるとき
83 小説を書くうえで苦労することはなんですか。
パソコンで書くと目が疲れる。
84 小説を書く時の状況は?(場所・時間・BGM等)
自分のうちの部屋。無音。
85 周りの友人や家族などはあなたが小説書きであることを知っていますか。
知ってる人も、知らない人も。
86 あなたの周りに小説書きはいますか?何人くらい?
結構たくさん。
87 スランプに陥ったことはありますか?どう乗り切りましたか?
ない。だって、結果なんていらないもーん。
88 長時間パソコンと向き合っていると目が疲れませんか?対策はしていますか?
長時間向かわない。疲れたらやめる。
89 最近難解な漢字を使用する作家が多いようですが、あなたはどうですか?
あまりつかわない。漢字苦手だから。
90 こういう小説は許せない!
日本語おかしい。
91 自分の小説に満足していますか。
いや、別に。
92 他の人のオンライン小説、どれくらい読みますか?
好きな人のだけ
93 同人誌に参加したことはありますか。
ないです。
94 将来的にプロ作家になりたいですか。
いや、別に。
95 それはどうしてですか。
趣味だし、才能ないし。
96 あなたの自作小説を一つだけ薦めてください。
今読めるのが一つもないので、がんばります。しいて言うなら私がすきなのは、「コオリ」です。
97 構想中のネタをこっそり披露してください(言える範囲で)。
うーん、ナルコレプシーというか、寝すぎな人の話。あと、おとこのことおんなのこがであっておとこのこが傷ついて、それをみておんなのこもきずつく。あと悪戯電話。
98 いつまで小説を書き続けますか。
飽きるまで。
99 読者に一言。
これからもよろしく。
よんだら、感想、ほしいなー。
100 あとがき。
たのしかったです。
なお、この質問は
小説書きに百の質問 からいただきました。


2002年03月15日(金) Rへ



わたしが傷つけた人は、ずいぶんと痩せてしまった。
メガネの奥の私を見る目は、澱んだ茶色。
わたしは、自分を傷つけるなんて、絶対に嫌。
痛いのも、苦しいのも、嫌い。大きらい。
だから、まわりの人や物を傷つけてしまうのかも。
なんて、単なる言い訳。
てへてへ。

ごめんなさい。

2002年03月14日(木) 夢を見た。

現実と虚構の区別がいよいよつかなくなってまいりました(ワー!)
でもそれはそれでいいよ。むしろ喜ばしいことです。
そのうちわたしのなかが(こころ、とも言うのかな)、うそっこの、お話の、現実にはありえない物事で満たされていき、わたしも現実から逃げつづけることのらくちんさを知ってしまい、もう元に戻れなくなってしまうに違いない。
そしてわたし自身がお話の世界の人物になるんだ。

そしたらわたし、王子様に会いにいこう。
夢の王子様。
でも、王子様に会ってもわたしはわたし。
ぜんぜんかわいくなければ、賢くもない。スタイルも良くないし、みんなを喜ばせられないし、人を傷つけるし、平気でうそをつくし、そのくせあとからものすごく後悔するし、「それに、それに」って言葉をいくつつなげても、言い切れないぐらいのダメなやつだ。
でも、そこはうそっこの世界だから、わたしはわたしを完璧な人間に変えられる。
かわいくって、いつも美しい微笑をその完璧な顔に浮かべる、いい匂いの、女の人になれる。

あぁ、はやくお迎えがくるといい。
そしたらわたし、かぐや姫みたいに、現実の世界にいたい、なんて絶対に言わない。
「わかったわ」なんて、いつも使わない言葉遣いでまわりの人を驚かせて、お迎えの人たちに付いていく。


2002年03月13日(水) ミツコのこと/日常


秘密だよ。秘密だよ。
そう何度もミツコは繰り返した。(そのときまだわたしは、みぃこ、と彼女を呼んでいた)
わたしは知っていた。秘密になんて、できないって。
わたしは約束を破った。
ミツコは泣いた。
「なんでヨウコは平気で約束を破るの?」
わたしは平気なんかじゃなかった。
でも、そのとき、平気になった。
約束を破ること。人を裏切ること。大好きな人を悲しませること。

今日も人を泣かせてしまった。
わたしはできることなら、その涙をバッグのなかのハンカチでぬぐってあげたいと思った。
でも、できなかった。
ミツコのことが頭のなかにぼんやりと浮かんでいた。
ミツコと、涙は関係ない。
でも、わたしはミツコを恨んでいる。

私の前で、死にたい、といった人がいる。
たくさんいる。
ミツコもその一人。

死にたいって言うな。
殺したくなるから。


なんてことを考えつつも日常は日常。
洋服買ってCD買って。
ヘドウィグアンドアングリーインチのサントラ買っちゃいました。
いやー、かっこいいなー。っていうのが現在の頭のなかを渦巻く感情です。
いや、ほんとかっこいい。なんか映画を思い出してまた感動しちゃう。
ジョンキャメロンミッチェルかっこよすぎ。

2002年03月12日(火) どうして
どうして無理だとわかっているのに、やりたくなってしまうんでしょうね。

こころのなかから溢れだすさまざまなおもいとか、くだらない考え事なんかを、人にさらけ出したくてたまらない。
それは私が、一人で生きていくこともできないくせに、自己顕示欲だけはぶくぶくと膨れ上がったいかにも中学生な女の子だからなのでしょう。

と、いうわけで日記です。

感想とか、よんだよ、とかメールをくれるとわたしはとてもうれしい。


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