初日 最新 目次 MAIL HOME



半分はネタバレでできています。




 イラスト&二次小説置き場
 小説置場(オリジナル)
  twitter






徒然
壱岐津 礼
HOME
twitter

2015年03月06日(金)
絵描きを巡る憂鬱な事象の一つ

 ご無沙汰です。Twitterに入り浸ってて、こっちの方はすっかり放置になってました。人間、一日、いや、一生に打てるテキスト量って上限があるものなんですね。
 それはさておき、Twitterに入り浸っていると絵描きさんたちの悲喜こもごもなつぶやきが流れてくるわけですが、その中で気にかかるものもあったり、あったり、で、今回言及するのは、ずっと以前に遭遇して自分個人の胸にしまっておこうかと思ってたトラブルなんですが、「プロになりたいアマチュア」の人に「こういう事例には気をつけてくださいよ」と警戒を促した方がいいかな、と思い直しまして、どうあがいても長文になるので、久々こっちのエントリーを更新することにしました。

 まず、自分の経歴について記載しておきます。
・過去にギャラの発生する絵仕事を請負っていた経験があります。
・現在は仕事では描いておらず、趣味で気が向いた時に気が向いた絵を描いています。
・以前は個人サイトを持っていましたが、現在は時流もありまして、イラスト投稿SNSに絵を掲載しています。

 そんなこんなで―――

 数年前、伏せるのもあまり意味の無い某大手イラスト投稿SNSが某企画で企画応募者の絵の無断流用があったとかなんとかで炎上した際に、あまりにキナくさいのに嫌気がさして新天地を求めて何箇所かSNSを放浪ししました。その放浪中に一時、身を寄せていたSNSでのことです。結論から言えば、そこは安住の地にはならなかったわけですが、その理由が以下となります。

 そこは当初は普通のイラスト投稿SNSに見えました。時々お知らせで掲載されているコンペとかは、よくある「著作者人格権不行使契約」に許諾して応募してくださいね、というのが概ねで、その辺はイヤだったんですが「無料でスペース使わせてもらってるし」「SNSも広告料とか入らないと困るんだろう」ということでスルーしていました。
 そんなある日、そのSNSで新企画が立ち上げられました。
 要約すると、イラストを投稿している利用者に対して「SNSが絵仕事紹介してあげるよ」企画です。
 もちろん、仕事を紹介してもらうには一定の条件がありまして、SNS運営が、投稿されてる絵を審査して「この投稿者の能力なら仕事を紹介しても大丈夫」と認定された人のみが絵仕事を斡旋してもらえる、ということでした。まあ、斡旋される仕事に見合った能力の無い人に仕事が来ないのは普通だよね、と、この時点では思いました。
 過去に「普通の仕事」の求人サイトや派遣会社に出入りしてたこともありましたので、「絵描きに特化した求人サイトを構築したいのかな?」というのが第一印象でした。で、そういう解釈で「ニーズが(無いと思うけど)あったら声かけてね」と、わりと気軽に登録してしまいました。これが間違いでした。
 普通は、「普通の仕事」の求人サイトや派遣会社では、クライアントの要求にマッチしない人材にはそもそもお声はかからないのです。この件も当然、そういうスタンスだろうと思っていたら、しばらくして、私の「担当編集」を名乗る人物からメッセージが届きました。

 初っ端が
 「そこそこ描ける方のようですが、ラフばかり投稿されていますね。きちんとした絵は投稿されないのですか?」

 私
 「全部クリンナップして彩色してますけど?」

 (自称)編集氏
 「絵板で描かれた絵ばかりでしたので」

 私(絵板絵と「ラフ」は意味が違うわクソッタレ、と思いながら)
 「これは絵板絵ではありませんよ」

 (自称)編集氏
 「綺麗な絵ですが、解像度が低いので、もっと解像度の高い絵をお願いします」

 私(???)
 「こっちはどうですか?」

 (自称)編集氏
 「塗りムラがあります」

 気が短いなと思われるかもしれませんが、実際気が短いもので、私、ここでキレまして、当該SNS運営に(自称)編集氏が失礼である旨のクレームと「この企画からは抜けさせてもらいます」というメッセージを送りつけて、そのSNSそのものから脱退しました。

 「絵描き特有の気難しさ」というのも否定はしませんが、それを差し引いても、このやり取りには(自称)編集氏側に問題点がいくつかあります。

・暗に「完全新作を描き上げて投稿する」ことを要求している。

・(自称)編集氏の望む方向性の絵を描くように要求している。

・にもかかわらず(自称)編集氏の望む方向性を明示していない。

・上記の要求が、正式な契約の締結されていない状況下で行われていた。


 私も、「オーダー通りの絵」を描く仕事を請負ったことがありますから、契約下でならば、クライアントの要望を汲み取る努力を払います。
 また、絵仕事を受注するために、発注者の求めるサンプルを提出したこともあります。
 普通は、サンプル段階で気に入らなければ、ご縁はそこまでで、発注受注関係にはならないんです。また、「まともな発注者」ならば、サンプルの形式を指定してきます。少なくとも、私が過去に受注したケースではそうでした。

 この件において、(自称)編集氏と私の間には発注受注の契約は存在していません。絵描きに「自分の望む通りの絵を描かせたい」ならば、きちんと契約を締結して発注者になっていただく必要があります。逆に言えば、契約関係に無い人には、絵描きに「自分の望む通りの絵を新たに描き起こしてもらいたい」と要求する権利はありません。
 「高解像度」の絵を要求してくるというのも解せない話で、単に巧拙を判断するためだけならば、高解像度である必要は無いはずです。問い詰めてもいないものは断言できませんけれども、解像度が高いものは色々使い回しがききますから、「何かに流用する意図があったのではないか」と、要求される側としては疑念を抱きます。それもどうも欲しい絵の方向性が要求する側の頭の中である程度定まっていた気配がある、となれば、一層、疑心暗鬼に陥るというものです。
 この疑念が「誤解ですよ」ということならば、この(自称)編集氏は、誤解を招く態度を反省し、改めるべきです。金銭・契約の絡む企画であるだけに、「曖昧」に「暗」に「要求を通そう」とするのはやめていただきたい。絵描きを不機嫌にさせてモチベーションを下げるだけです。モチベーションが下がって上がるクオリティなど存在しません。「クオリティまたは絵の方向性が条件に合わない」ということならば、そもそも声をかけてこないでください。「普通の求人サイト」では、クライアントの出す条件にマッチしない人材にわざわざ声をかけて「この条件に合う人材になれ」などとは要求しません。
 絵描き側も、こうした場面に遭遇した際には、相手の要求に応じないか、或いは「契約等の関係を明確にすること」を逆に要求した方が良いかと思います。少なくとも、契約を結んでいない相手の要求に従う義理は一切無いことは念頭に置いておく必要があるでしょう。
 さらに追記しますと、発注受注の関係は、間に仲介者をはさまずに直に結んだ方が対応すべきトラブルが少なく済むのではないかと思います。営業は面倒くさいですけれどね。結局、面倒くさいと思う方向に動いた方が結果として面倒が少ないんですよ。

 最後に、言うまでもないことではありますが、受注の際には契約内容をきっちり確認された上で引き受けてください。