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徒然
壱岐津 礼
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2014年04月04日(金)

 ちょっと前ですが、『アナと雪の女王』観てきました。
 そんで、pixivの方に二次小説うpしました。よければ読んでね!『十三番目の真実』

 こっから先はネタバレ(リンク先もネタバレ)
 実は私、『アナと雪の女王』観て、「真実の愛すばらすぃぃぃ」とか感動できなかったんですよ。映像と音楽は素晴らしかったですけれども、あと、動いてるアナは予想外にキュートだったけれども、こう、ちょっと時間を置いて反芻すると、やっぱり彼女たちには思い入れられない。エルサがもっと雪の女王然として大暴走してくれたら印象変わったかもしれないけれども、「これからはありのままの私になるわ☆」なんてちょっとワル顔してみせても、結局、本質全然変わってないわけですよ。ただのヒッキーで、引きこもり先をお引っ越ししただけだったんですよ。「化け物だ」「殺せ」と押し寄せて来た相手に対しても「ふっふっふ、きさまら全員氷人形にしてやる!」とはならないわけですよ。キャーキャーパニクってるだけでね。挙句の果てには、自分で築いた自分の城も守れず自分で作った氷のシャンデリアに潰されかけて囚われて悲運を嘆くだけ!うわっ!カタルシスねぇぇええええええええ!!!!!そして、アナは、徹頭徹尾無自覚エゴイストだと思うんだけど、彼女のエゴイズムは許されちゃうのね。つまり「天然ちゃんだからしょうがないね」「純粋なんだから許しちゃおうよ」な感じ。彼女、やってることったらビッチすれすれ、尻軽っつーか、おつむも軽いっつーか、褒められたもんじゃないっていうか、ハンスとのことにしても、アナ、君だって、ハンスを真実愛してたわけじゃないじゃないか。「キスしてちょうだい」って前に、もう、吊り橋効果全開でクリストフに心移りしてるし(この尻軽めっ!)なのに「もらえるものはもらっとこう、死にたくないし」で一方的に「ハンス、私の婚約者よね、『真実の愛』ちょうだい」は虫がよすぎると思うんですよ。あの時点でアナの中に「真実の愛」が無い時点で、仮にハンスが真面目にキスしたところで効かなくて「どぉしてぇぇぇ!?」って大ショック展開になったにきまってるんですよ。ハンスにしたら、どっちに転んでも罰ゲーム。大体、最初にねーちゃん追いつめたのアナだし!ねーちゃんがあんな自虐的卑屈っ子に育っちゃったのアナのせいだし!アナの頭が空っぽだったせいだし!子供の時はしょうがないにしても、からだ成長してもおつむ子供のまんまだし!実のところ、姉妹が軽率でもなく自棄っぱち暴走もしなければ、劇中、「悪役」を演じさせられたキャラも、普通レベルの「俗物」でいられたんじゃないか。無事に祖国に帰れたんじゃないか。ハンスに至っては、理想の王子様でいつづけることだって可能だったんじゃないか、そんな気がしたりも。けれども、ディズニー的にはヒロインの立場は絶対死守するわけですよ、神聖不可侵なんですよ、少なくとも劇中でヒロインdisったら「悪」の烙印を押されちゃうわけですよ。すばらしいディズニークオリティだなぁ、と思いました。
 で、pixivに上げたのはハンスの話なわけですが、ハンスが特に好きだったわけでもなかったんですが、ちょっと引っかかってたことがあったので書いてみたところ、色々、自分の釈然としなかった気分に腑に落ちたものがあって。要は、一見非常にシリアスでセンシティブな話のようであって、結局は「影が無い」話だったんだなぁ、と。書いてるうちに「あ、そうか」と思ったのだけど、アナは全く怖いもの知らずだし、本当の意味では孤独ではなかったんですよね。アナの味わった寂しさってのは、「友だち遠くに引っ越しちゃったさびしー」とか「友だちからメルがなかなかこないさびしー」とかいうレベルの幼いものであって、「孤独」ていうほど深刻ではなかった。
 エルサにしても、これが、「自分はこんなに苦しんでいるのに……無邪気なアナが憎い」とか嫉妬してたら話の毛色も展開もまるで違ったわけだけど、そういう「影」は、まるで持ってなかった。
 姉妹とも、キレイキレイなんですよ。実に陰影に欠く造形なんですよ。
 すっごく非人間的ですよね!
 ……乗り越えるべき影も闇も無く「真実の愛」って言われてもさぁ……。
 比べたら、エルサを怖がって騒いだおじさんや、結局南極当て馬扱いで放り出されたハンスの方が、「影」を持つ分、よほどに「人間」してるんですよ。彼らが「真実の愛」に目覚めた方が感動的だったんではないか、と、私なんかは思っちゃいますね(絵面として華が無いことはななだしいけど)
 いや、ハンスの人間性は……書いてるうちに私が自分の中で付与しちゃったのかもしれないけれども。
 えっとですね、今回これ書く前に、「ハンスの本質は鏡である」解釈など読んだり、自分では「第十三王子」て設定に引っかかりを感じたりで。「十三」てのは知ってる人は知っている、欧米じゃ不吉な数字ですよ。裏切り者を示唆する数字ですよ。敢えて、そんな設定を付けるって何か意図があったのかな、とか勘ぐっちゃうじゃないですか。でもまあ、名前は「ユダ」ではないわけで、じゃあ「ハンス」って名前にはどんな意味があるんだ?と由来を調べたら、「主に最も愛された使徒」とか出てきちゃったりしたわけです。こいつぁ、見た目以上に複雑なやつだな、という気分になっちゃうでしょ!?
 そういうのをぶちこんで仕上げたところ、ハンスのがれりごー歌いそうな感じになっちゃいましたよ!
 それと、アンデルセンの原作では、雪の女王に魅入られるのは少年だったわけで、『アナと雪の女王』では、少年はいないし、エルサははた迷惑な能力はともかく、邪悪な雪の女王ではないし、もう、見た感じ全然違う話になってるんですけど、もしかしたら、雪の女王の魔力に囚われた少年はハンスだったのかもしれない、そして、彼を救う少女は現れなかった、ということなのかな?ということは、一見ハッピーエンドのようで、とってもバッドエンド!どころか、被害者を救おうという物語が始まってもいなかったんですね。被害者を生み出したところでエンド!陽気にスケートしてる場合じゃないよっ!!
 ……まあ、ヒロインもので百合ものなんで、男は立つ瀬無いって話なんですね、これは。

 クリストフにしたって、あれだ。いいところまで行ってたけれども、アナは百合を選んじゃったわけだし!!橇と名誉と感謝をもらえたんだから喜べって、ちょっとナメてるよね。
 ダブル「恋人候補」として見たハンスとクリストフの対比は、あれです。
 映画観てた間はクリストフの方が男前に見えたもんです。
 でも、クリストフは、これまた全く影を持たないキャラなんで、見た目も中身もいいやつだけど奥行きは感じないかな、と。ハンスと直接対決あったら話の流れは変わったかもしれないけれど、ハンスはアナが自力でぶっとばしちゃったし。
 あ、クリストフの名前の由来もキリスト教の聖者ですね。響きからしてそれっぽいけど。wikiを信じるならば「キリストを背負う者」だそうで。じゃあ、アナを助ける配役を意図してのネーミングなのかな?でも、アナは絶対、キリストではないよね。だって、ミニマムな家族愛って全然キリスト的じゃないもの。

 なんしか観てる間と直後と、観終わってしばらくした後で、ずいぶん印象変わっちゃう映画だなと思いました。

 ともあれ、あんまりハンスの見捨てられっぷりがひどかったので救済してみました。読んでいただけると嬉しい。