.intermission  

とうとう4話まで終了。折り返し地点ですな。
4話まで発表したところで当時の所属サークルが活動縮小となったので、完全な形での公開は4話まで、5話から未発表作品となります。
美和子に関しては「普通の女の子」が書きたかった。
いや、もちろんみんな普通の女の子なんですが、なんと言うか・・・グループの中に
必ずは一人はいるであろう、決してリーダーの器ではないけれど、いるだけでみんなに安らぎを与えてくれるような・・・ビジュアルイメージとしては小柄で、かわいらしくてボブカットで・・・いつでもにこにこしてて、決して目立たないけどいないとみんなが寂しがる・・・というようなそういう女の子を書きたかった。
あの瞳子も普段は妹扱いしつつもその存在の重要さには一目置くような、そんなキャラクターで美和子を書きたかったんです。
でもおそらくあのグループ内における精神的支柱は美和子なんだろうな、そう思いながら。

さて、あまりにもどうでもいいこととは思いますが、6人が互いを呼ぶときの呼び方が微妙に違うのにお気づきでしょうか?
梢、絵里、麻衣→瞳子をさん付けで呼ぶ以外は全員呼び捨て
楓→「梢ちゃん、瞳子さん、美和ちゃん、絵里、麻衣」
瞳子→全員呼び捨て
美和子→「梢ちゃん、楓ちゃん、瞳子ちゃん、絵里ちゃん、麻衣ちゃん」
名前の呼び方でグループ内のポジションが見えるようでおもしろくないですか?(わたしだけですかね・・・)

それでは、次は絵里が主人公の5話です。どちらかというと重い話が続いたので、書いた当時の作者も嫌気がさしたのか?わりと明るい作風になってます。
もちろん、梢と夏樹のエピソードもでてきますが、絵里がどんなとらえ方をするか、その違いをお楽しみください。

2002年05月19日(日)


.第4話:『愛しのハピィデイズ』 (最終回)

「卒業生代表答辞・総代・3年B組牧島瞳子」
 入学式の時に瞳子ちゃんと友達であることを誇りに思ったあたしは、ついに卒業を迎えた今日、同じ思いで瞳子ちゃんを見ている。
 だけどあの時と違うのは、もうこれが最後だと言うこと。毎日のように顔を合わせていたみんなともう会えなくなると言うこと。泣くつもりなんかないのに涙が出そうになる。
 
 「・・・この3年間、楽しく、そして有意義な日々を、時間をともに過ごした仲間達、私たちを導いてくださった先生方、今日のこの日を迎えるにあたり、18年間育ててくださった両親そして家族・・・私たちを見守ってくれた全ての方々に感謝します。
ここで学んだ、この伝統ある学び舎で培った『城山魂』を胸に私たちは新しい世界へ歩いてゆきます。
平成七年三月一日・第三十三期卒業生代表・三年B組牧島瞳子」

 それから2週間後。
 亨と瞳子ちゃんが旅立つ日がやってきた。
 あたしは空港に見送りに行った。免許を取ったばかりの尚登くんが空港まで送ってくれる。
 瞳子ちゃんは手続きの都合上しばらくは大学のある東京に滞在する為に、同じく東京の大学に進学する亨と一緒に行く。・・・というよりも出発日をわざわざ同じ日にしたのは、ちゃんと3人で『お別れ』がしたかったのだということを、お互いに言いはしなかったがなんとなく分かっていた。

 「亨、東京まで瞳子ちゃんと二人きりだからって変なことするんじゃないわよ」こんなに楽な気持ちで言えるのはまだ亨に恋してなかった十二・三歳の頃以来じゃないだろうか。
「冗談じゃないわよ。そんなことしたらあたしたちの仲もこれまでだからね。
わかってるんでしょうね、亨?」きついけど笑いながらの言葉が瞳子ちゃんらしい。その言葉を受けて、亨がにやにやと笑いながら尚登くんに言う。
「それよりも、俺たちがいなくなったのをいいことにおまえらのほうこそ変なことすんなよ。空港(ここら)あたりってそういう建物多いし」  
「ばかやろー、俺がんな事するかよ」反論する尚登くんの顔は真っ赤だ。ほどなく、アナウンスが搭乗手続きの最終案内を告げた。
「じゃあ、いくわねあたしたち。見送りはここまででいいよ」
「え、最後まで見送るよ」あたしが言いかけたのを尚登くんが止める。瞳子ちゃんの目がうるんでいて、かなり強がってるのがわかったから。

 「じゃあね、美和子。それから桑原、美和子のこと頼んだわよ。あたしたちの大事な美和子のこと、あたしたちの代わりに見守っていて。泣かせたりしたら承知しないから。この子、こう見えても泣き虫で寂しがり屋なんだから」
「おまえのほうが泣きそうだよ、牧島。まかせろ、美和子のこと。絶対に泣かせない」
「絶対だからね!もしなんかあったらロンドンから駆けつけてやる」
 その瞬間、無情にも響き渡る呼び出しアナウンス。
『ただ今より十時発・東京行きの搭乗の最終案内を行ないます・・・・・・』
 
 「じゃあね!」
 二人がゲートの向こうに消えていく。二人が見えなくなった瞬間、あたしは目の前がかすんで思わず尚登くんの腕にしがみつく。
「あたし、笑えてた?二人のこと・ちゃんと見送れた?」
「大丈夫。俺が見る限り、いつも通りの美和子だった」
「はじめてなの、三人が離れ離れになるのって。いつも三人で歩いてきたの・・・あたしこれから大丈夫なのかなあ。一人でやっていけるのかなあ」
「大丈夫。俺が二人分がんばるから。・・・それにしても、俺は美和子達がすごくうらやましいよ。親戚でもなんでもないのに、実の兄弟みたいにつながりの強い3人
だったもんな・・・。あ、あれじゃないのか?二人が乗ってる飛行機」
 尚登くんが空を指さす。あたしたちは大きな鳥のような飛行機が空を切り裂いて彼方に消えて行くまで見送った。

 永井亨・牧島瞳子・笹原美和子・・・そう、あたしたちは最強の3人だった。
 あたしにとって、親よりも兄弟よりも他の友達よりもこの二人が大切で、必要だった。
 こうして道は別れてしまうけど、いつだったか瞳子ちゃんが言った
 「白髪頭のじじい・ばばあになっても縁側で茶すする3人でいたいわよね」


 いつか、あたしたちはそんな3人を目指すのだ。
                     [THE END]

2002年05月18日(土)


.第4話:『愛しのハピィデイズ』 

一年後。
 あたし達も高校3年生になり、いよいよ本格的に進路のことを考えないといけない時期がやってきた。 
「笹原、おまえの希望は短大の食物栄養学科だったな。今のままでも十分大丈夫だけど、おまえの場合理系がちょっと弱いからこれからはそっちに重点をおいて勉強しろ」
 あたしの小さい頃の夢は『料理を作る人になる』ことだった。ちょっとめざす道は違うけど、短大の食物栄養のほうに進んで調理師と栄養士の資格を取りたいと思ってる。
「・・・ありがとうございました」ママと二人、おじぎをして教室を出る。
「あー三者面談も無事終わって良かった。ママね、美和子の進路に文句つける気はないから、自分のやりたいようにやるんだよ」
「うん、わかってる。ありがとママ。・・・じゃあたし寄るとこあるから。先に帰ってて」
「はいはい。あまり遅くならないうちに帰ってくるのよ。尚登くんによろしくねー♪」すっかりばれてーら・・・・。帰って行くママの後ろ姿を見えなくなるまであたしは一人で真っ赤になりつつ見送った。

 「ごめんねー、待った?」
「いや、俺も今終わったとこ」待ち合わせ場所の図書館につくと、尚登くんが読みかけの本をおいてにっこり笑う。 
「先生なんだって?」
「あのねぇ、やっぱり理数系をまじめにやれってさ。そーいう君はどーなの?」
「俺が実力的に無理な大学選ぶと思うか?バッチリ合格圏内だって」
 今日は二人とも三者面談だったので、終わったら待ち合わせしようというわけで、久しぶりに彼に会えるのでわくわくしていた。
「ところで、昼どうする?」
「そういうと思って・・・じゃじゃーん!」
「おおー!手作り弁当!いいの?」
「どーぞー。はい・これお茶ね」
 今でこそこんなあたしたちだけど、少なくとも半年前まではこんなんじゃなかった。
 亨は、あの一件の後瞳子ちゃんに告白した。瞳子ちゃんの返事は当然「NO」。3人のあいだが少しずつ気まずくなり始めたのもその頃から。
 あたしはあたしで亨のことを思い切れなくて苦しくて、ついに尚登くんにまだ亨のことをあきらめ切れないともらしてしまった。ののしられても、このままふたりの仲が消滅しても仕方のない状況だったのに、それでも彼は許してくれた。今のあたし達があるのも、彼のこころの広さがなきゃありえないことだった。

 

 「聞いた?とーこさん留学するんだって」卒業間近になった2月、あたしたちはその話題で盛り上がった。
 瞳子ちゃんは、イギリスの大学に2年間留学し、それから大学の3年に編入することのできる外語大学を選んだ。
「英語をきっちり勉強したい、ってのもあったし、それに・・・まだつらいんだよね、瑶子姉ちゃんたちを見てるのが」
 身内以外に話すのは美和子がはじめてだ、と瞳子ちゃんは苦笑いしながらつぶやいた。

 亨は東京の大学に進む。
 あたしは地元に残る。
 いつまでも3人いっしょに歩いていけるとは思っていなかったけど、一方では3人ずっとこのままでいたいという気持ちを抱いていた。
  
 みんなそれぞれ自分の道を歩いていく。
 あたしたち3人だけじゃない、梢ちゃんも、楓ちゃんも、絵里ちゃんも、麻衣も、それぞれ自分のやりたい道を見つけてる。
 誰もが一度は通らなきゃいけない道。だけどこのままでいたい、学校という楽園の中でいつまでもみんなと笑っていたいと願うのはあたしが子供だからなのだろうか。こんなことを考えるのはあたしだけなんだろうか・・・
 卒業が近づけば近づくほどこんな思いが強くなった。
 
                    (『愛しのハピィデイズ』Δ紡海)

2002年05月15日(水)


.第4話:『愛しのハピィデイズ』 

 「美和子!」あたしが公園に駆けつけると、亨が青ざめた顔で手をふった。
「一歩遅かった!あいつ、どこかへいっちまったよ。あんな状態で・・・どうなるか不安だよ・・・」
今まで見た事のない亨の顔。瞳子ちゃんに一対何があったの・・・?胸の中にじわじわと沸いてくる不安を感じながら、うろたえる亨を叱りとばすようにしゃべる。
「そんなこと言ってる場合じゃない!早く追いかけるわよ!!・・・それから、話してもらうからね、瞳子ちゃんに何があったのか」
 とにかく今は瞳子ちゃんを探すほうが先だ。あたしたちは街のほうに向かって歩き出した。

 「おまえ知ってるか?瞳子の好きな奴」瞳子ちゃんを捜し歩きながら、亨が不意につぶやく。
「実際はどうかわかんないけど・・・ひょっとしたら、本並先生じゃない?」
「お前もそう思うか・・・。俺、今日の今日まで気づかなかったよ。」
「それがどう関係あるのよ、瞳子ちゃんに」
「本並の本命は誰だよ?瞳子じゃないだろ?」
「そりゃ、瑶子さんに決まってる・・・・あ!」
「わかったか?本並が瞳子ん家に来て言ったらしいぜ、瑶子さんをくださいって」
瞳子がおかしくなったのは、そのせいだと思う。亨はつぶやいてため息をひとつ吐いた。
「まいったなぁ・・・本並じゃかなうはずねぇよな、俺は」亨にしては珍しい、弱気な発言。

 「何いってんのあんたらしくもない。どうせふられるんなら当たって砕けてみなさいよ、堂々と気持ち伝えてさ。・・・だけど今はだめ、瞳子ちゃんがあんな状態なら、聞き入れる余裕は絶対にないはずだから」・・・あたしは何を言ってるのだろう。好きなひとに、自分以外の女の子への告白の後押しなんて・・・。  
 尚登くんとつきあうようになったものの、まだあたしの心のなかには亨がいる。一生懸命あたしのことを思ってくれる尚登くんには悪いけど、正直言ってまだ亨のことをあきらめ切れてない。
「あたしのほうこそ、『どうせふられるならあたって砕けろ』よねぇ・・・」あたしのつぶやきはむなしく夜空へと消えて行く。
 そんなあたしの想いを知ってか知らずか、亨はあたしの言葉を聞くなり目を輝かせて、 
「そうだよなぁ、やっぱり。どーせふられるのを覚悟してるなら恐いもんなしだよな!ありがとう、美和子!!おまえに相談して良かったよ。やっぱ持つべきものは良き女ともだちだよなぁ」
 その一言が、あたしの心を突き刺した。
 こころが、いたいよ・・・・・。

 「瞳子!」
「瞳子ちゃん!」かけよるあたしたちを見ても瞳子ちゃんは何の反応も示さない。
 うつろな瞳、おぼつかない足もと。瞳子ちゃんの、いつもの凛とした雰囲気は消え去っている。
「瞳子ちゃん、家に帰るのが嫌なら、今日は家に泊まんない?ちっちゃい頃みたいにさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」瞳子ちゃんがうなずく。
不安げに見つめている亨に「心配するな」と声を出さずに唇と目で合図する。
「まかせたぞ」亨がうなずいた。

 あたしの部屋に帰りついても、まだ瞳子ちゃんは感情のない人形のような状態
だった。そんな瞳子ちゃんに、あたしは必死に語りかける。
「あのね、瞳子ちゃん。泣きたいときは泣いていいんだよ。疲れたときは休んでいいんだよ。あたしたちじゃ瞳子ちゃんほど頼りにならないと思うけど、何でも聞くから。何でも話してよ。」 
 その瞬間、今までなんの反応も示さなかった瞳子ちゃんが、声をあげて泣き出した。今まで押さえつけていた心をすべて吐き出すかのように。
 こんなに取り乱して泣き崩れる瞳子ちゃんを見たのは、十二年間一緒にいて初めてのことだった・・・   

                  (『愛しのハピィデイズ』 イ紡海)

2002年05月12日(日)


.第4話:『愛しのハピィデイズ』 

 放課後。
 約束の場所に着くと、相手の人と絵里ちゃんのバンドのメンバー・浩司先輩がもうすでに来ていて、窓ぎわの席から手をふっている。
 遊び人風の(見た目、ってことよ、あくまでも)浩司先輩に対して、彼は、絵里ちゃんの言った「優しくていいひと」をそのままかたちにしたようなひとで、兄弟なのにこんなに雰囲気が違うんだなあと思ったのが第一印象だった。 
「ごめんねぇ、遅くなって」絵里ちゃんが言う。
「・・・いいよ。それじゃ行こうか、絵里。」そういって立ち上がりかけた浩司先輩を思わずあたしは引き留める。
「いきなり二人きり、ですかぁ!?」
「そうだよ。俺らだって練習あるしさ。大丈夫、取って食いはしないから。じゃ後頼んだぞ、尚登(なおと)」
 そんなぁ・・・。考えてみればあたし、こんな形で男の人とお茶するって初めてなんだよね。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ふたりの間に流れる沈黙。やがて耐えられなくなったのか、
「あのさ、笹原さん」彼がやっと口を開いた。
「はい?」
「ごめんな、急に呼び出して。兄貴が笹原さんのこと知ってるから協力してもらったんだ。」
「あのぉ・・・ほんとにあたし、なんですか?あたしでいいんですか?」あたしが聞くと彼はかすかに苦笑いして、もう覚えてないだろうけど・・・と前置きして話し始めた。 
 
 「前にさ、永井の所に差し入れしたことがあっただろ?部活の大会か何かのときに。あの時、バレー部はどこで試合してるか聞いただろ?通りすがりの奴に。あれ、俺だったんだ。それで笹原さんはお礼にクッキーをくれて。・・・変な話だけど、俺はその時から笹原さんのこと気になってて。
で、俺は笹原さんを永井の彼女だって思ってたから今まで言えなかったんだ。
・・・いきなりこんなこと言ったら失礼かもしれないけど、俺とつきあってくれないかな?友達からでいいから」  
 そう言った彼の顔は真っ赤で、何だか一生懸命って感じで。そんな彼がかわいく思えて。ぶっきらぼうだけど優しそうなひとだなって感じて。
「あたしでよければ・・・」そうつぶやいていた。
 現金な話だけど、彼といたこの時、今まであたしの心を占領し続けていた亨の姿が消えていた。

  
 「そうかー、美和子にもついに男ができたかぁ。」
 数日後、一学期の終業式の日。大掃除をしながら絵里ちゃんと麻衣がしみじみとつぶやいた。
「別に彼氏って訳じゃないもん、尚登くんは」
「尚登くん、だってぇー。もうすでに名前で呼んじゃってるわけね、桑原氏。」
「いーねぇ。何かうらやましいわぁー。ねぇ、麻衣?」
 二人に突っ込まれ、からかわれ・・・でもそれがなぜか嫌じゃなかった。

 「ところでさぁー、用意した?例のあれ。」あたしは素早く話題を変えた。
「ああ、あれね。バッチリ用意したわよー。」
「楽しみよねー、とーこさんがどんな顔するか」二人が顔を見合わせ、意味ありげに笑う。
 今日は瞳子ちゃんの誕生日。7月20日という、普通なら一学期の終業式とバッティングする日付のせいか、どうも自分の誕生日を忘れられやすいと瞳子ちゃんがぼやいていたのを聞いて、あたし達は今日、朝からわざと今日が瞳子ちゃんの誕生日だと誰も口に出さないようにしておいて、後でプレゼントを渡して驚かそうと言う計画を立てたのだった。
 いくらクールな瞳子ちゃんでも誕生日を忘れられてたらがっくりするだろうし、去年の誕生日にプレゼントを渡したらすごく喜んでくれたから。

 「きた?」
「くるくる、今帰ってくるよ」廊下で見張りをしてた絵里ちゃんがあわてて教室の中に入ってきた。瞳子ちゃんの机を囲むようにして、瞳子ちゃんの帰りを待つ。
「・・・何やってんの、あんたたち」あきれたような顔をして自分の席に瞳子ちゃんが戻ってくる。
「(せえのっ)瞳子ちゃん、お誕生日おめでとう!」あたしの合図で瞳子ちゃんを囲んだ5人がいっせいにプレゼントを差し出す。さすがの瞳子ちゃんも驚いて、目がまん丸・ぼーぜん状態。
「ありがとー。・・・それにしてもあんた達もひとが悪いわよねぇ」
瞳子ちゃんを驚かす作戦、見事成功!とその時、後ろから本並先生が・・・。
「お嬢さん方、ホームルームを始めたいんだがな・・・。さっさと席につけ」
 瞬間、あたし達6人はA組のみんなに大爆笑されたのだった・・・
 
 その日の夜。 
 おふろあがりのあたしに、珍しく早帰りのママが声をかける。
「美和子、亨くんから電話よ」亨から?あたしは不思議に思いつつ受話器を取る。
「美和子?頼む、すぐ出てきてくれ!瞳子の様子がおかしいんだ」受話器の向こうから飛び込んでくる、せっぱつまった亨の声。
「どーゆーことよ?亨、あんた瞳子ちゃんに変な事したんじゃないでしょーね!?」
「そんなんじゃねぇーよ!あんな瞳子もう見てらんねーよ。とにかく頼む、公園にいるから」
 昼間の瞳子ちゃんは別にこれと言って変な様子はなかった。じゃあ、何が起きたというのだろう・・・あたしはあわてて家を飛び出した。不安を胸に抱えながら。

                (『愛しのハピィデイズ』 い紡海。)

2002年05月10日(金)


.第4話:『愛しのハピィデイズ』 

「・・・今、なんて言った?」亨がつぶやく。その目は恐いくらい真剣だった。
 いわなきゃよかった・・・あたしはそう思った。
 事の起こりはこうだった。
 試験前、亨があたしの授業のノートを借りに来て、コピーを取るために近所のコンビニへ二人で向かう途中、渡したノートをパラパラとめくりながら亨がつぶやいた。
「みわこー、おまえのノートって見づらいなぁ。瞳子のはもっとわかりやすい
ぞー。」またか。あたしはむっとしながらそれでも何も言わずに歩いていた。
 何かというと亨という奴はあたしと瞳子ちゃんを比較するのだ。そして、たいがいけなされるのはあたしの方。 
 悔しいけど何も言い返せない。言われていることは事実だし、もっと悔しいことにあたしはそれでもこいつのことを好きなのだから。だけど、亨の心の中には瞳子ちゃんがいて、そこから瞳子ちゃんを追い出してあたしが入り込む余地も自信もあたしにはなかった。頭が良くて美人で、しかもすごく性格の良い人だ、瞳子ちゃんという人は。そんな瞳子ちゃんに勝てるものなんてあたしにはない。
 情けないけれど、あたしは瞳子ちゃんに相当コンプレックスを感じているのだ。

 「瞳子ってすげえよなー。テストも毎回毎回学年ベスト5だしさぁ」いつもならあっさりと流してしまえるのだが、今日のあたしはいつもと違っていた。
「いいかげんにしてよ!そんなに瞳子ちゃんがいいならノートだって瞳子ちゃんに借りればいいじゃないの!
そんなにほめるんなら直接瞳子ちゃんに言えばいいじゃない!
あたしの気持ちなんかお構いなしよね、あんたって。あたしが傷つかないとでも思ってるの?こんなふうに言われて。あたしには何を言っても許されるとでも思ってるわけ?
瞳子ちゃんのことが好きなら瞳子ちゃんに直接言いなさいよ!陰でこそこそしてないで。
でもどうせふられるだろうけどね。瞳子ちゃんには好きな人がいるんだから!」
 そこまで一気に言ったとき、あたしははっとした。・・・亨の顔からそれまでの笑顔が一瞬で消えたから。
「今言ったこと、本当なのか?瞳子に好きな奴がいるって」詰め寄られてあたしはうなずくしかなかった。
「誰だよ?俺の知ってるやつか!?」
「知らないわよ。瞳子ちゃんも教えてくれないし」
「何で聞かないんだよ、友達だろ」
「友達だからって何でも知ってるとは限らないし、言いたくない事だってある
でしょ?じゃあ聞くけど、あんたあたしの友達だって言うけどあたしの好きな人
知ってる?」
「そんなん、知らねーよ」・・・そりゃそうだろうな・・・期待はしてなかったけど。
「でも俺じゃないことは確かだよな?」
「----------!!!」
「とにかく俺、瞳子に聞いてみるよ」
やめなさいよ、瞳子ちゃんに嫌われたいの?そういいかけた言葉をのみこむ。
 嫌ワレテシマエバイイ。悪魔のささやきに似た声がこころの中をよぎる。
 亨の中で、あたしはただの友達・幼なじみでしかないんだ。瞳子ちゃん以上の存在にはなれないんだ。ずっと前からわかっていたことだけど、改めて思い知らされたようでなんだか悲しかった。     
 「ねぇ美和子、放課後ひま?」
 ある朝、あたしが登校してくるなり絵里ちゃんがあたしを廊下に引っ張り出してこそり、と聞いた。
「ひまだけど・・・何するの?」あたしが聞き返すと絵里ちゃんは意味ありげに笑う。
「ふふっ、お・と・こ。うちのメンバーの弟で、G組のひとなんだけどさ、この前のライブの打ち上げに美和子も来てたでしょ?あの時から気になってたんだって
美和子のこと。だから紹介してくれってうるさくてさ。」
でもあたしは・・・そういいかけたのを絵里ちゃんがさえぎる。 
「まだ永井のことが気になるんでしょ?なんだかんだ言っても」絵里ちゃんにはすべてお見通しらしい。あたしは素直にうなずいた。 
「あのね、こういっちゃなんだけど、彼は優しくていいひとだし、永井みたいに
鈍感なやつより美和子にお似合いだと思う。今の永井にはとーこさんしか見えてないみたいだし。一度会ってみてよ。それから決めても遅くないし、いきなり彼氏・彼女って訳でもないんだから」 
「ねえ、その人本当にあたしのことがいいって?一緒にいた麻衣か瞳子ちゃんの間違いじゃないの」あたしがそういうと絵里ちゃんは眉間にしわ寄せてひとこと。
「あんた本気でそれ言ってるの?そんなに自分に自信がないの?」うなずいたあたしに絵里ちゃんは頭を抱えた。
「知らないの?あんた自分がどれだけ人目引くか」あたしが首を横に振ると、
そっか、身近にとーこさんがいるからねぇ。ぽそりと絵里はつぶやいた。  
「でもね、あんた割と人気あるんだよ。ちっちゃくてかわいい、チャーミングだ、守ってあげたいって。紹介しろと言われたのも今回が初めてじゃない。
ただ、いつもあんたは永井と一緒にいたから、他の連中は笹原美和子と永井亨はつきあってる、って勘違いして誰も手を出さないだけの話。 
とーこさんみたいに完璧のひとが近くにいるからそれに気づかなかっただけよ、
美和子の場合。」
  
 あたしは一瞬考えた。
 亨のことを忘れられるかもしれない。亨以上にその人のことを好きになれるかもしれない。
 ずるい、逃げの考え方かもしれないけれど今のあたしにはそういう思いしか浮かばなかった。
「わかった。・・・会ってみる、その人に」

 「・・・・朝っぱらからおもしろい話してるわねぇ。あたしにも紹介してよ、絵里」振り向くと、梢ちゃんが立っている。
「あたしにも紹介してよ、ねえ」
「梢・・・」
  
 梢ちゃんは、最近1年つきあっていた彼、富田君と別れた。
 ただ別れただけじゃなくて、富田君と楓ちゃんがずっと両想いで二人をくっつけるために梢ちゃんが身を引いた、という結末だった。
 だけど、梢ちゃんは楓ちゃんに対して態度を変えずにあたし達が見る限りはいつもの梢ちゃんだった。
 
 本人たち以外で、ただひとり事情を知っていた瞳子ちゃんが「ばかよ、梢は・・・」と言って陰で泣いていた。
 瞳子ちゃんは梢ちゃんの一件があってからふさぎこむようになっていた。何だか元気がなく何かに悩んでいる感じなのだ。
         
                 (『愛しのハピィデイズ』に続く。)

2002年05月08日(水)


.第4話:『愛しのハピィデイズ』 

  〜♪愛しいOh!Happy Days.
    あの時間たちは両手に一杯の 宝の在りかを記した地図     
    愛しいOh!Happy Days. 
    時々広げてそっと瞼閉じる 宝物はあなたたちの笑顔♪〜  
 気がつけば、いつも「3人」だった。
 幼なじみの宿命・って言われればそれまでだけどね。
 あたし・笹原美和子と永井亨、そして牧島瞳子。 
 5歳の時に瞳子ちゃんが引っ越してきてから、幼稚園・小学校・中学校そして高校まで3人一緒でここまで来た。いつも3人でいるのが普通になっていて、これから先も続いていくと思っていた、あの日まで。
 
 『新入生代表答辞・総代・一年A組牧島瞳子』
 「とーこさんて、つくづくすごい人なのね・・・」
 高校の入学式の日、なんと一番の成績で合格して新入生代表のあいさつをする瞳子ちゃんを見て、麻衣がしみじみとつぶやいた。あたしも誇らしい気持ちでそれを見ている。
 ふと、前のほうの男子の席を見ると亨が真剣な目で壇上の瞳子ちゃんを見つめている。それまではあくび交じりで校長や来賓の話を聞いていたというのに。
 
 進学校としての評判が結構高いこの城山高校に、絶対合格できないと先生方に変な太鼓判を押されていた亨が猛勉強の末合格したのは、変なところで負けず嫌いの性格と、瞳子ちゃんのため。
 合格発表の日、あたしは聞いてしまったのだ。奇跡の合格・と騒がれる中、ぽつりとつぶやいたのを。
「瞳子と同じところにいきたかったからな。
・・・あいつと俺じゃ出来が相当ちがうけど、別々の高校に行けばそれで終わりだろ?いくら近所でもさ。少なくても後3年、高校迄でいいから一緒にいたかったんだ。
・・・このこと、瞳子には言うなよ。おまえだから言うんだからな、美和子。」
 皮肉なことに、その時気づいたんだ。・・・悔しいけど、認めたくないけど、亨を好きってことに。
 本当は、前から気になってた。亨と瞳子ちゃんが一緒にいるとき、心の中が騒ぐのを。亨の、瞳子ちゃんに向ける視線が単なる幼なじみに対するものじゃないことを。でもこの気持ちが恋だなんて認めたくなかった。よりによって、相手が亨だなんて・・・。
 マンガやドラマの中に出てくるようなロマンティックな恋に憧れていただけに、なんだかショックだった。
  
 「ねぇ、みんな好きな人っている?」
 高校生になって、最初の夏休みがもうすぐやってくるというある日、珍しくみんなで一緒に帰れることになって寄り道した喫茶店で、急に梢ちゃんがこんなことを言い出した。  
「何を言い出すかと思えば・・・いるわよ」瞳子ちゃんがあっさりと言い放つ。
「えー!?瞳子さん好きな人いるの?どんな人?教えてー!」みんなもびっくりしたのだろう、目を輝かせて身を乗り出して瞳子ちゃんに詰め寄る。 
「人のこと聞いてどーするのよ。そういう梢、言いだしっぺはあんたでしょ?あんたこそどうなのよ」瞳子ちゃんはこういうかわし方が実にうまくって、あたしはつくづく感心してしまう。
 それにしても・・・瞳子ちゃんの好きな人って一体誰だ・・・?まさか亨じゃないよね?それが気になって、大好きなチョコケーキにも、カフェオレにも手を出さずに梢ちゃんが好きな人の話をみんなに突っこまれながら話しているのも耳に入らずにずぅーっと考え込んでしまった。

 「美和子、あんた今日具合でも悪いの?あんなに好きなケーキにもあまぁーいカフェオレにも手を出さないし」みんなと別れた帰り道。瞳子ちゃんが聞く。
「・・・ちょっと考え事してたから」あいまいな笑顔を作りつつ、それでも頭の中はさっきから同じ話題がぐるぐると回ってる。 
「どーせさっきのことなんでしょ?あたしの好きな人が誰か、とか梢の相手はどんな奴だ、とか」図星を指されてあたしはうなずくしかなかった。
「安心してよ。相手の名前は今は言えないけど、亨じゃないから・・・じゃあね」
家の中に入っていく瞳子ちゃんを見送りつつ、あたしはぼーぜんとしていた。
 
 ひょっとして、瞳子ちゃんはあたしの好きな人が亨だってことをもう気づいているのだろうか・・・?      

2002年05月06日(月)


.intermission

3話が終わりました。
これも初出は所属サークルで発表したもの。
当初はクールビューティーなイメージで瞳子さんを書いていたのですが、
彼女を主人公にしてみたら、瞳子さんがコンプレックスの塊で、それを隠すためにクールさの仮面をかぶっている的な物語になりました(苦笑)

梢たち6人組の中で、自分に一番近いのは楓、一番遠くて、憧れに近いキャラが
瞳子さんなんですね。
自分がそうじゃないもんだから、クールな知的美人って憧れるんです。
(私の表現力じゃそうは見えないかもしれませんが・・・)
なんだろ、姉御的キャラというか。
自分じゃなりたくてもなれないからその分小説のキャラに託す、というかね。

さて、今の段階ではこれだけしか言えない(というかこれしか決まってないんですが)完全書下ろしとなる第7話(6人の現在の実年齢・24歳の物語)は、
もちろん6人ともでてくるんですがメインは瞳子さんになりそうな気配。
というのも以前からあった「瞳子=シングルマザーになる」と言う設定をどーにか生かしたくて。なんだかんだ言っても瞳子さんを愛しちゃってるのね、私(笑)

それでは、次は美和子が主人公の4話です。
6話共通のエピソード(梢・夏樹の破局)の他、美和子から見た瞳子の物語、
そして美和子の恋、さらに「瞳子・美和子・亨の幼なじみの絆ってええなー」的な
ストーリーとなっております。
最後までお付き合いくださいませ。

2002年05月05日(日)


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