宿題

目次(最近)目次(一覧)pastnext

2003年07月31日(木) 西瓜糖の日々/リチャード・ブローティガン
いつだったかわたしは、送水管が水のいっぱい入った楽器で、

水の水面にはいくつもの鈴が小さな西瓜鎖で下げられていて、水が鈴を鳴らす、という夢を見た。

フレッドにこの夢のことを話すと、かれは結構な夢だといった。

「それだったら、そりゃきれいな音楽が生まれるだろうなあ」

わたしは送水管沿いにしばらく行ったが、鏡の像のところで送水管が川と交差している場所にくると、

身じろぎもせず、長いこと立ちつくしていた。

川の中の墓がどれもこれも光を放っていた。

みんなが、じぶんはそこに埋葬してもらいたい、と考える場所なのだ。

わたしは柱にかけられた梯子を昇って行って、送水管の縁に腰かけた。

地上二十フィートぐらいのところで、わたしは足をぶらぶらさせていた。

もう考えることもなく、目に止めるものもなく、わたしは長いことただそうして腰かけていた。

もう何も考えたくも、見たくもなかった。送水管に腰かけたわたしを道連れに、夜が更けて行く。



わたしたちが恋人同士になってから、かの女はなんとよく眠るようになったことだろう。

不思議なことだった。

ランタンを手にして、夜の長い散歩に出かけた少女とはポーリーンだったのだ。

ポーリーンこそ、わたしがさまざまな思いをめぐらせた少女だったのだ。

かの女が、道を行ったりきたり、あそこで止まったり、この橋で、この川で立ち止まったり、

あすいは松林の木々の間に立ち止まったりした少女だった。

かの女の髪は金髪で、そして、かの女はいま眠っていた。

わたしたちが恋人同士になると、かの女は夜の長い散歩をやめた、でも、わたしはいまでも散歩する。

夜、長い散歩をすることが、わたしは好きなのだ。


★西瓜糖の日々/リチャード・ブローティガン★

2003年07月30日(水) 『西瓜糖の日々』役者あとがき/藤本和子
We lived in clover


★『西瓜糖の日々』役者あとがき/藤本和子★



■藤本さんの言葉、というわけじゃないけれど、
このあとがきで知ったので。

「牛がじゅうぶんにクローバーの葉を食べて暮らすように、
『われわれはなに不足なく暮らした』という意味」

2003年07月29日(火) パルコフィクション/矢口史靖×鈴木卓爾
矢口「鈴木さんとはもう今まで脚本は一緒に書いてきたけど、一緒に演出したことはなくて」

鈴木「なかったです」

矢口「で、すごいやってみたかったんです」

鈴木「ああ」

矢口「で、結果ねえ、もう二度と一緒にできない」

鈴木「二度とこれ以上、今回のパルコフィクションは決定的な溝?」

矢口「最後!うん!」

鈴木「(ちょっと息をのんで)それは、なぜ?」

矢口「つうかね、だからそれまでは、僕がイニシアチブをとって、『秘密の花園』と『裸足のピクニック』」

鈴木「ええ」

矢口「決定権は僕が持ってた。だから参加してもらう、っていうかたちでやってきたけど」

鈴木「そうですね」

矢口「あの、完全に鈴木さんがやりたいのはこうだ、僕がやりたいのはこうだ、っていうのって、

ぶつけると本当に水と油というか、えらい差があるんだっていうことがはっきりして、

同じひとつのアイデアを完全に共同で、共有しながら作るっていうのはもう絶対できない、

っていうのがわかりました」

鈴木「や、逆に、今まで、できると思っていた、のか、きみは」

矢口「思ってた」

鈴木「そうか…悪かった」

矢口「だからあなたは、これから一人で作っていって下さい」

鈴木「うー、ん、いや」

矢口「(笑)すごいさびしそうだね」

鈴木「はなからそのつもりだよぅ」

矢口「あ、そっか。(笑)泣きそうな顔になってるよ」

鈴木「俺たち二人は兄弟舟にはならなかったかもしれないけれど」

矢口「(笑)本当に涙ぐんでるよ」

鈴木「あーそお?いや照明のせいだと思うよ」

矢口「あ、そうですか。きらきらしてる、目が」

鈴木「うん、それは君のことが好きだからだよ」

矢口「うわ」

鈴木「うわ、気持ちわるっ、うえ」

矢口「うえ、ひひひ」


★パルコフィクション/矢口史靖×鈴木卓爾★

2003年07月28日(月) パルコフィクション/鈴木卓爾×矢口史靖
鈴木卓爾「これで『ひぐちしんじ』に少し近づいたのか?近づきたかったのか俺は。

ちがうか。裸足のピクニックに戻ったんだ」

矢口史靖「退行現象だ」

鈴木「矢口さんに近づいたのか」

矢口「昔の俺に近づいてどすんの?」

鈴木「昔は昔でいいじゃん。いいものは…」

矢口「やればいいじゃん。やりたいようにやればいいじゃん」

鈴木「みんなともだちー」

矢口「なんだそれ(笑)」

鈴木「中学生日記」


★パルコフィクション/鈴木卓爾×矢口史靖★



■DVDに入ってたメイキング映像「パルコノンフィクション」から。
鈴木卓爾監督は撮影中(小道具を待ってる)ですごーく疲れてる様子。
矢口監督がそれを撮りながらぼそぼそと二人でしゃべってるとこ。

2003年07月27日(日) ミュージックステーション/安倍なつみ
飯田「あのころは16歳で、まだこう北海道に行ったりとか、行き来してたんですけども、

ちょうどあの「ミュージックステーション」に初めて出る時に、

あの、ちょっと――3時間ぐらいしか寝れなかったんですよ、ホテルにいて。

で、もうウトウトしてる時にドンドンドンドンドン! ってなっちが来て、

「ねえ、かおりん。寝れないからちょっと一緒に寝よう」って言って、

あたしはもう眠いんだけど、なっちのためを思ってちょっとお話を聞いてあげようと思って、

「かおりん、なっちはね、こうでこうでこうなのよ」

ってさんざん自分の事しゃべったら、かーって寝ちゃって、

結局あたしが寝れなくなっちゃったっていう記憶がありますね。」

タモリ「しゃべると寝れるのかね、あれ」

武内「ねえ」

安倍「安心しちゃうんですよね」

タモリ「あ、そうなの」

安倍「うん」

タモリ「かえって興奮するんじゃないのかね」

安倍「…」

タモリ「そうでもない

安倍「いやぁー、安心しましたね、あんときはね」

タモリ「へ〜」

安倍「うん」


★ミュージックステーション/安倍なつみ★



■なっちのイメージってまさにこんな感じで、
「女の子」の良いとこも悪いとこもぎゅっとつまってて、で最終的にかわいい、
っていうような。

2003年07月26日(土) すいか/木皿泉
わ!教授、どうしたんすか!ボロボロじゃないすか!

ケンカして帰ってきた猫みたいですよ。


★すいか/木皿泉★

2003年07月25日(金) 赤ちゃん泥棒/イーサン・コーエン
この夢は希望的観測だったのだろうか?

非現実的な俺の考えが夢に変わっただけか?

だけど俺とエドも幸せな老後があっていい。


親に権威と知恵と能力があって、

子供が愛され幸せな所。

どこだろう?


★赤ちゃん泥棒/イーサン・コーエン★

2003年07月24日(木) 夏猫の掟/GQ
ずっと戦慄感じて金輪際 

触らぬように避けるインサイド

騒ぎノスタルジー 四季折々ついでかわりばんこ

ラララ 甘い誘惑 流星の輝き


★夏猫の掟/GQ★

2003年07月23日(水) GET UP!ラッパー/つんく
バナナチップチップチップ……食べたいな


★GET UP!ラッパー/SALT5★



■ハルカリよりこっちの方がやっぱり好き。

矢口さん、辻、加護、紺野さん、小川さん、なっちがベストメンバーなので
(私の)、「SALT5」はそのうち3人もいるので嬉しいけど、
それ+りんねでなにかやって欲しいな、とか。
というかりんねだけでも。りんね大好き。

2003年07月22日(火) 佳代/ミネタカズノブ
ドイツ土産に僕にくれたビルケンのサンダルのタグは

可愛いからまだつけているんだ


★佳代◇GOING STEADY/ミネタカズノブ★

2003年07月21日(月) 麦秋/小津安二郎
(孫の爪を切るおじいちゃん)
 
周吉「ほら、よし。綺麗になっただろう?」
 
勇「うん」
 
周吉「ほら、ご褒美やるぞ。(缶からビスケット出す)おじいちゃん好きか」
 
勇「うん」
 
周吉(ビスケット渡す)「大好きならもっとやるぞ」
 
勇「大好き」
 
周吉「そうか、ほら」(何回か繰り返す)
 
勇(もらうだけもらうと立ち上がって逃げながら)「キライダヨーッ」


実「勇、またおじいちゃんにキャラメル食わしてみろよ」

(勇がおじいちゃんにひとつキャラメルを渡す)

実「あ、また紙食っちゃった!」


実「おい、勇! レールだぞ。レール買って来たぞお父さん! しめしめ、凄いなあ、凄い凄い!」

(横から手を出す勇を払いのけて)

実「待ってろ! あわてんな! ヘヘ、ありがてえな、しめしめ!」

(包みを開けると出てきたのは食パン)

実「なあんだ、チェッ!」
 
勇「パンだねえ…」
 

佐竹「おっかしな奴だよ。昔からあんな奴かい?」
 
アヤ「そう」
 
佐竹「だれかに惚れたことないのかい?」
 
アヤ「さあ、ないでしょ、あの人。学校時分ヘップバーン好きで、ブロマイドこんなに集めてたけど…」

佐竹「なんだい、ヘップバーンて」
 
アヤ「アメリカの女優よ」
 
佐竹「じゃ女じゃないか」
 
アヤ「そうよ」
 
佐竹「変態か?」

アヤ「まさか!」

佐竹「いやあ、そんなとこだよ。おかしな奴だよ」


紀子「だけどあたし、おばさんから言われた時、すーっと素直にその気持になれたの。

なんだか急に幸福になれるような気がしたの。だからいいんだと思ったの」


周吉「いやあ、わかれわかれになるけどまたいつか一緒になるさ。

いつまでもみんなでこうしていられりゃいいんだけど…そうもいかんしねえ…」

康一「お父さんもお母さんも、また時々は大和から出て来て下さいよ」
 
周吉「ん…」
 
紀子「すみません、あたしのために…」

周吉「いやあ、お前のせいじゃないよ。いつかはこうなるんだよ」
 
志げ「紀ちゃん、身体を大事にね、秋田は寒いんだっていうから…」
 
紀子「ええ…」
 
周吉「ああ、ほんとに気をつけておくれよ…大事にな…。そうすりゃ、またみんな会えるさ」


★麦秋/小津安二郎★

2003年07月20日(日) 伊東忠太の世界展/藤森照信
忠太の妖怪好きは本気なのです。

くりくり、もこもこした妖怪をとにかく毎日描いていた。


★伊東忠太の世界展/藤森照信★



■ワタリウム美術館

『伊藤忠太動物園』
読みたい!

2003年07月19日(土) すいか/大皿泉
私みたいなもんも、いていいんですかね?という基子(小林聡美)に。

「いてよし」

−第一話


「安心して忘れなさい。私が覚えててあげるから」

−第二話


★すいか/大皿泉★



■どっちも大学の先生役の浅丘ルリ子さんの台詞。

浅丘ルリ子さんに「いてよし」って言われたら、
私も素直に「そうかな」って思ってしまうかも。

第二話でともさかりえが、双子のお姉ちゃんは死んでもういない、
という話をする場面が、同じような話を聞いた時の知り合いの子の言い方と
まったく同じだったのも、なんだかドキドキしました。

2003年07月18日(金) ねこに未来はない/長田弘
ぼくがねこぎらいからねこ好きになったのも、

そんな単純なきっかけで廻転ドアをぐるりと一廻りして、だったのでした。

つまり、ぼくは、ある日突然にたいへんねこ好きなひとをすきになる破目におちいり、

ふたりで焼きたての手焼きせんべいみたいなじぶんたちの恋愛をパリパリ、

パリパリと音を立てて夢中で食べているうちに、ふと気づいたら、ぼくは、いつのまにか、

たいそうねこ好きになっている自分をみつけることになった、というわけなのです。


ずっと以前にぼくは、ながいあいだ、新聞の投稿欄に

次のような鮮明なはじまりをもつ文章を投稿することを、熱っぽく夢みていたひとりでした。

全国のねこぎらいよ!

この旗の下に集まれ!

全日本反猫同盟をつくろう!

結局ぼくは、それ以上の言葉をどうしてもおもいつけずに、

その投稿を断念せざるをえなかったのですが、おおくのねこぎらいが

ねこぎらいになる直接の原因おもなるほとんどがそうであるように、ぼくもまた、

ねこたちによる夕食のおかずの焼き魚を押し込み強盗されてために、

ねこたちにふつふつたる確執をかもしていたのでした。


★ねこに未来はない/長田弘★

2003年07月17日(木) 我輩は猫の友達である/尾辻克彦
うちにはチチヤスというアダ名の小学三年生の娘がいる。

夕食で乾杯するとき大人はビールなのだけど、娘はいつでもチチヤスなのだ。

チチヤスというのはヤクルトみたいな小さな容れ物に入っている赤い飲み物で、

リンゴの味がする。

娘は何だかこれが大好きなのである。

スーパーにいっしょに買い物に行くと、いつもこれを籠に入れる。

だから私は娘のことをチチヤスというアダ名で呼んでいる。


桃子というとちゃんとした名前みたいだけど、これがアダ名なのだ。

何故かというと、桃子は人間ではなく桃から生まれた。桃太郎みたいに。

いやホント。これは本当なのだ。前に小説に書いたこともある。

いや小説に書いたからって、そうか、これは本当の証明にはならないかもしれないけれど、

困ったなあ。だけど桃子はチチヤスと私が見ている前で、本当に桃から生まれたのだ。

ポンと。それがオギャアという赤ン坊かと思ったら、見るともうちゃんとした大人の体の女の人。

驚いたね。二人とも。で、チチヤスは思わず、

「お母さん……」

と呼んでしまった。チチヤスにはその三年前からお母さんがいなかった。

父親の私と二人暮し、いわゆる世にいうクレイマーものだったのだ。

そこへ大人の格好の女の人がポンと桃から生まれてきたら、それはやっぱり

「お母さん……」と言ってしまうのが人情というものだろう。


★我輩は猫の友達である/尾辻克彦★

2003年07月16日(水) 玄笑地帯/筒井康隆
書斎は二階にあるのだが、ここで仕事をしているとよく窓の外へキジバトが来て鳴く。

キジバトは普通「クック・ルック・クー」といって鳴くのだが、これは聞く人によって

いろいろに聞こえるそうである。おれにはなんと「ツツイ・ヤスタカー」と聞こえるのだ。

まさかと思い気のせいだ気のせいだなんでもないなんでもないと思うのだが聞けば聞くほど

「ツツイ・ヤスタカー」と聞こえる。ついには、あまりにもはっきりと「筒井康隆」

とぬかしやがったので仰天した。背筋をさっとのばし、立ちあがり、ただちに階下へおりて行き、

食堂にいた妻と息子に「今、上でキジバトが筒井康隆と言っただろう」と尋ねたが、

ふたりは気ちがいを見る眼でおれを見ただけである。


約十分後、今度は電話をかけてきやがった。早稲田大学生活協同組合の職員の声色を使い

「筒井康隆さんですか」と言うのである。「あなたはキジバトですね」というと「は」などと、

とぼけたりしている。「さっきとんで行ったキジバトでしょ」「わたしは早稲田の生協の」

「いやキジバトです」こういうことがあり、最近はだんだん世間が狭くなってきた。

たいていの人が「キジバトは電話しない」と言うのだ。

しかし中には「実はわたしにもそれに似た体験が」という人もいる。おれはこういう人とは

仲良くするようにしている。話をしていると面白いし、時おりはけけけけけなどと笑い、

また喧嘩をしたり、時には殺しあったりもする。と、ここまで原稿を書いた時、

妻が書斎に入ってきてこれを読み、なぜか、さっと顔色を変えた。あなた。

こういうことを書いてはいけませんわと言うのである。なぜいけないのかよくわからないが、

わからないなりにキジバトの話は中断し、別の話を書く。さて天皇陛下のことであるが。

とここまで書いたら横でじっと見ていた妻がまた顔色を変えた。


★玄笑地帯/筒井康隆★

2003年07月15日(火) 玄笑地帯/筒井康隆
「基地外に刃物というが(この章のタイトル)」

−中略

と、ここまで書いたところで、実はこのあとこの話をタイトルに結びつける筈だったのだが、

アーッ、いやなことを思い出してしまったのだ。

しかたがないからそのことを書く。


★玄笑地帯/筒井康隆★



■結局そのままこのタイトルにはつながらずに終わりました。

「きちがい」といえば、昔『テントDEセッション(NHKの生放送)』の
水木しげるさんがゲストの回を観に行った時、
水木さんが「わたしのようなきちがいはね…」と何度か言ってたのが、
なんだか素敵だったのを思い出しました。

2003年07月14日(月) 玄笑地帯/筒井康隆
おまけにその一位をなんとディズニーの長編漫画映画「不思議の国のアリス」にしているのである。

さすがは星新一。おれはおどろいた。

おれもこの雑誌の映画ベスト・テンへのアンケートは求められたのだが、

悩みに悩んだ末、ついにことわってしまったのである。というのは、

おれの好みというのはたいへん片寄っていて、過去に定評を得たいわゆる名作映画というのは、

おれのベスト・テンにはみごとと言ってよいほど入ってこない。

喜劇映画がほとんどなのだ。それでもいいではないかと一方では思ったりもしたのだが、

そんなものはどうせ集計の際、百位以下ということで切り捨てられてしまうのだ。

労力が無駄となり、こっちは馬鹿と思われる。癪だからことわったのだ。

ところが星新一が一位にあげたのはアニメーションであった。

喜劇映画でさえ入れるのをためらっている人間にとっては盲点でもあり、

想像もしていなかったことだ。

それもディズニー映画として最高傑作といわれている「白雪姫」ではなく

「不思議の国のアリス」なのである。そうか。

ベスト・テンのアンケートというのは実にこういうところにこそ価値があったのだ。

そしてまた自己主張の場でもあったのだ。

おれは「不思議の国のアリス」を見た数十年前のあの感動をまざまざと思い出した。

あの感動をなぜ忘れてしまっていたのだろう。

原作である「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」をすでに読んでいたおれは、

あのすごい話と、クイズの如くまた迷路の如き文章がどうやって映像になり得るのか、

出来るわけがないと思いつつ見に出かけ、その懸念をみごとにふっとばされた上、

ほぼ原作通りの感動が得られたことによって涙さえ浮かべておったのではなかったか。


★玄笑地帯/筒井康隆★

2003年07月13日(日) 点子ちゃんとアントン/カロリーネ・リンク
アントン「点子!泳ごうよ!」

点子「ダメなの」

アントン「どうして!」

点子「胸がいっぱいで」


★点子ちゃんとアントン/カロリーネ・リンク★



■点子ちゃんのお父さんとお母さん、親友のアントンとアントンのお母さん。
その四人が海で遊んでいて、少し離れてるとこに点子ちゃんがいて。

その点子ちゃんに向かってアントンが呼びかける場面なのですが、
10歳の超お金持ち超無敵な女の子の「胸がいっぱい」になるほど嬉しいことが、
こんななんでもないことっていうのが、もう。

2003年07月12日(土) 黄色い信号機/沢野ひとし
「しばらくちがう人と暮らしてみたい」

僕は全員が集まる夕食の時に男の理想論を展開する。

高校生の妻と娘は「いいんじゃないの」と涼しい顔をするが、

中学生の息子は「僕はイヤだ。そんなこと」とすぐさま反発してくる。

顔中を汗だらけにしながら、「お父さんは勝手だから嫌いだ」という。

私立の中学生は制服があり、ネクタイを着用するのだが、

息子はこんがらがったネクタイの結び目に毎朝腹を立て怒っているのだ。


それからしばらくして僕は絵の道具と何冊かの本を持って家出をした。

家族のものは僕が長い海外旅行に出るのに慣れているので、あわてることはないだろう。


ほとぼりのさめた頃、家に電話してみると、息子が「どこにいるの」と息を荒くしていった。

「おもしろいからお前もくるか」

「イヤだ……。お母さんが毎日泣いているんだから」

「泣いている?」

「そうだよ」


家出した人間が家にもどる時どんな顔をしたらいいのだろう。

本当に途方に暮れるものだ。

駅前のおもちゃ屋で、息子のために前からほしがっていたアメリカ製の機関銃を包んでもらった。

ついでにといってはなんだが、娘にも安いブローチを入れてもらった。

「オーイ。みんな元気だったか」

足にまとわりつく犬と一緒にドアをあけると、

家族のものは連続テレビに夢中になりながらご飯を食べていた。

娘も「ビデオでもう一回見ようね」とうれしそうである。


機関銃の箱を息子に見せると、無言で受けとり、箸を置き、乱暴に包みを破った。

機関銃を肩から下げて、僕をねらいながら「バキューン」とはじめて奇声を発した。


★黄色い信号機/沢野ひとし★

2003年07月11日(金) 黄色い信号/沢野ひとし
しかしやはりはじめてのせいか、垂直になってくると息子の動きはピタリと止まり、

手足が不安そうにぎこちなくなるのだ。

「お父さん、ザイルもっと引いて」

やがて息子は切なそうな声を、下から見上げるようにして出した。

「お父さーん」少年の短く刈った頭の下を、すがるような眼が光っていた。

「お父さんのこと好きか」と声をかけると息子は青い顔をして黙っていた。

「ザイル引いて!落っこっちゃう」「だからお父さんのこと好きか」

「……」

息子は汗をかきながらやっとのことで岩場にたどり着いた。

崖の上からあたりの風景を二人で眺めていた。

横でミカンを食べている息子を見るとあわれでならなかった。

暗くなる頃家にたどり着くと、息子は母親の膝にくるまるようにしてもぐりこみ

「僕は悲しかった」と涙をためていた。


★黄色い信号/沢野ひとし★

2003年07月10日(木) バカの壁/養老猛司
その後、自分で1年考えて出てきた結論は、

「知るということは根本的にガンの告知だ」ということでした。

学生には、

「君たちだってガンになることがある。
 
ガンになって、治療法がなくて、あと半年の命と言われることがある。
 
そうしたら、あそこで咲いている桜は違って見えるだろう」

と話してみます。

この話は非常にわかり易いようで、学生にも通じる。

それぐらいのイマジネーションは彼らだって持っている。


その桜が違って見えた段階で、

去年までどういう思いであの桜を見ていたかを考えてみろ。

だぶん、思い出せない。

では、桜が変わったか。そうではない。

それは自分が変わったということに過ぎない。

知ることというのはそういうことなんです。


知ることというのは、自分がガラッと変わることです。

したがって、世界がまったく変わってしまう。

それが昨日までと殆ど同じ世界でも。


★バカの壁/養老猛司★



■自分で読んだわけではなくて、博士の悪童日記から。

2003年07月09日(水) 無断借用疑惑について/佐賀純一
米紙、ウォールストリート・ジャーナルの記者が、ボブ・ディランのアルバム
「ラブ・アンド・セフト」に佐賀さんの著作「浅草博徒一代」からの無断借用があるとして、
5曲に計12カ所あるという借用部分の「対照表」を佐賀さんにメールで送信。
「これだけの偶然はあり得ない。感想は?」と質問したところ。

『そういう(世界的に有名な)シンガーに引用されたのならうれしい。非常に名誉なこと』



「アメリカだと普通は訴訟になる。考えているか?」
と記者からは提訴を促しているとも受け取れる質問をされたが。

『そういうつもりは全くない』

『日本では絶版でもう手に入らない作品を、ディランさんが読んでくれて、
詞に書いて素晴らしい歌になったのは非常にうれしい。
それで大勢の人が楽しむことができれば本望です』



ディランの歌を聴いたことがなかった佐賀さんは、
「ラブ・アンド・セフト」や初期の作品など計3枚のCDを購入。

『声も曲調も、そして詞も非常にいい。円熟した歌手ですね』

『「浅草博徒一代」も、愛とアウトサイダーが二つの柱。
双方とも悲しみ、孤独、恋のやりとりがしみじみ語られている』


★無断借用疑惑について/佐賀純一★



■記事を読んだときはおかしかったのに、書き抜いて見たら、
なんかちょっと違ってしまった気も。不思議。

2003年07月08日(火) サーチエンジン・システムクラッシュ/宮沢章夫
入り口の先はすぐ階段だ。上に進む。

コンクリートの壁に挟まれたどこにでもあるそれは、何段が上がると踊り場にたどりつき、

明かり取りのために作られた小さな小窓がある。

さらに上がろうと上に目をやると、階段の上、左手にドアがあるのがわかった。

あの日、首藤がドアから出てきた記憶が、また一瞬浮かぶ。

「おお」と首藤は言った。

「おつかれさまでした」僕は声をかけた。

首藤はそのまま階段を下りて行った。薄い緑のシャツと茶色の綿のパンツ。

もう七年になる。

七年後、僕の前にはあの時とよく似たドアがあり、

ただ異なるのはドアに横長の小さな貼り紙があることだ。

ドアの前に立って貼り紙を読むと、そこには、やけに几帳面な文字でこうあった。

「ここではありません」


★サーチエンジン・システムクラッシュ/宮沢章夫★

2003年07月07日(月) パー子のすきな人/藤子F不二雄
ねえ2号みち子さんて、そんなにすてき?

かわいくておとなしくて女らしくて、パー子とは大ちがい?

いったわね!!

すぐカッとするのがよくないって。ああそうか。


やっぱり女の子は、おしとやかなほうがすかれるのかしら。

あたしだってけっこう女らしいと思うけど。

そうよ、その証拠に……、星野スミレにもどれば、ファンが大ぜいいてくれるんだから……。

パーマンセットをつけると、性格がかわっちゃうみたい。

これから気をつけよう。


女は身だしなみがたいせつ。

お洋服はどれがいいかな。

(日傘をさしてお上品な感じに飛ぶパー子)日やけしたくないのよね。

香水をつけてきたの。1号気がつくかしら。


★パー子のすきな人/藤子F不二雄★



■2号(サル)に相談してみたり、
1号に「どうして今まで気づかなかったんだろう、こんなすてきな人が身近にいたなんて!」
って思われる夢を見ながら寝たり、かわいいパー子がたくさん。

で、結局おしゃれして行ったのに、犯人はマンホールに逃げ込んでしまい、
先につかまった1号と2号を助けるために下水に飛び込んで、
「え〜い、どろ水の目つぶし!!」
とかいって犯人をやっつける、というオチでした。

2003年07月06日(日) イヌ的/藤田秀幸
人間がね、一生を通してね、どれだけ幸せだったかはね、

その人がはしゃいだ数で決まるって昔パパが言ってた気がする。

言わなかった気もする。


★イヌ的/藤田秀幸★



■下北沢トリウッド

だめな人とだめな人が出会って幸せになる話で、
一番好きなタイプの話ってこういうのかも、と思いました。

他に

○「私を抱いて!そしてキスして!嫌なら来るな!!」のオープニングタイトル映像
○「自慢★自慢」のオープニングタイトル映像
○“ヤムヤム”のプロモーションビデオ

も観れて600円。

2003年07月05日(土) 彼岸からの言葉/宮沢章夫
中年の女性だった。

私に話しかけてきた彼女は、私の通う大学がどこにあるのかと質問した。

「八王子です」

と私は言った。

「じゃあ高尾の方?」

「いえもう少しこっちです」

「西八王子?」

「いえ、もう少し」

彼女は考える顔をし、それからきっぱりと言った。

「じゃあ八王子だ」

当たり前ですよ最初に言ったんだから、と言おうとしたが我慢した。

そこに愛すべき何かがある。

愛すべき人たちに共通の、キラキラとした何かだ。


★彼岸からの言葉/宮沢章夫★

2003年07月04日(金) ああエキセントリック少年ボウイ/松本人志
ああ うどんぐらいしか 食べる気がしない

えっ!今月まだ20日もあるの


★ああエキセントリック少年ボウイ/エキセントリック少年オールスター★

2003年07月03日(木) 邯鄲/三島由紀夫
次郎「君ってほんとうにきれいだ。でも皮をむけば、やっぱり骸骨なんだ」

美女「え?」

次郎「皮をむけば、やっぱり骸骨なんだよ」

美女「あらいやだ、あたくしそんなこと考えてみたこともないわ(思わず顔にさわってみる)」

次郎「骸骨に美人なんてあるかい?」

美女「そりゃあ、あるでしょうよ、きっと」

次郎「すごい自信だな。でも今キッスされたときね、君の頬っぺたの下でね、

君の骨が笑っているのが、僕にはわかったよ」

美女「顔が笑えば、骨も笑うわよ」

次郎「ふん、あんなことを言ってる。こう言わなくちゃいけないよ。

顔が笑うとき、骨は笑っているんだ、それはたしかさ。

しかし顔が泣いているときも、顔の骨は笑っているんだ。

骨はこう言っているんだよ、笑わば笑え、泣かば泣け、今に俺の天下が来るんだ、ってね」

美女「骨の天下!すてきね、そんなことを考えるの」

次郎「女の批評って二つきりしかないじゃないか。『まあすてき』『あなたってばかね』

この二つきりだ」

美女「なんて可愛らしい辛辣な坊やでしょう(女いといげに次郎を見る)」


★邯鄲◇近代能楽集/三島由紀夫★

2003年07月02日(水) 発作的座談会/沢野ひとし
朝起きると、ハアなんだか今日もいいなあ、なんてなるよ。


でもオレも悩みあるよ。

夜八時頃寝るだろう。で、朝早く起きるんだけど、昼頃ちょっと眠くなってまた寝ちゃう。

すると気がつくと夕方なんだ。



電車の窓から読み終わった本をびゅーんと捨てたよ、オレ。


オレなんか医者の帰りに薬捨てちゃうし、職業だって捨てちゃうぞ。


テニスボールは捨てられないな。



月なんか役に立ってないから別に空になくてもいいんだよ。

そしたら月刊誌もなくなる。



(オリンピックの種目を考えていて)

じゃあ一千万人で綱引き。

オーストラリアの広い砂漠でやる。

それで砂漠のオリンピック綱引き会場に向かうときは、みんな動物に乗って参加する。

馬とか猫とか。

猫四匹ぐらいの上に乗る。カッコいいな。


じゃあ真っ黒に日焼けしてヨーイドンで皮をむくってのはどう?


★発作的座談会/沢野ひとし★



■「発作的座談会」の沢野さんの挿絵から猫的なものをいくつか。
ねこのり
ねこはな
ニャーでんわ

2003年07月01日(火) 漱石書簡集/夏目漱石
あの「心」といふ小説のなかにある先生という人はもう死んでしまひました。

名前はありますがあなたが覚えても役に立たない人です。

あなたは小学の六年でよくあんなものをよみますね、

あれは小供がよんでためになるものぢやありませんからおよしなさい。


★漱石書簡集/夏目漱石★



■小6の子からのファンレターの返事の一部。

マリ |MAIL






















My追加