くじら浜
 夢使い







井戸の中 7   2014年02月17日(月)

わたしともだちいないんだ と、つぶやいたナナの声が、つながった手から静かにぼくの心臓に突きささる。
ナナがいつもひとりでいることは、ぼくも知っていた。
ぼくは言葉を思いっきり呑みこみ、ナナの手をしっかり握りしめた。

たしかに闇の中を歩いているのだが、ぼくにはナナの顔がはっきりと確認でき、つながったふたつの手は光を浴びていた。

ともだちなんかいらないよ ぼくは呑みこんだ言葉をナナに投げかけた。

ぼくたちの行く先にまだ光は見えなかった。

闇は深くつづき、それでもふたりはその先に歩いていかなければならなかった。






初日 最新 目次 HOME