くじら浜
 夢使い







太陽   2012年09月25日(火)

いちばん大切なものを描いて、と言ったら
その子は真っ赤な太陽を描いた。

これなに?と尋ねたら
地震の次の日の太陽
だって明るくて暖かかったから
と、笑った。







存在   2012年09月18日(火)

いつもそこにある銀杏の木

葉の色が変わって
初めてその存在に気がつくように







井戸の中 6   2012年09月16日(日)

しだいに重力がなくなっていくような錯覚に陥った。

闇の中をひたすら歩いていると、確かに前に進んでいるはずなのに、まるで空に向かうエスカレーターに乗って上に引っ張られているような、あるいは水の中を目をつむって泳いでいるような、踏み込んだ足の感覚がまるでないことに気づいた。

ぼくとナナは互いにその存在を確認し合うように、握り合った手に力がはいった。
どこに続いているのかな、とナナがつぶやいた。
ぼくは何も応えなかった。

しかし、ふたりがどこに向かっているのか、ぼくは知っていた。







   2012年09月09日(日)

夏の終わりにいつも聞こえるんだ
その声が

耳鳴りのようなその声は

遠くから遠くから
静かに静かに
ゆっくりと近づき

それはぼくの頭のなかで曖昧に響いているけど
それは確固な意志を持った夕焼けのように

夏の終わりにいつも聞こえるんだ
あの声が








   2012年09月02日(日)

それは大きな樹だった

なんかいも登り、なんかいも落っこち
太い幹からいくつも枝が延び
いつもぼくたちを抱き、ぼくたちに抱かれ

それはまっすぐに天をめざしていた






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