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2002年12月23日(月) Jユース杯 決勝トーナメント ジェフユナイテッド市原戦

02年12月23日13:30開始 川越運動公園陸上競技場
 第10回Jユースカップ2002・Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント2回戦
 対 ジェフユナイテッド市原ユース

▼布陣
−−−−−−仁科−−阿部−−−−−−

− 鈴木真 −−−−−−−− 杉山拓 −

−−−−−−大瀧−−枝村−−−−−−

−−森安−−高山−−渡邊−−天野−−

−−−−−−− 山本海 −−−−−−−

控え:風間、村越、杉山雄、篠田、高柳、上埜、岡村
交代:後半33分:杉山拓→上埜(そのまま右MFへ)
   後半33分:鈴木真→岡村(そのまま左MFへ)

ジェフユナイテッド市原ユース:

−−−−−−首藤−−向後−−−−−−

−−−−小西−−−−−−半田−−−−

−−−−−−八角−−工藤−−−−−−

−−生魚−−船中−−秋葉−− 林 −−

−−−−−−−−塚原−−−−−−−−

交代:後半33分:小西→軽込、後半36分:林→竹田、後半41分:首藤→川淵


▼試合展開

 私の自宅から川越駅までは近い。だが、川越駅から競技場までは遠い。私の選択肢としては当然歩くわけだが、暴走族の溜まり場になってそうなビリヤード場を横目に、伊佐沼で釣りに励む太公望に会いながら、田んぼの真ん中からあぜ道を直進する。競技場も視野に入ったところで、あぜ道の行き止まりに幅3Mほどの水路が…、だ、騙された!(誰も騙してないが) さすがに極寒の中、水浴びのリスクは負いたくないので余計に遠回り。錆びて穴の空いている鉄筋の橋?を渡って競技場へ。駅から70分ほど。
 天気は晴天に恵まれたが、観客席は屋根で影になり、隙間風が非常に寒い。観客は地元の浦和戦には300名以上が駆け付けていたが、清水−市原戦には200名弱ほどに減っていた。芝は日本芝(夏芝)使用のため枯れた状態。下地も砂地のため、滑りやすくなっているようだ。近年の競技場では、寒冷地型の西洋芝(冬芝)と併用し、気温の推移によって両方の芝を勢力交替させる「二毛作」を行うところもあるが、なかなかそこまでできる人材・資金がないのが現状である。
 試合開始前、元気良くアップする浩太の姿を見て安心したが、アナウンスされたメンバーには、先発にも控えにも、彼の名前は無し。だ、騙された!(誰も騙してないが) 今年のエスパルスユースは強豪だが、浩太という存在を得て初めてスーパーなチームになる。ボールを奪われないどころか、相手のプレスすら許さない浩太の判断速度とパス回しは、ユースレベルでは絶対的。互いにタレントを揃える中盤を軸にポゼッションサッカーを仕掛けるチームだけに、代わって中盤センターに入った大瀧とU-19代表工藤とのマッチアップが、勝負を分けるポイントになるか。

[前半]
 試合は序盤、いきなり5分に半田の左CKから秋葉のシュートを許すが、互いに中盤に持ち味のあるチームらしく、徐々に潰し合いから消耗戦に。持ち味が重なる相手同志では、持ち味を消し合う展開となりやすい。
 清水は仁科・拓也・天野の3年生が絡む右サイドで優位に立つ。8分の天野から仁科を経由しての阿部へのスルーパスはオフサイドとなるが、14分にも天野からパスを受けた仁科が阿部とのワンツーで突破、そのままドリブルで抜き去るかに見えたが、GKの一つ前でDF船中がカット、潰される。一方の市原も15分、林の右クロスに渡邊が競り負け、首藤にヘッドを許すが海人が反応。こぼれて混戦となり、何とかクリアした先からミドルを放たれるが、これは大きく左に外れる。市原は半田を軸に、向後・首藤らがドリブルで攻め立てる。
 そして16分、中盤で奪った市原が速攻、八角から清水最終ラインの頭を越えるロビングパス、清水DFがクリアしきれず後ろにこぼれたボールを、首藤が頭で合わせる。しかし海人が勇敢に飛び出し、体ごとぶつかってブロック。だが、もつれあったため、クリアは弱い。振り返って詰めるDF陣より、前を向いて突っ込むFWの方が早かった。懸命にポジションを修正する海人が間に合う前に、向後が豪快に押し込んだ。0−1。渡邊がパスカットからオーバーラップを仕掛けようとした隙に、中盤で奪われての失点だった。

 今年の清水は公式戦、先制された試合は全敗である。先制された試合が2試合しかないのも、凄いのだが…。未解決の課題に再び直面した。この試合はその後、一見ボールを支配しているように見えるが、クロスを上げるのはFWの仁科や阿部、シュートはボランチ大瀧の強引なPA角からのシュート。ポジション本来の仕事ができていないところに、焦りが見受けられる。一方の市原は周到に耐えながら、ドリブラーのFWが効果的にサイドを崩そうとする。
 膠着状態が続いた後、37分、半田から清水の右サイドにスルーパスが通り、首藤がフリーでのクロスはファーに流れたが、そこでファウル。その流れから市原は右CKを得る。38分、ショートコーナーからクロスを入れるがDFが跳ね返し、リバウンドのトラップ処理を戸惑うのを枝村がカット。そのまま中央を20Mほど駆け上がると右に阿部、左に仁科の3対3。中央枝村の選択は35Mロング。ゴール上部を狙ったシュートが放たれたが、GK塚原、集中を切らさず、これを両手でキャッチ。
 これで流れを取り戻すと、清水は再び右サイドから形を作れるようになる。41分には、中央に切れ込んだ拓也とポジションチェンジし、大瀧が右に開いて受ける。そこから中に切れ込むと、咄嗟の切り返しで阿部にマイナスのパス。阿部とDFが交錯し、ボールがこぼれるが、それをダイレクトで仁科がシュート。右45度からのボールは、しかし弱すぎ、GK正面できっちりと受け止める。
 その後も枝村のワイドな展開から、拓也がドリブルを披露するが、ロスタイム、清水DFのクリアボールを拾った半田が左サイドに捌くと、そこに八角。深くドリブルで抉って切り返し、細かく折り返すと、そこに近寄った向後がターンで渡邊を振り切りシュート。しかし、その空いたシュートコースの正面には海人。ガッチリとキャッチ。残りは大きく動くことなく、前半を終えた。

市原        清水エスパルス
7(3) シュート 4(2) ×大瀧、○枝村、○仁科、×仁科
4(1) 右クロス 6(0) ×天野、×拓也、×阿部、×天野、×拓也、×枝村
2(0) 左クロス 3(0) ×真司、×真司、×仁科
3(1) 左右CK 1(0) ×枝村

[後半]
 後半開始。逆転という未到の難題に立ち向かう清水は、いきなり飛ばす。まず2分、真司の左に枝村が回り込んでパスを受けると、丁寧なセンタリング。PA外で阿部が受けると、次の瞬間、ミドルシュート。豪快、だがゴールの上に飛んでいった。10分には、自陣左から森安が一気にロングフィード。ペナルティボックスの右角付近で仁科が頭で落とすと、そこに拓也。鮮やかなミドルだったが、GKの守備範囲であった。
 それでも運動量に勝る清水は、ボランチの大瀧・枝村や仁科がサイドに流れてチャンスを作るが、なかなか決定機を導けない。そして14分、ゴールまで35M距離でキープする大瀧が倒されFK。クイックリスタートがやり直されると、やはり早いタイミングで入れたボールに、ニアで渡邊が合わせたが、当たりすぎてコースを変えてしまい、横へ外れる。

 追い掛ける清水と、後方に人数を掛けていなし、時折前線の鋭いドリブル突破で牽制する市原。先に運動量が落ちるのがどちらか、それは必然だった。阿部の身体能力や仁科のテクニックに耐える市原DF陣も疲労は濃いが、消耗戦に音を上げたのは清水の中盤。枝村=八角ではあったが、拓也≦小西、大瀧<工藤、真司≪半田という構図。
 中盤が失われ、清水の攻撃は低い位置から阿部の頭を狙う、単調なものとなった。一方の市原。彼らは消耗した相手から高い位置で奪い、簡単に最終ラインの裏を狙う。それは浩太に率いられた清水が、夏のJヴィレッジで存分に披露した姿である。中盤での勝負は決していた。交代投入された岡村と上埜も、結局市原の中盤対面の相手を上回ることはなかった。
 それでも、高山や森安が懸命に裏をカバーし、海人は果敢な飛び出しでフォローしていたが、42分、清水右サイドから斜めに川淵が飛び出す。これはDFがスクリーニングするが、さらに後方から半田が飛び出し、これを森安が進路を塞ぎながら飛び出した海人がクリア。しかし、互いに引っ掛かったようなボールは勢いが弱く、それを拾ったのは市原FW、向後。落ち着いて流し込んだボールは、鋭く反転して飛びついた海人の腕の先を転がり、必死に追い掛ける森安を嘲笑うかのように、絶望的な2点目を記録した。0−2。
 その後も、阿部が仁科が枝村が、攻め上がった高山が死力を尽くした突破を図るも、もはやシュートを打つ力も残っていなかった。そのままホイッスル。杉山浩太に率いられた2002年清水エスパルスユースの冒険は、彼不在のまま、それを終えた。守る相手をも打ち破る局面打開能力という課題は、次の世代に解決が委ねられることになる。

市原        清水エスパルス
6(5) シュート 3(1) ×阿部、○拓也、×渡邊
1(0) 右クロス 2(0) ×枝村、×天野
2(0) 左クロス 4(1) ○枝村、×大瀧、×仁科、×枝村
0(0) 左右CK 2(0) ×枝村、×大瀧

 98年のナイキプレミアカップ(U-14)大会優勝で華々しくデビューした、「史上最強世代」84年度組。菊地・吉川らの離脱はあったものの、主力6人もがジュニアユースからユースに昇格したのは、エスパルス史上初めて。その後も、その名に恥じぬ活躍を見せ、夏にはクラブユース選手権優勝も達成しました。
勝負の後に待つものは、常に残酷な明暗のコントラスト。堪え切れぬ涙をユニフォームで拭った君たちよ。残念ながら昇格を果たしたのは浩太だけでしたが、清水エスパルスの、そのオレンジのユニフォームを着た6年間が、これからの人生の誇りになることを祈っています。そして人目を恥じず、悔し涙を流し続けた阿部よ。来年は君たちが、今日の日の先輩の無念を晴らしてほしい。来年も応援させて頂きます。


▼試合結果
清水エスパルスユース 0−2 ジェフユナイテッド市原ユース
 得点:前半16分:市原・向後寿夫(なし)
    後半42分:市原・向後寿夫(なし)


▼選手寸評
山本海人  7.0 失点は共に最初の被決定機を防いだ後のリバウンド。リベロ的にも機能。

天野数士  5.5 序盤小気味良く攻めたが、終盤にスピードで振り回された印象が拭えず。
渡邊優希  5.0 愛媛戦と同様に飛び出す2列目に無策。DFライン統率者として減点。
高山純一  6.0 裏を取られすぎだが、それでも1対1では圧倒的な存在感。空中戦も強力。
森安洋文  6.5 攻撃参加は封印されたが、半田・向後に掻き乱された左サイドで勇戦。

杉山拓也  5.5 天野・仁科と組んで突破を狙うが、先制後に引いた相手を崩すには至らず。
枝村匠馬  6.5 素早い展開力に課題も、中盤の潰し合いで孤軍奮闘。最多クロス数を記録。
大瀧義史  5.0 展開力の段階以前に相手プレスに潰されまくる。判断速度が絶対的に不足。
鈴木真司  4.5 突破は単発で、周囲と呼吸も不足。何より守備で森安に負担を掛けすぎた。

仁科克英  5.5 高い技術で脅威を与えたが、中盤が消えてリンクマンとしての機能不全に。
阿部文一朗 5.0 クロスや裏を狙うボールがなく、得意の形が出ず。単調なポスト役に終始。

上埜健太  --- 一度突破の機会があったが失敗。他は特に見せ場も出ず。
岡村総一郎 --- よく動いていたがボールは回らず。しかし、背が伸びたなぁ。


▼Jユース杯・決勝トーナメント[最終結果]
[1回戦]
12/15 日 13:00 広島  4−0 横河  吉田
12/15 日 13:00 京都  2−2 東京V 東城陽G
        (PK戦 3−2)
12/15 日 13:00 横浜M 4−0 塩釜  戸塚G
12/15 日 13:00 浦和  4−0 札幌  東農大浦和G
12/15 日 16:30 G大阪 3−0 愛知  万博
12/15 日 13:00 大分  0−1 F東京 別府実相寺
12/15 日 13:00 清水  2−0 愛媛  三保G
12/15 日 11:00 鹿島  0−4 市原  鹿島G

[2回戦]
12/23 月 11:00 広島  2−0 京都  長居2
12/23 月 11:00 横浜M 1−1 浦和  川越
        (PK戦 1−3)
12/23 月 13:30 G大阪 4−0 F東京 長居2
12/23 月 13:30 清水  0−2 市原  川越

[準決勝]
12/26 木 11:00 広島  1−0 浦和  長居2
12/26 木 13:30 G大阪 2−1 市原  長居2

[決勝]
12/28 土 11:30 広島  0−5 G大阪 長居ス



2002年12月15日(日) Jユース杯 決勝トーナメント 愛媛FC戦

02年12月15日13:00開始 清水エスパルス三保グラウンド
 第10回Jユースカップ2002・Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント1回戦
 対 愛媛フットボールクラブユース

▼布陣
−−−−−仁科−−阿部−−−−−

−真司−−−−−−−−−−上埜−

−−−−−大瀧−−枝村−−−−−

−森安−−高山−−渡邊−−天野−

−−−−−−−海人−−−−−−−

控え:風間、高柳、村越、雄也、篠田、岡村、拓也
交代:後半21分:上埜→拓也(そのまま右MFへ)
   後半40分;高山→高柳(そのままCBへ)
   後半42分:真司→岡村(そのまま左MFへ)

愛媛フットボールクラブユース:

−−−−−尾花−−久富−−−−−

−−−好光−−西川−−木山−−−

−−−−−−−玉井−−−−−−−

−吉長−−深水−−徳倉−久保田−

−−−−−−−木下−−−−−−−

交代:後半34分:久富→西山、後半37分:玉井→池内、尾花→前田、後半44分:木山→寺田


▼試合展開

 だから、何故に天皇杯とJユース杯を同じ時間にぶつけるかね。少し時間をずらせば、ハシゴしようとする人間もいると思うのだが、私みたいに。
 しかし、静岡は暖かい。日も優しく、東京から来た人間には天国のようだ。まもなくシーズンもオフということで、三保グラウンドは荒れ気味。何より困るのは、今日はグランドの中央にフィールドが敷かれてしまい、どちらのサイドからも今一見にくいということだ。
 会場はやはり観客は少なく、30名ほど。しかし、愛媛からは選手も含めてバスが2台出たようで、20人近い親御さんたちと、10数名の控え選手が必死に応援を送った。そう、これは最早アウェイである。ユースの選手は、こうした声援に慣れておらずに萎縮する傾向があり、最近だと仙台育英高戦でそうした姿があった。心配なところ。

[前半]
 さて、試合は開始2分、いきなり愛媛FCが右クロスからシュートを放つ。清水も3分、真司が左サイドの突破から切り返し、角度のない位置から意表を突いてシュート。GKがCKに逃れると、ニアを狙った枝村のキックは、DFが跳ね返す。これを拾った真司がクロス、逆サイドに流れたボールを上埜が追い付いて折り返すと、タッチラインギリギリで枝村が右足を合わせたが、GKこれをキャッチ。互いにサイドで攻撃の姿勢を打ち出した、激しい立ち上がりとなる。その後も清水は、人数を掛けずに左の真司を軸に個人突破で攻撃する。対する愛媛FCは、前回の対戦同様、多数が連動して惜しむことなく前線から動き回る。
 11分には、愛媛FC、中央から西川が突破を仕掛けると、反転、右に流す。45度の位置から木山がアウトに強烈な回転を掛けたボールは、海人の指先を抜けて曲げてきたが、阻んだのはファーポスト。ポストやバーに助けられるのは、前回の対戦に続いて2回目。幸運に助けられただけとは黙ってはいられないとばかりに、清水は15分、右に開いた阿部がクイックネスでマークを外し、センタリング。中央の大瀧が軽く左足を合わせて落とすと、右横で真司が左足一閃。その強烈なシュートを阻んだのは、またもファーポスト。リバウンドには着実に阿部が詰めていたが、シュートは着実性なく枠の上へ。やはり、勝利の女神は両者に平等である、甚だ無念だが。

 だが、前回の試合と異なり、愛媛FCの運動量は落ちない。前線は目まぐるしくポジションチェンジを繰り返し、同時に選手が入れ替わってもFW・トップ下・サイドMFでトライアングルを作る戦術が徹底されており、サイドで起点を作る。22分には、愛媛FCのスルーパスに天野の対応が遅れ、好光がクロスを入れると、ニアの渡邊の裏でFW2人がフリー。だがクロスに精度なく、海人が飛び出して抑えた。
 清水としては、相手1ボランチ攻めたいところだが、大瀧・枝村がトライアングルの対応に精一杯で、中央から仕掛けられない。それ故にアウトサイドMFが高い位置を保ち、打ち合いを挑む。32分、森安が右足でサイドチェンジ。やや精度なく上埜が後ろに下がって胸で落としたが、そのボールを唐突に枝村がミドル。低い弾道の後、揺れたのはニアサイドネット。残念ながら、ニアのサイドネットが揺れるのは、外れたことを意味する。

 33分にも、海人のスローから真司が疾走、中央の枝村に戻すと縦にミドルパス。阿部がDFを背負いながらポジションを譲らず、右サイドに流す。フリーで受けた上埜が阿部を狙うが、一歩早くDFがカット。真司は、そのファンタジーで攻撃の主力となり、34分にも大瀧から渡ったボールをドリブルと見せて、相手の股の間を抜くリターンパス。大瀧が追い越して受けようとするが、これはDFクリア。38分には、枝村がボールを持つ真司の外から追い越し、パスをもらったがDFこれを潰す。だが、ルーズボールに反応した真司が、今度はヒールで前に送り出す。これを枝村が受けてクロスを上げたが、DFがCKに逃れた。
 愛媛FCも、流れが前後するが37分、左クロスを上げるが、高山がクリア。愛媛FCはボールを拾うと、すぐさまスルーパスを狙うが、これも高山がボールだけを狙った深いタックルでクリア。その読み切った動きで、貫禄を見せつける。
 結局前半は、ロングフィードから阿部がPA内で抜け出したかに見えたところで笛。

愛媛FC      清水エスパルス
4(1) シュート 6(2) ○真司、○枝村、×真司、×阿部、×枝村、×上埜
4(2) 右クロス 6(2) ○上埜、×仁科、○阿部、×上埜、×上埜、×天野
4(0) 左クロス 5(0) ×真司、×森安、×真司、×枝村、×真司
1(1) 左右CK 4(0) ×枝村、×枝村、×枝村、×大瀧


[後半]
 後半に入ると、愛媛FCの運動量も落ち、相手の戦術にも慣れた清水が優位に試合を進める。5分、天野の突破を止めたDFがハンドの判定。微妙な判定に揺れる中、右45度の位置から大瀧がクイックリスタート、ゴールに向かって曲がるボールを仁科が頭で合わせたが、狙いすぎてGK正面。天野は8分にも、上埜に預けて駆け上がる。これを読んだ愛媛FCが上埜を潰すが、弾んだボールを枝村がダイレクトで前に流す。天野が完全に抜け出してセンタリングを入れたが、飛び込む阿部に僅かに合わず、ファーに流れてしまう。だが、この後半序盤の攻勢は、愛媛FCの戦術変更が徹底されるまでのモラトリアムに過ぎなかった。
 12分、愛媛FC、西川が左サイドで持つと天野を突破、前方を塞ぐ渡邊を引きずるように中央に流れると、戻したボールを好光がシュート。しかし、海人が正面で抑えた。このプレーで最終ラインが微妙に下がったのが端緒となった。最終ラインをFWがドリブルで脅威を与えながら、本当の狙いは2列目の3人の飛び出し。FWの突破に押し込まれて慌てた最終ラインの不用意なパスを、この3人が狙い打ちにする。
 まず16分、PA手前の混戦からの中途半端なクリアを拾って、FWが抜け出す。決定的な場面だったが、機敏に抜け出した海人が巨躯でシュートコースを覆い、シュートをブロック。しかし、23分には、その海人がバックパスのクリアをダブる。フリーで拾ったFWがシュートを放つが、幸運にも当たり損ね。必死に戻る海人が、追い付いてスライディングでタッチラインにクリアする。

 28分、またも愛媛FCのFWが抜け出すが、これも海人がコースを遮断、しかし清水の右サイドに弾かれた先には、愛媛の選手。ダイレクトでシュートを放ったが、その先にも既に海人はポジションを修正していた。横っ飛びで両手キャッチ、攻撃を抑止する。
 なおも愛媛FCは裏への飛び出しを狙うが、32分には森安がスライディングで相手ごとボールを刈り取る。このこぼれ球を拾った愛媛FCは、さらにスルーパスを送り込むが、譲らない森安が体ごと相手を潰す。このボールをミドルシュートで狙ったが、ゴール上へ海人が余裕を持って見送った。
 清水は、この時間帯、ボランチの2人が最終ライン近くに吸収され、サイドMFの単独突破に頼っていた。だが、愛媛FC2列目の攻め疲れから攻撃が鈍化すると、枝村が徐々に前に出るようになる。33分、中盤の底から枝村が大きく左に展開。真司が開いて受けるが、簡単に横の仁科に渡した。そしてPAの左角、仁科の突破開始。まず最初のドラッグターンでマークする相手を背中で外側に追い出すと、次のドラッグターンで置き去りにする。フリーで抜け出した仁科の次の選択は横パス、そこには阿部。その左足の爆発に対し、GKの存在は無意味。ボールはゴールネットの天井へ突き刺さった。1−0

 この先制点の後、愛媛FCは次々に交代選手を投入。戦術も変更し、ロングフィードでパワープレーに出るが、これは清水にとって手慣れたものであった。40分、裏へのボールの対応で高山が足を攣り、高柳が投入されたが、彼は常に相手より頭一つ高く、森安と共に完全に制空権を確保。大きく空いた中盤のスペースに、枝村が君臨する。
 43分、ハーフライン付近で奪った枝村が、予想外の45Mロングシュート。だが、これは次に来る瞬間への前菜。ロスタイム、森安が頭で競り勝ったボールを、大瀧が拾って枝村に戻す。ゴールまで距離35M。その1秒後の世界には、ネットに収まって転々とするボールと、右手を突き上げる枝村の姿があった。ロングシュートはGKの反応すら許さず、2−0。試合は決した。ちなみに、その1秒後の世界にも右手を突き上げる枝村の姿が、さらに1秒後の世界にも右手を突き上げる枝村の姿が、さらに…。いいから、お前、突き上げすぎ!(笑)。

愛媛FC      清水エスパルス
6(3) シュート 9(6) ○仁科、○大瀧、×枝村、◎阿部、×仁科、○仁科、×枝村、○仁科
               ◎枝村
0(0) 右クロス 6(2) ×天野、×上埜、×上埜、○拓也、×拓也、○大瀧
2(0) 左クロス 6(0) ×真司、×真司、×大瀧、×真司、×森安、×岡村
1(0) 左右CK 2(0) ×枝村、×大瀧


 この試合、筆者は押されていた印象しかないのだが、スタッツを見ると、最も押されていた後半10分〜30分ですら、シュートはないものの結構な数のクロスを上げている。そういう印象を受けたのは、勝って当然という驕りと、愛媛FC控え選手による声援の成果なのだろう。
 裏話として、実は彼らは鉄網のゴミ箱を横倒しにして上に乗っていたのだが、先制点の数分前に通りかかったお爺ちゃんが、それを見て雷を落とした場面があった。彼ら自身も「あれで流れが変わった」とボヤいていたが、実際その通りで、調子に乗りすぎて常識を外れた若者を大人が戒めるという、古き良き日本の風土が残っていた清水という地域の勝利だったのかもしれない。ここに陰のMVPを、流れを変えるプレーを見せた通りすがりのお爺ちゃんに贈ると共に、それができなかった自分に猛省を促すところである。いや、ホントに。

○試合後の談話(スポーツニッポン静岡版より)
阿部文一朗「いいボールが来ました。チームにはずっと迷惑をかけていて、点を取りたいと思っていたので良かった。もっとサイドから崩していけば楽になる。点を取って優勝したい」
築舘範男監督「(阿部について)もっと早く取れるだろうって思ったけど、90分の中で一つ取れればよしですよ」


▼試合結果
清水エスパルスユース 2−0 愛媛フットボールクラブユース
 得点:後半33分:清水・阿部文一朗(仁科克英:ショートパス)
    後半44分:清水・枝村匠馬 (なし)


▼選手寸評
山本海人  7.0 機敏な動きで相手にシュートコースを狙わせなかった。攻撃の起点にも。

天野数士  5.5 守備でスピードに振り回されて対応を誤り、取り残される場面が目立った。
渡邊優希  5.0 飛び出してくる2列目を掴まえきれず。クリアが弱く相手二次攻撃を許す。
高山純一  6.5 相手の攻撃を読み切った守備が光る。後半の物量攻撃には遅れることも。
森安洋文  6.5 高山が前半の鍵なら後半は森安。衰えぬ身体能力で高さにも速さにも対応。

上埜健太  5.0 小気味よいドリブルもあったが連携に難が。特に守備で天野を孤立させた。
枝村匠馬  7.0 潰しが遅れる場面もあったが、丹念な捌きと、最後は強烈な個の力を披露。
大瀧義史  5.0 当たりの弱さを狙われ、たまらず左右に捌いたボールを頻々狙われる。
鈴木真司  6.5 成功率は高くはないが再三突破を挑み、閉塞感漂う中で攻撃の旗手となる。

仁科克英  6.5 手詰まりの攻撃を中央で変化を付けようと苦心。最後は個人技で膠着打破。
阿部文一朗 6.0 サイドのドリブル攻撃主体のため、当てられて左右に流す役割に終始。

杉山拓也  6.0 ドリブルの脅威以上に天野を適切に補助。右サイドの守備の再建を果たす。
高柳亮太  6.5 最後の逆襲に対し制空権を譲らず、反撃のきっかけも与えずに逃げ切った。
岡村総一郎 --- 短い時間ながら精力的な動きで、勝利への意志を呼び込む。


▼Jユース杯・決勝トーナメント[途中結果]
[1回戦]
12/15 日 13:00 広島  4−0 横河  吉田
12/15 日 13:00 京都  2−2 東京V 東城陽G
        (PK戦 3−2)
12/15 日 13:00 横浜M 4−0 塩釜  戸塚G
12/15 日 13:00 浦和  4−0 札幌  東農大浦和G
12/15 日 16:30 G大阪 3−0 愛知  万博
12/15 日 13:00 大分  0−1 F東京 別府実相寺
12/15 日 13:00 清水  2−0 愛媛  三保G
12/15 日 11:00 鹿島  0−4 市原  鹿島G

○次回対戦 12/23 月 13:30 清水 vs 市原 川越運動公園陸上競技場



2002年12月08日(日) Jユース杯 決勝トーナメント 展望

清水エスパルスユース
クラブユース優勝・高円宮杯出場・Jユース杯予選D組1位[静岡県] 監督・築舘範男


全日本ユース高円宮杯では、クラブ王者として恥ずべき初戦敗退。行徳氏が急遽トップコーチに昇格し、築館氏が新たに監督に就任する慌ただしい状況の中、Jユース杯でも緒戦のアウェイ・ヴェルディ戦を落とし、激戦区D組の中で苦戦が予想された。だが、結局その後7連勝で順当に勝ち抜き。ライバルチームの主力がトップ合流や引退で欠くなど恵まれた面も多かったが、エスパルスもまた23人を起用し、12人が得点を記録。層の厚さを見せつけた。
緒戦の相手は愛媛FC。今年のクラブユース選手権(以下、クラセン)で対決し、5−0で勝利している。攻撃的MF、或いはFWで起用される西川は、今年JFLで得点も記録し、JFL敢闘賞を受賞している。力強いドリブルからの一発があり、全く油断のできない相手である。

エスパルスのシステムは伝統のフラット4−4−2。杉山浩太・大瀧義史・枝村匠馬・山本真希という各世代を代表する選手が揃う豪華な中盤が、最大の特長。しかし、その攻撃の色は誰が軸になるかで大きく変わる。
ユース年代では別格の存在感を誇る浩太が仕切る攻撃が基本となるが、それは少ないタッチで執拗に裏のスペースを狙う、リアルな現代サッカー。一方、今年急成長を見せる大瀧が仕切れば、足下のテクニックを活かして清水らしいファンタジーを演出する。枝村ならば、ワイドな展開と放埒なポジションチェンジによるダイナミズム。それを、あらゆる展開に対応する万能型FWの仁科と、爆発力のある阿部がフィニッシュを狙う。
クラセンとの大きな違いは下級生の成長で、左に大瀧と違い攻撃を仕掛けられる真司・岡村、右に拓也と異なり攻撃を創れる上埜が台頭してきた。左のドリブラーたちは、正確な足下へのパスを持つ大瀧の方が相性の良い印象もあり、浩太依存症は確実に改善されてきている。例え中盤を潰しても、前線には一人でカウンターを貫徹する男、阿部がいる。

例年と違い、今年はあまり攻撃に人数を掛けない。ボランチの一人は原則として最終ラインの前に残り、エスパルスの代名詞とも言えるサイドアタックも、無理にSBが上がることはない。但し、天野の浮き球での前方パス、森安のロングフィード、篠田のアーリークロスは、どれも飛び道具となる。その最終ラインは、1年からレギュラーを張る高山・渡邊の前に出る守備が光るが、今年は力押しに対しても枝村や森安が激しい潰しで対抗している。その大胆に高いDFラインの後ろでは、守備範囲が広「すぎる」男、山本海人が控える。

戦術理解度の高い3年生が揃い、組織としては非常に高いレベルにある。逆に攻守共に、力強い個人の力に対して弱点を見せる。中盤にタレントが多く、またFWやDFもMF的なセンスを持ち味とするために、局面局面の勝負に弱い。このあたりは逆に、大瀧−阿部のホットラインを軸に、2年生の個の力に期待したいところだ。



■選手名簿
こちらを参照のこと。
選手個人別の詳細は、こちら(3年生2年生1年生


■予想フォーメーション(名前の横は学年)

−−−−−−−−阿部文一朗2−−−仁科克英3−−−−−−−−−

−大瀧義史2−−−枝村匠馬1−−−杉山浩太3−−−杉山拓也3−

−森安洋文2−−−高山純一3−−−渡邊優希3−−−天野数士3−

−−−−−−−−−−−−−山本海人2−−−−−−−−−−−−−

控え:GK風間翔太1、DF高柳亮太2、DF篠田大輔2、MF上埜健太1、
   MF岡村総一郎1、MF山本真希・中3、FW鈴木真司1


■チームプロフィール
クラブユース選手権の記事を参照方。前述の通り、監督は行徳氏から築館氏に代わった。


■主力選手
06渡邊優希  720分出場1得点1アシスト。副将。全8試合フル出場を果たした守備の統率者。
20高山純一  630分出場1得点。最終ラインにいながら、ボランチの仕事を兼任する守備の要。★△○#
24枝村匠馬  630分出場1得点。地味な潰しとワイドな展開力と大胆な飛び出しを見せる副官。#!
08大瀧義史  623分出場4得点7アシスト。精力的な動き出しを習得し、魔法の左足を振るう。!
17天野数士  608分出場。クラセン決勝浦和戦を経て自信が漲る。堅実な守備を見せる右SB。
21山本海人  540分出場。巨躯と似つかわないアクロバティックな動きのふぁんたじすたGK。*
07杉山拓也  500分出場3得点2アシスト。予選は左SB・右MF・FWを担当。豊かな走力。
10杉山浩太  500分出場3アシスト。主将。別格の存在感を誇る我が侭王子様は最後の戦いへ。★△◇○#
11阿部文一朗 454分出場5得点1アシスト。1ゲーム1ゴールスコアラー、最終兵器アベブン。◇#!
18森安洋文  425分出場1得点。荒削りな力強い守備と、繊細なロングフィードを持つ左SB。
13仁科克英  420分出場3得点2アシスト。判断力も得点力も突破力も守備力も。万能型FW。#

03上埜健太  364分出場。まだまだ判断や動きは甘いが、その両足に魔法を宿す。
05篠田大輔  336分出場2アシスト。戦術理解度の高い左SB。クロスに磨きが掛かる。
26鈴木真司  334分出場3得点1アシスト。高い運動能力と技術を兼備するファンタジスタ。
15岡村総一郎 229分出場1得点。俊足と強い意志を有するレフティドリブラー。
16風間翔太  180分出場。低身ながら安定した技術を誇るGK。
02山本真希  132分出場1アシスト。瞬発力と相まって凄まじい攻守の切替の速さを見せる。 ▽!
04高柳亮太  101分出場。手堅い守備とフィードを披露するCB。

★…U19日本代表候補
△…U18日本代表
◇…U17日本代表
▽…U15日本代表
○…都道府県国体選抜
#…二種登録
!…ナショナルトレセンU−17
*…U18/15GKキャンプ



■2002年度公式戦戦績
[クラブユース選手権・グループリーグ]
第1戦:○2−0 神戸  (兵庫) 得点:仁科、大瀧
第2戦:○5−0 愛媛FC(愛媛) 得点:阿部、仁科2、高山、杉山拓
第3戦:○4−0 C大阪 (大阪) 得点:阿部、大瀧2、杉山浩

[クラブユース選手権・決勝トーナメント]
1回戦:○5−0 塩釜FC(宮城) 得点:阿部、仁科、杉山浩、高山、鈴木
準決勝:○8−0 名古屋 (愛知) 得点:阿部4、仁科、杉山浩、枝村、OG
決勝戦:○1−0 浦和  (埼玉) 得点:大瀧

[高円宮杯]
1回戦:×0−1 仙台育英(宮城)

[Jユースカップ2002・予選]
第1節:×1−2 東京V (東京) 得点:阿部
第2戦:○1−0 磐田  (静岡) 得点:仁科
第3戦:○6−2 磐田  (静岡) 得点:阿部3、仁科、高山、渡邊
第4戦:○2−0 東京V (東京) 得点:阿部、枝村
第5戦:○6−0 柏   (千葉) 得点:拓也2、大瀧、真司、岡村、田淵
第6戦:○3−2 柏   (千葉) 得点:大瀧2、真司
第7戦:○2−0 大宮  (埼玉) 得点:拓也、獅子内
第8戦:○4−0 大宮  (埼玉) 得点:大瀧、仁科、真司、森安

※D組1位:8試合7勝0分1敗 25得点6失点
 得点者:  阿部5、大瀧4、仁科3、拓也3、真司3、高山、渡邊、枝村、岡村、田淵、
       獅子内、森安
 得点占有率:阿部200%、仁科142%、大瀧108%、拓也83%、真司75%、枝村50%、獅子内50%、
       森安25%、高山17%、渡邊17%、岡村17%、田淵17%


■出身現役Jリーガー
クラブユース選手権の記事を参照方。


■試合日程
1回戦 12月15日(日)13:00- 三保G 対 愛媛FC
2回戦 12月23日(月)13:30- 川越  対 鹿島/市原
準決勝 12月26日(木)13:30- 長居2 対 G大阪/愛知FC/大分/F東京
決勝戦 12月28日(土)11:30- 長居ス 対 広島/横河/京都/緑色/横浜/塩釜/浦和/札幌

三保グラウンド
・JR「清水駅」よりバス(9番のりば)三保山の手線・三保静岡線「三保ランド」行きで終点下車
・静岡鉄道「新清水駅」よりバス(4番のりば)三保山の手線・三保静岡線「三保ランド」行きで終点下車

川越運動公園陸上競技場
・JR埼京線、東武東上線「川越駅」東口または西武新宿線「本川越駅」より東武バス
 「川越運動公園」行きで終点下車
・JR埼京線、東武東上線「川越駅」東口または西武新宿線「本川越駅」より東武バス
 「埼玉医療センター循環」、「上尾西口」行き乗車「大下」下車徒歩10分

大阪長居第2陸上競技場
長居スタジアム
・市営地下鉄御堂筋線「長居駅」より徒歩5分
・JR「天王寺駅」より阪和線に乗換え「鶴ヶ丘駅」より徒歩3分、または「長居駅」より
 徒歩5分


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