冒険記録日誌
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2021年09月20日(月) UFO54−40地球攻撃す(エドワードパッカード/講談社)

 海外産、低年齢層向けの単純な分岐小説タイプのゲームブックシリーズです。
 最初、このシリーズに対しては、話しの展開が分岐しすぎて収集つかなくなるし、話しも子ども向けだしなぁ、どれも設定が違うだけで同じような内容だし、尻切れトンボな結末も多いし、とあまり良い印象はもっていませんでした。
 しかし、これがシリーズが進むにつれて、奇抜な内容の作品が多くなって、なかなか楽しめるんですよ。しかし、そう思ってくるシリーズ後半は入手困難なレア本になっているんですね。
 ただし、シリーズ後半作品でも、全てが面白いと思ったわけではなく、例えばシリーズ15作目「幽霊殺人犯を追え」は山口プリン的には外れでした。
 タイトルから連想するのは、密室殺人みたいな「通常では実行不可能な殺人事件を起こした犯人を捕まえる」という推理ものではないかと思うのですが、実際は「子どもたち3人が山のロッジで泊っていると、外から不気味な物音がする。果たしてその正体は、はるか昔にインディアンと白人が戦って死んだ者たちの亡霊だったのだ!」というもの。殺人事件とか全然関係ねぇ。まあ、タイトルの方は翻訳版と原書では違うらしいので、百歩譲って許すとしても、これが日本人の作品なら「夜中に友達と肝試しに行ったら、戦国時代の武者の亡霊たちが襲ってきた」というところでしょうか。C級ホラーですね。子ども向けホラー雑誌に掲載されていそうな内容ですね。遊んでみると、尻切れトンボ的な結末が多くて、フラストレーションが溜まりました。

 しかし、続くシリーズ16作目「UFO54−40地球攻撃す」。これはタイトルだけでなく、本書に掲載されている粗筋まで面白そうで、興味をかきたてられました。

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 ぼくはいま、ニューヨーク・パリ間をむすぶ超音速旅客機コンコルドに乗っている。90分ほどでパリに着くというとき、とつぜん窓の外に、ぎらぎら光る白い円筒形 の物体を発見した。ぼくにむかって、まっすぐに進んでくる。 あぶない!思わず目をつぶった…。気がつくと、いつのまにか、ぼくはUFOの中にいた。 どこからともなく声のようなものが聞こえてきた。「われわれはU―TY星の支配者だ。 きみは銀河系動物園の標本として選ばれた。 協力をこばめば、ソモに送る。」ソモとはなんなのか、UFOのねらいはだれもしらない。刻々と、地球に危機がせまってくる。話題のゲームブック。
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 まるで宇宙人が地球に対して、宣戦布告をしたみたいです。しかし、実際に遊んでみるとわかるのですが、宇宙人が地球を攻撃するシーンは全然ありません。またもやタイトル詐欺です。内容は完全に、UFOアブダクション(宇宙人​拉致事件)ものでした。
 そんなわけで、突然、でっかい宇宙船に閉じ込められ、哀れ囚われの身となった主人公ですが、宇宙船の内部ならそこそこ自由に移動できるらしく、ゲーム中は他に同じように捕虜となった宇宙人達と交流したりしています。
 中にはだんだん、若返って最後には消滅しちゃう部屋にいる宇宙人とか、変な奴もいますが、そこは宇宙人のやることだから、まあ、と許容するしかない感じで話しは進んでいきます。
 誘拐犯であるU―TY星人は、実は楽園の惑星“アルティマ”を目指しているそうで、じゃあ、銀河系動物園とはなんだったの、みたいなところはありましたが、そこは宇宙人のやることだから、まあ、と無理やり納得して進めると、あっさりU―TY星人を倒して、宇宙船を乗っ取ったりできてしまいます。超文明を持っていそうな宇宙人からすれば猿みたいな主人公にいいようにされる始末。さすがに宇宙人が関わると、人間の常識とは違うことが起こりえますね。
 もちろん、バッドもグッドもエンディングのパターンがいろいろあるのは、このシリーズのお約束です。
 ちなみに山口プリンは、国会子ども図書館でこの作品を読んだわけですが、面白かった気はするものの、どのルートもあまり印象に残らなかったのか、ほとんどの内容を忘れてしまっています。
 粗筋にあって気になっていた“ソモ”もなんだったのか?当時、覚え書きのメモを残していたのですが、前にも言ったとおり、メモを紛失してしまい、ソモの内容を忘れてしまいました。少なくとも人類が連想するような地獄の惑星とかではなくて、無の異次元空間みたいな場所だったかな?主人公はそこで5億年ボタンなみ(知らない人は検索しよう)のとにかく長い時を囚われることになり、永遠に等しい眠りにつく羽目になるはずです。5億年ボタンと違って、寝ているだけましですが。
 唯一、強く印象に残っているのは、楽園“アルティマ”で、ここに到着することが、ベストエンディングとなります。この惑星の住民は親切なうえ、主人公の求めるものは全て手に入ります。もし地球に帰りたくなったらいつでも行き来する事まで出来てしまうのです。
 しかし、この惑星にたどり着く可能性は、ほとんどないほど低いとの解説があって、実際、どのルートを通ってもたどり着くことはできません。
 実は、最初に作者がほのめかしているのですが、アルティマはどこにもつながっていないパラグラフに書かれているので、ゲームを無視して直接そのパラグラフ番号に飛ぶのが、ベストエンディングに到着する方法なのです。なんと斬新な仕掛けでしょうか。いや、おかしいだろそれは。
 そうつっこみを入れつつも、同じ作者の作品「ジンカ博士の異次元空間」にあったメタ展開の連続を知っているだけに、この作者ならやりかねない、と思ってしまうのも事実。エドワードパッカード恐るべしです。
 とにかく、アルティマだのソモだの、妙にそそられる材料が転がっている。これだけで幾千万の凡作より、頭一つ抜けたといえる作品じゃないでしょうか。


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