冒険記録日誌
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2004年06月27日(日) 最後の戦士(マーク・ガスコイン/社会思想社)

 ファイティングファンタジーシリーズの第31巻。
 本書は数年前に古本屋で300円で購入していたのですが、同シリーズの27巻以降は特に入手困難ですから、今思えばこれは本当にラッキーだったようです。

 冒険の舞台は、タイタンの南アランシアに位置するヴィモーナの街から始まります。
 この街は6年前からトカゲ兵の帝国軍に攻められ続け、いまや陥落寸前の状態。勇気と剣の神ラテクは、街の人間達に最後のチャンスを与えるべく、神託を“君”にくだしたのでした。──ヴィモーナの北東のかなたにあるテラク神の山に赴き、悪の軍に立ち向かえる武器を手に入れねばならぬ。ラスカルという男を捜すことだ、と。
 ちなみに、テラク神は「出来るかぎりの援助はしよう」と最初に言ってくれますが、テラク神自身も天上の門を悪魔軍に攻め込まれている状態だそうで、実際の冒険中にはほとんど援助はしてくれません。リーブラ様と違って、頼りにならない神様です。

 ゲームのルール面の方は非常にオーソドックスな作品で、特殊ルールは一切なし。冒険の使命もありがちで平凡な作品のようにも見えますが、そこはファイティングファンタジーの世界をまとめた本「タイタン」の編集者でもあるガスコインの作品だけあって、タイタンという世界の厚みを感じさせる場面にいくつも出会います。
 特に主人公がオークの葬儀を行う会場にバッタリ遭遇してしまうシーンがあって、ここは一見の価値あり。
 会葬者は死者に敬意を込めて“死体を一口づつ齧る(かじる)”というオークの風習が見られます。日本ならここは“ご焼香”にあたるのでしょう。
 さらに今回は悪名高きオークの酒、グアーシュを飲むことさえできます。「タイタン」の本では“ゴキブリを鼻に詰めたような味”と紹介されていましたが、ここでは“からだの中をネズミに齧られるような味”だそうで、あいかわらず凄まじそうです。
 ストーリーの序盤は選択肢次第で大規模戦争の場面になったり、一人でトカゲ兵の敵地を駆け抜けたりといきなり派手派手。逆に終盤はラテク神の加護を受けた武器を手に入れて“さぁこれからだ!”というところで終わってしまうので、結構あっさりです。そのせいか一人のヒーローの英雄談というより、広大なタイタンという世界の一つのエピソードを描いたという印象がします。
 昔はいろんなゲームブックの冒険談が、タイタンという世界を作ってきましたが、この物語はまるでタイタンから冒険が生まれてきたみたいです。タイタンという世界が、それだけ成熟してきたのだなぁと感じさせる作品でした。


<追伸>
 後期のファイティングファンタジー作品は、理不尽なくらい難易度が高すぎる印象があったのですが、今回は特に苦戦することなく4度目の挑戦でクリアしました。これは意外でした。
 もっとも普通にキャラクターを作って遊んだにもかかわらず、生まれたのは4回とも技術点が11か12のキャラクター(4人目の主人公に至っては技術点12、体力点23、運点12という奴。恐るべきサイコロ運!)でしたから、本当はもっと難易度が高いのかもしれません。


山口プリン |HomePage

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