ぼくたちは世界から忘れ去られているんだ

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2004年07月29日(木) 天使との遭遇
 人間、暑くなるとやけくそになるもんだなあ。
 あたしはやけくそになって、飛び降りよう、と思った。マンションの最上階から。でも飛び降りるというのはなかなか勇気のいる行為だ。あたしはぼーっとしていた。何も考えていないわけではない。

 すると、エレベーターから一人の女の子、あたしより年下だ、が降りてきて、あたしの肩をたたいた。それはそれは軽快に。ぽん、と音だってなった気がする。
「飛び降りようと思ってるんでしょ」
ずばり云う。あたしは答える。
「そうだけど、あなたには関係ないんじゃないですか?」
あたしはすばやく女の子を観察する。金髪だ。でも明らかに染めた金髪。だって、頭頂部が地毛で黒い。プリン、ってやつだね。安っぽいワンピースにつっかけサンダルを履いた少女はどう見ても十六、七だ。少女は云った。ずばりとね。
「あたし、天使なのよ。あなたを救いに来ました」
あたしは驚いた。驚いたって云うよりあきれた。そんなばかな、って思った。
「はいはいそうですかさようなら」
あたしはその場を去った。階段を走って駆け下りた。そして一人で暮らしている部屋に戻って電気をつけた。頭の中から飛び降りのことは完全に消えていた。灯りをつけると、さっきの少女がいた。
あたしはたいそうびっくりした。まじかよ、とひとりごちた。
「だって、天使だもーん」
「そんなことないでしょ。どうせあたしが階段下りてる間にエレベーターで下りて、待ち伏せしてあたしが鍵をかけてないのをいいことに入り込んだんでしょ」
「違うよ、信じて」
「信じるわけがない」
「そんなこと云われても、あなたを救うまでこのうちにいますから」
「はあ?」
「だって」
あたしは遮った。
「天使だもん?うそつかないでよ。そんなのいるわけないじゃない」
自称天使は開き直った。
「じゃあ、家出娘をかくまうとでも思ってよ。なんでもいいから、居候させて」
あたしは考えた。最近振られたばっかりだし、さびしいのは事実。元来の適当な性格から、おろかにも、ま、いっか、と思ってしまったのだ。
「ま、いっか。なんて呼べばいい?」
「天使様」
「あーいいよいいよ。天使様ね。あたしの名前は」
「知ってるよ」
「云ってみ」
「沢田ジュンコ」
「ぶー」
「なによ」
「沢畑ジュンです」
ますます信じられない。
 でもあたしは思った。

 天使がいるんだったら、助けてもらおうじゃないの、ってね。



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