ぼくたちは世界から忘れ去られているんだ

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2002年06月15日(土) 「それは全くくだらない問題です」
「ああ困ったな、だいぶあたし、弱ってるみたい」
 彼女がきりだした。
「なんていうのかな、ほら、情緒不安定っていうの?あれみたいな」
 彼女は困っているのだそうだ。
「なによ、この部屋。暑いわね」
 そういって彼女は席を立った。多分クーラーで温度調節をするのだ。わたしはゆっくりと動く彼女をみつめていた。彼女の髪が歩くごとに揺れる。パドックを歩くうつくしい馬のしっぽのように。それはわたしの知らない彼女の片鱗だった。わたしにとって、彼女の髪はだらしなくたれさがっているものだった。ところが今日の彼女はきっちりと髪を結っている。わたしが、珍しいね、というと、あれ、いつもこうだけど、と彼女は云った。
 わたしの知らない彼女。
 彼女の知らないわたし。
 つやつやにニスを塗られた木の安っぽい椅子に、彼女は荒々しく座る。学校指定のスカートから見える太腿が、健康的に日焼けしている。
「あんたってさ、本当陰気よね。そこがおもしろいんだけど」
 笑い転げてはしゃぐわたしを彼女は知らない。



 次の日、彼女は日焼け止めをべたべたに塗りたくりながら、わたしに別れを告げた。


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