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2002年11月14日(木) 再会〜ポール・マッカートニー@東京ドーム〜

 ポール・マッカートニー〜driving japan〜@東京ドーム公演。ソロとして9年ぶり、ビートルズを含め4度目となる来日公演。そして僕はポール初体験。開場するのに並んでいたら、安達祐実が少し前に居た。細かったなぁ。ちなみに黒田さんはご一緒ではなかったです。僕の座席はバックネット裏。網が掛かってて多少観にくいにしても(外してくれよぅ…)ステージ正面でなかなかの席。

 オープニングアクトでは怪しい儀式のような、はたまた中国雑技団のような幻想的なショーがしばらく繰り広げられ、次第に気持ちが高ぶってくる。そしてそれが頂点に達すると、大きなへフナーのベースのシルエット共にポール登場!ポール自身もへフナーのベースを高々と掲げ颯爽とステージのセンターへ。カウントで1曲目『Hello Goodbye』で幕を開ける。席を立たずにはいられない人、悲鳴や絶叫を挙げる人、多くの人が本当にこの瞬間を待っていたのが分かる。音は少し小さく感じたものの、音響は噂ほど悪くない。でも、そんなことよりも、ただこの場所で生のポールの声を聴いていることに実感が沸かずにいた。あっという間に終わってしまい、続いて『Jet』。この曲もほとんど上の空で聴いていた気がする。「トウキョウ、ミンナゲンキカ〜イ!」とMCを挟んで『All My Loving』。隅々まで歌詞をちゃんと覚えていないけど、メロディーをどんどん口ずさんでしまう。時にハモってみたりしながら。
 今回、ポールのMCは同時通訳してモニターに字幕が映し出される。字が小さく見難かったりもしたが、それでも新しい試みだと思う。ポールの遊び心で「僕の犬はバナナを食べるのが好きだ(バナナで転んだ?)」とか全く関係ないことを口にしたりするのも何ともたまらない。
 左利き用のレスポールに持ち替えて、次の『Getting Better』ではイントロを間違えやり直し。あのポールが!?と思ってしまうが、これはカラオケライブでも口パクライブでも決してない。より歌声が身近に感じた。「アタラシイ、キョクデス」と言い演奏された『Lonely Road』は派手さはないものの、次第に心に染みてくる曲だった。
 
 バンドのメンバーが一度引っ込み、ポールのソロコーナー。アコギで『Blackbird』の弾き語る。耳を済ませば、小鳥のさえずりが聞こえて来そうだが、これはCDやレコードではない。ここまで来ても目の前で歌っていることを、現実として受け取れていない自分が居る。そんな夢心地が続く。『We Can Work It Out』では「life is very shor〜」の言葉がやけに身に沁みた。続く『You Never Give Me Your Money』ではサイケな模様のキーボードでの弾き語り。こんなにも哀しいメロディーだったのだと、改めて聴き惚れる。途中から『Carry That Weight』も織り交ぜ、哀しさが増す。『Fool on the Hill』では会場から手拍子が。こんなにも切ない唄なのに何故?
 「ジョント、ボクのタイワ(対話)」と紹介し、ジョンに捧げた『Here Today』。以前観た映画『TWO OF US〜1976年ダコタハウスにて〜』を思い出す。不仲説が絶えず流れたいたジョンとポール。そのポールがビートルズ再結成の話を持ちかけに、ニューヨークのジョンの自宅を突然訪ねるというストーリー。2人の間にもこんな1日があったかもしれない、と思わせるようなやさしい唄だった。
 今度はジョージに『Something』を捧げる。珍しくウクレレでの演奏。ジョージに招かれて共に夕食を食べた後には、よく一緒にウクレレを弾いていたらしい。手拍子にドーム特有のエコーが掛かり、ひとつの楽器みたいに聞こえた。間髪いれずに始まった『Eleanor Rigby』にははっとさせられた。早々と切り替わるモニターに視覚的にも圧倒された。しかし、今度は先ほどとは反対に手拍子が邪魔に聞こえた。どうしてこんなにも日本人は手拍子をしたがるのだろうか。何か根源的なものがあるのだろうか。
 『Here There and Everywhere』『Michelle』ではやさしいく伸びのある声に包まれる。メンバーのコーラスとの息もバッチリ。ドーム3日目、還暦のおじいちゃんの声とは到底思えない。それにしても僕の後ろの席の人は、ハモっているのか音痴なのか微妙な音程。多分、後者なのだがそれもご愛嬌。

 再びバンド編成になり『Band On The Run』『Back In The U.S.S.R.』で盛り上がり度は最高潮に。『Maybe I'm Amazed』では鳥肌が立ちっぱなしだった。ようやくここに来て、ポールが歌っていることを心から実感できたのかもしれない。体重が100キロ以上はありそうな、巨漢ドラマーの重いドラミングがズドーンと地響きのように伝わってくる。亡き妻リンダに捧げた『My Love』でも唄と同じくらいこのドラミングは響いた。かなり好きなタイプのドラマー。
 『Can't Buy Me Love』では映画『A Hard Day's Night』の映像がモニターに流れ、今との見た目にギャップと歴史を感じる。それでもかなり白熱し、当時を凌駕するような演奏だった。ピアノの静かな弾き語りで始められた『Live and Let Die』では、加速を増すと同時に大音量の花火が「ドガァ〜ン!!」と炸裂。これでもかと言うくらいに花火が打ち上げられ、演奏もその音を掻き消すかのように激しくドーム中を駆け巡る。曲が終わると、ポールが「煙い、煙い」とのリアクション。幾つになってもお茶目だ。この曲といい『Band〜』といい、こんなにも転調が多い曲なのに、ポップにまとめてしまうこの才能には見事としか言いようがない。
 その盛り上がりを冷ますように『Let It Be』。涙は零さなかったものの、いつ泣いてもおかしくないほど心を揺さぶられっぱなしだった。「サイゴニ、イッショニウタイマショウ」とピアノでコードを鳴らすと『Hey Jude』が歌い出された。隣の人はこの曲を待ち焦がれていたように、小さく喜び手を叩いていた。元々、ジュリアン・レノンひとりを励まそうと作られたこの唄が、こんなにも多くの人の心を動かす。そしてドーム全体、まばゆい光の中で自然と大合唱になっていった。この瞬間を深く刻むため。
 ここで本編終了。もちろん割れんばかりの歓声は収まるどころか、増すばかり。

 鳴り止まない拍手の中、アンコールに応え再登場。メンバー全員「祭」のハッピを着て、まるでビートルズの来日の時みたい。ポールの奥さんヘザーも登場して花束を渡す。ゆっくりとキーボードの前に座り、手慣らしで少し弾いた後『The Long and Winding Road』を歌い出す。唄い方にも感情が込められているのが伝わる。「マダ、ゲンキカ〜イ?」と『Lady Madonna』ではポールの滑り出すようなピアノに興奮しっぱなし。
 曲が終わると日本人のファン4人がステージに登場。「前日に観に来ていたノリのいい人」で選ばれたらしい。本当に羨ましいかぎり…。ヘフナーのベースを持っている人がいたのだけれど、あれは本物?それとも紙で作ったとか??そしてそのまま『I Saw Her Standing There』で1度目のアンコールは終了。ステージに上がった4人は一生の思い出になるだろうなぁ。

 もちろんこれで終われるはずがなく、2度目のアンコールで『Yesterday』を歌う。ビートルズ公演の時は歓声が酷すぎて、ポールの声がかき消されたが、今回は手拍子もなく5万人が聴き入っていた。キーボードのストリングスもそれを一層引き立てる。心が表れるような唄声だった。
 歌い終えて、バンドのメンバーそしてステージを作ったスタッフに感謝をする。初日のステージは前日の日米野球終了から時間のない中、徹夜で約300人のスタッフによってステージが組まれたと言う。観客だけでなく、色んな人の想いでこのステージは成り立っている。
 最後にショウを締めくくるように『Sgt. Pepper's Lonely Heart's Club Band(Reprise)/The End』。これでもかと言わんばかりにポールのシャウトが炸裂。『The End』ではドラムソロに続き、ポールもギターに持ち替えて3人のギターバトルが展開される。ライブ映像では観たことあるものの、この展開に度肝を抜かれた。このバンドは演奏はもちろんのこと、コーラスもかなりしっかりしていて、本当に否の打ち所がない。世界を渡り歩くだけの力量を持っている。時間でも曲数だけでなく、濃密な2時間半だった。

 東京の3日間とも同じメニューだったそうだが、用意されたアンコールも予定調和と言う感じは全くしなかった。それよりか2度のアンコールを含む、3部構成といった方が良いくらい、文句のつけようがない素晴らしい内容。逢ったことも、話したこともない古い友人に再会したようなそんなライブだった。

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