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2002年07月27日(土) 妖怪たちの宴〜フジロックフェスティバル’02@苗場スキー場〜vol.1

*長いのでごゆっくり、または保存して御覧下さいな。

 朝6時半起きでフジロック.フェスティバル’02@苗場スキー場の最終日に出かける。今年はひとりでの参戦。特に仲間内でワイワイやるタイプではないのだけど、待ち時間は暇を持て余すだろう。会場へ向かうシャトルバスの中で矢ちゃんにダビングしてもらった友部正人を聴く。窓から見える田園風景とよく似合う。しかし唄はぜんぜん田舎的ではない、むしろ都会的だと思う。フジロックにも出て欲しいな。
 
 11:00 ゆらゆら帝国@GREEN STAGE
 炎天下の中の主催者の挨拶の後、いかにも夏とは縁がなさそうな顔立ちの3人が登場。いつも暗がりの中でしか観ていない所為か、やけに顔色が悪く見える。妖怪といった方がいいかも。本日初の妖怪3匹捕獲。しばらくサウンドチェックした後で「やっていいスか?」と坂本慎太郎の一言で会場が沸く。

 各楽器をかき鳴らし始まった『わかってほしい』。「アアア〜ン」がいつもよりいやらしく聴こえる。テンポアップするところが裏ノリのような気がしたが、ステージ前方で飛び跳ねている僕らにはあまり関係ないのかも。続いて『アイツのテーマ』。なかなか聴けないこの曲をフジで聴けるのはうれしい。でも間奏で「オイッ、オイッ!」の掛け声はいかなるものか。アップテンポな『新曲1』(野音1曲目)。野音の時は会場の外から聴いていたのではじめて聴く。低音に押されほとんど唄が聴き取れない。まぁ、そうじゃなくてもステージ前でもみくちゃだったんだけど。終わってから「どぉも」と一言。
 『新曲2』(サビ:こっちへ来なよ〜おまえが好きだよ〜)。ゆったりとしたテンポのこの曲を、きつい陽射しの中で聴くと一段と狂気さが増す。途中でひんやりとした風が吹く。「メガネをかけてよく見えるならそれもいいが…」のところで顔を歪ませ方が印象的だった。誰にでも出来る顔ではない。バスドラが心臓の鼓動のように聴こえてきたところで、『ミーのカー』のイントロのギターフレーズと重なってくる。この流れは結構好きだ。ゆらゆらしながら聴いていると、一瞬気が遠のきそうになる。最後はノイズの嵐。お馴染みのペンギン歩きはいつもより速めに感じた。
 ノイズだらけの残響音を残したまま『男は不安定』へ。いつもとは違うバージョンで、同じリズムをキープしてどこまでも突き進む。間奏で「忍法〜!」とでも唱えるようにひとさし指を合わすような変な踊りを披露。でもギターは弾きたい…そんな格好でよろけて倒れそうになる慎太郎。急に思いついたのだろうか、それとも鏡の前で練習…そんな訳ない。「あとソ衄曲で終わりです…」と文字化けのような言葉を吐いて『ラメのパンタロン』。いつもの大合唱が囲まれた山々に木霊したような気がした。ラスト『ズックにロック』。ここぞとばかりに後方からダイブする奴が飛んでくる。転がる奴はいいが、ダイブしながら暴れるやつは迷惑千万。千代さんのベース、低音は出ているものの、いつもの滑り出すような軽快さがない。でもそれはきっとプレイではなく、音の所為だろう。
 とか何とか思っているうちにあっけなく終わってしまう。イベントでのゆら帝は他のバンドに比べてかなり短い演奏時間。この勿体つけ方がまた次も観たくなる要因なのだろうか。初っ端から気持ちのいい汗をかかせてもらった。

 12:20 FIELD OF HEAVENでのPolarisを観ようと思ったが、時間がないのでWHITE STAGEDate Cource Pentagon Royal Gardenに変更。11人編成の大所帯バンド。最後の2曲だけ聴くことが出来、ジミヘンの『Hey Joe』で終わる。全くと言って良いほど原曲をとどめてないアレンジに驚く。

 昼食。かなりの人で混雑していたので、カルビライス(確かこんな名前)の列に並んだはずがタコス売り場に並んでしまった!…。途中で気が付いたがあとちょっとの所で並び直すのはもったいない。仕方なくビーフタコス(あくまでも肉!)で我慢しよう、と思ったら隣のカルビライスの店員が「ご飯が足りないのであと20分くらいお待ちいただきま〜す」と残酷な言葉。僕もそっちへ並んでいればこの言葉を浴びせられていた訳である。20分以上間ってそりゃあない!もっと前に分かるだろうに。ビーフタコスはなかなか美味。3口で食べ終わっちゃたけど…。

 13:20  四人囃子WHITE STAGE
 遠くから聴こえるギターの音につられ、早めにWHITE STAGEへ行くとリハーサルが行われている。しかも楽器を持っているのはローディーではなく本人たち。モニターの音が中々合わず悪戦苦闘していたが、時折聴こえる曲のフレーズで歓声が湧き起こる。ここに集まった人は観客の数はそれ程多くないものの、本当に心から待ち望んでいた人ばかりだと見ていると分かる。そして割と年配の人が多い。当時から彼らを好きだった人なのだろう。

 一反、舞台袖に引っ込み再びS.Eと共に現れた4人。4月のスモーキー・メディスソとのライブはテレビでしか観れなかったから、この日がどれだけ待ち遠しかった事か。普段着とさほど変わらぬ格好で現れたおじさん達は、楽器を手にすると妖怪七変化のようにとんでもない事を仕出かしそうだ。佐久間(Bs)はほとんどが白髪だが、それでも佇まいは少年のよう。プロデューサーをやっているより、ベースを手にしていた方が断然カッコイイ。長髪をリハで結わいてたのを解いた森園(Vo&G)は更に妖怪度を増す。先ほど観たゆらゆら帝国の3匹が束になっても適わないほどの本物ぶり。幸運にも本日4匹目捕獲。しかもかなりの大物。
 静寂の中ギターが入り、何かが目覚めるように始まった『おまつり(やっぱりおまつりのある街へ行ったら泣いてしまった)』。周りの山々にも木霊するような、かなり深いリヴァーブが掛かった森園の声。高いキーは少しきつそうだ。それでも10分にも及ぶ演奏は圧巻だった。
 次にドラムから始まる『空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ』。他のパートが入って来た時、鳥肌が立つ。リハーサルで聴いた時よりも迫力がまるで違う。岡井(Ds)もパワフルで支えてあるシンバルが何度も倒れそうになる。
 そして幾つかの曲で構成されている壮大な曲『泳ぐなネッシー』。今では誰もがあのネッシー写真は捏造だと知っている中演奏されるこの曲は、そのことを肯定しながらも観ているものを時にやさしく、時に激しく包む。おまけにネッシーのような顔をしたカメラクレーンがステージのを色んな方向から見つめている。轟音の中ソロパートが激しくせめぎ合う。どのパートも顔がひん曲がりそうになるプレイ。間を取るか、間を埋めていくかも個々のセンスが問われる。
 インスト曲『なすのちやわんやき』。途中でベースを弾くのを止め、リコーダーに持ち替える佐久間。しかしリコーダーの音は爆音に見事にかき消される。ちょっと残念。決して出過ぎる事のない坂下(Kb)の音ももったいないくらいに小さい。骨董品のような家具調オルガンの音を堪能したかったのに…。曲が終わり、時計を見るとあと少しで13時。今ここを出なければ元ちとせには間に合わない。しかし僕の足は一向に動き出さず、そのままそこに。離れられるはずはない、今ここを離れたら後悔すると思う。そう思った矢先『一触即発』が迷っていた気持ちに止めを刺す。幻想的なフィードバックに岡井のスネア一発で静は動へと変化する。

あの青い空がやぶけたら
きっとあの海も
せり上がってくるにきまってる
空がやぶけて
声もきこえない


 搾るように出す森園の声は地獄の底からの呻き声ようだ。それぞれのパートの音量のバランスも悪くなり、ギターやオルガンの音はかなり小さく聴こえ難いのだが、それらをはるかに凌駕する演奏。ライブでこんなにも鳥肌が立ちっぱなしなのは久しぶり。立ち尽くし漂い、音を聴くだけの1時間弱だった。

 最近のライブ特有の前列でモッシュやダイブをするような盛り上がりはないものの、観ているだけで底から湧き上がってくるような興奮が確かにそこにはあった。それはフジロックでは新しいジャンルに位置する。どの曲でも同じような盛り上がりをみせるのは、非常につまらない事だと改めて見せ付けてくれた。懐かしむと言うには凄まじ過ぎたステージだった。

 14:20 元ちとせFIELD OF HEAVEN
 四人囃子の余韻が残したままステージに向かうとビョークのカヴァーの『Birthday』が聴こえてくる。そしてFIELD OF HEAVENにこんなに人が入るのかと思うほどの人の多さに驚く。実際、入場制限が出てたそうな。唄は聴こえるものの、後ろからではピンクの衣装を来た元ちとせが微かに見えるくらい。妖怪を見た後の目の保養にもなりゃあしない。編成はアコギ、パーカッションのシンプルな形態。曲によってアコーディオンが入る。それだけに歌も映える。
 『コトノハ』『ひかる・かいがら』と続き、アコギから始まった『ワダツミの木』。ある男を想い続けて、花になってしまった女の唄。誰もが待ち望んでいたように歓声も一際多い。CDのアレンジよりも更にシンプルで、ずっしりとしたパーカッションがお腹に響く。初めて聴いた彼女の生の声だがCDで聴くよりも癖がなく、しっとりと聴く者の心に沁みこんでくる。曲が終わると同時にその場を去る人がいて、やっぱりヒット曲の影響ってすごいんだなと思う。でもそれだけの魅力なのだろうか。
 少なくなったおかげでどんどん前にいくことが出来、歌う彼女もずいぶん大きくなってきた。歌う姿は何かが乗り移ったように意外とオーバーアクション。少しだけ武田鉄矢を連想させる。逆に話す姿はごく普通の女の娘。「気持ちいいので、もうちょっと歌っていていいですか?」とMCの後『君ヲ想フ』。スパニッシュ風のアコギのカッティングとライオンメリィのアコーディオンが冴え、鳥肌が立った。藤井珠緒のパーカッションもちゃんと息遣いが聞こえ、乾いた音が唄と絡み合う。

私と踊ってよ 夕陽が壊れるまで
私と踊ってよ あの森が溶けるまで
私にふれてよ ねぇ、いつまでも


 最後の曲『ハイヌミカゼ』。彼女が歌う「わたし」は「わたし」ではなく「あなた」は「あなた」ではなく、もっと大きな存在の様に思えてしまうのは僕だけか。
 もっと前の方で最初から観たかったけれど、僕は四人囃子を選んだ。後悔はないが二者択一の難しさを改めて感じる。ワンマンライブには是非足を運びたい。

 15:00 SUPERCARWHITE STAGE
 元ちとせが終わり、次の曽我部恵一まで少し時間があったのでWHITE STAGEへ。しかし、もうすでにステージ前には沢山の人。あきらめて道端で座って音だけを堪能。思い起こせばこれで見逃すの3回目。つくづくフジロックでのスーパーカーには縁がない。30分くらい聴いた後で再びFIELD OF HEAVEN移動。この時佐久間正英(四人囃子Bs)とすれ違う。

続きは「つぎの日」↓
http://www.enpitu.ne.jp/usr7/bin/day?id=79413&pg=20020728


臨月 エイジ |お便り気付かない細道へ向かえ旧ぐっどないみゅうじっく

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