酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年08月25日(水) 『方舟は冬の国へ』 西澤保彦

 十(つなし)和人は、失業し職安で相談員にネチネチネチネチ説教をされていた。まるで「キミは仕事ないけどボクはこうしてあるんだよん、いいだろ」とか言いたいみたいだ。ふと高校時代のある変態陰湿粘着質英語教師を思い出す。周りから蛇蠍のごとく嫌われていたハマグチ。そんな和人に言語同断文章(てくらだふみあき)と言うとんでもない珍名さんから突発的名仕事を依頼される。報酬は破格。しかし、質問はしないで「ある場所に一ヶ月ほど滞在して欲しい」と言うもの。報酬と謎に惹かれ、和人はその話に乗るのだが・・・・

 面白かったです。依頼された仕事はある人物になりきって、擬似家族ごっこをするというもの。魅力的な女性がパートナーの妻役。彼女に悶々とする和人の描写が西澤先生ならではって感じ。そして何より誰より‘やな奴’を描かせたら本当に右に出る者はいないんじゃないかってくらい‘やな奴’が本当にやな奴で(大笑)。いつもいつも思う。あのほのぼのやさしさうらうら光線だしまくりの西澤先生がどうしてあんな的確に‘やな奴’を描けるのかしらん、って。
 この物語は、意外と言えばとても意外な路線かもしれないけれど、西澤先生らしさてんこ盛りだと思いましたわ。西澤先生が書きたかったあんなこと。むふふ。私が感じたことが正解ならば、それらしきことは結構書かれてきている気がしますけど。大人のためのファンタジー・ロマンスでした。ラストが非常によいですv

「バベルの塔。そうですね。わたしたちはいずれ崩れ落ちることが判りきっている煉瓦を積み上げているいるにすぎない」

『方舟は冬の国へ』 2004.8.25. 西澤保彦 光文社




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