酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年06月06日(日) 『卒業』 重松清

「まゆみのマーチ」
 幸司は、危篤状態の母のもとへ駆けつける。病室にすぐに行けず、ロビーにいると妹のまゆみが近づいてきた。幸司は、まゆみに心になにか重いものを抱えて生きてきた。小学六年生の時、児童会長として在校生の挨拶をすることになっていた。そこへ入学してきたまゆみはいつもいつも歌をうたわずにはいられない少女だった。動揺した幸司の挨拶はさんざんなものになってしまった。少しも静かにしていられないまゆみは異端視される。歌を禁じられ、マスクをさせられたまゆみは口の周りが腫れあがってしまう。そしてついに心が壊れた。そんなまゆみを叱ることなく、母は『まゆみのマーチ』を歌い続けたのだった・・・

 嗚咽。読みながら最後は文章が涙で滲んでしまいました。母親の愛って本当に海よりも山よりも宇宙よりも・・・なににも比類できないくらい大きなものなのだなぁ。
 この物語の主人公・幸司は今ひとり息子の引きこもりに対峙しています。母の死に面し、かつて変わり者ゆえに自分に被害を与え続けた妹まゆみから母がその時どうんなふうに接したかを聞き、なにかを得ます。そして自分の息子に対する自分の態度が見えてきます。
 重松清さんと言うのは、切っても切っても金太郎飴な物語作りをする方ですが、これは久々に脳天をぐしゃっと握られた感じでした。切っても切っても金太郎飴だけど、金太郎の表情が違ってるんですね・・・。
 親が子を無条件に愛し、慈しむ。その貴さに感動。

 「一歩ずつでいいから、お父さんと一緒に外に出よう」

『卒業』 2004.2.20. 重松清 新潮社




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