酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2004年02月22日(日) 『黒冷水』 羽田圭介

 中2の修作は、高校生の兄・正気(まさき)の部屋を荒らし、覗き見をすることを至福としている。お年頃の兄の秘密はエロ満載で修作には一石二鳥の覗きとなる。そして決して覗きの痕跡を残さない。そのことが修作の誇りだった。しかし、正気は気付いていた。緻密な覗きと慢心している弟だが、痕跡はあちらもこちらにものこっているからだった。家庭内で静かな兄弟の火花が散る。気付かない振りで見逃していた正気だったが、学校のカウンセラーに心情を吐露して自分の内に流れる黒冷水に気付いてしまう。そして弟を監視するビデオカメラ。録画したあさましい弟の覗きシーンと見つけたエロ本を使ってそのまま自慰行為に耽る姿を両親に見せるのだが・・・。

 弱冠17歳で文藝賞を受賞した羽田圭介さんの家庭内サスペンスホラー(勝手に名づけた)です。最後の方が少し弱い気がしましたが、執拗に覗き行為を繰り返す弟の偏執的なところや、対する兄の残酷な報復には驚かされてばかり。なにより、やはりこれを17歳が書いたというところがすごい。
 物語には3人の変態的な少年が登場します。修作・正気兄弟と、伏兵の青野くん。まぁ、オチを考えると正確に3人と言っていいかどうか疑問ですが。近親憎悪というのは、ねじれてしまうと修復がきかないかもしれない。近すぎるからこそ。
 さて、この若く自信満々な羽田圭介さんは次回作にどんな物語を持ってくるのでしょう。今からとても楽しみです。

 どうやら書くという行為が、だれかに話すという行為の代わりになったらしい。

『黒冷水』 2003.11.30. 羽田圭介 河出書房新社



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