酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年07月15日(火) 『七瀬ふたたび』 筒井康隆

 『家族八景』でお手伝いさん家業から足を洗った火田七瀬。今回、七瀬はさまざまな‘力’を持つ仲間たちと邂逅する。『家族八景』で七瀬はいつも<家>からはじきだされた。その七瀬が生まれて初めて心を許せる仲間=家族を得る。しかし、その七瀬たちの前に立ちはだかるのは、超能力者を抹殺しようとする組織=国だった。七瀬の命をかけた死闘が幕をあげる・・・。

 前作『家族八景』では七瀬が、人間たちの心の闇に光をあてました。今回『七瀬ふたたび』では、七瀬たちの抱える闇に光があてられてしまいます。七瀬は人の心を読むことはできても、闘う力を持ちません。闘う‘力’を持ったほかのエスパーと組んではじめて闘える訳です。仲間たちが順番に殺られる今際の際に七瀬に伝えてくる心の叫びは涙ナシに読めません。
 『七瀬ふたたび』は文句なしにエンターテイメントだと思います。旅をする七瀬が仲間を次々獲得していく様は、里見八犬伝のよう(笑)。しかしラストで確か七瀬は・・・。

 神様。なぜ超能力者をこの世に遣わされたのですか。人類を試すためだったのでしょうか。それなら、もしそうだとしたら神様、人類はまだまだです。

『七瀬ふたたび』 筒井康隆 新潮社文庫
 



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