酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年07月12日(土) 『影との戦い ゲド戦記機戞.襦瓮哀ン作 清水真砂子訳

 アースシーという多島海世界に魔法使いの資質を生まれ持つハイタカと言う少年がいた。魔法使いオジオンに見出され、その才能をどんどんと伸ばしていく。自分の高慢なうぬぼれからより高みを目指すゲドは、ありとあらゆる高度な術をものにするべくローク島へ向かう。ゲドは優れたライバルへの嫉妬から修行の身であるにもかかわらず、危険な魔法をおこなってしまい、その結果、死の影を呼び出し、後悔と反省からゲドの人間性はがらりと変わってしまう。ゲドはそののちその死の影と向かい合い追いかけ闘うことになります。ゲドが手にするのは勝利か敗北か。

 優れた児童文学というものには普遍性があるのだと思い知らされるものがたりでした。主人公のゲドは最初とてもいやな少年です。己に力と才能があふれんがゆえに陥る罠と言えるでしょう。そんな愚かな驕り高ぶった自分自身が己と周りに危険を呼び出してしまう。ここでゲドは悩み後悔し、成長します。自分の力を過信していた少年から思慮深い青年へと。ゲドが闘った死の影は、自分のうちなる負の部分だったのかもしれません。この影を打ち負かすか、打ち破れ吸収されてしまうのか、これがこの物語のテーマになっています。
 この物語を読んでいて身につまされてしまうのは、自分にも負の部分が存在すると認識すること。でもその負の部分から目をそむけて生きることは許されない。人間は考え悩み反省し、成長することができる生き物なのだから。今なお残る自分の中の影と対峙しよう、ふとそう思った。

 すべてをひっくるめて、自分自身の本当の姿を知る者は自分以外のどんな力にも利用されたり、支配されることはない。

『影との戦い ゲド戦記機戞1976.9.24. ル=グィン 岩波書店



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