酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年07月09日(水) 『闇の音』 明野照葉

 吉川真昼は常人ばなれした異常な聴覚を持っている。普通では気にならない程度の日常の騒音に苦しみ、上の階の住人の起こす小さな物音まで聞こえ気になってしまう。しかし上に越してきた新しい住人は思いがけずもの静かな男だった。しかし音の無さにもほどがある。そして執拗に手を洗っている上の男。もしかすると男は殺人者ではないか?という妄想に取り付かれてしまう真昼は・・・。

 この物語は去年読んで久しぶりに再読いたしました。明野照葉さんの物語はたまに読まずにいられなくなる(照葉中毒)。この『闇の音』は超能力もの?とか、そんなにこわくなーいとか言われますが、それはきっと間違いです。この物語はものすごーく怖いですよ。なにが怖いかって、最後に真昼が辿り着く人間の心の闇のこわさたるや、唖然としちゃいます。真昼をそこへ突き落とす存在も恐ろしいけれど、キャラクターとしてはその人間が一番魅力的。明野さんの物語にはそういう人間がよく登場します。ものすごく悪魔的で身勝手に消えていく奴(苦笑)。悶々としますわ。
 また、明野照葉さんの応援サイトで明野さんの雑記帳や掲示板でご自身を垣間見ることができると、物語のあちらこちらに明野照葉さん自身が投影されていることに気づきます。ファンとしてはそこがまたたまらないのよねぇ。ちなみに最近URLが変更になりました。
新URLはこちら↓になりますv
 http://pleiades.infoseek.livedoor.com/ 

 人というのは、近づいてはいけない場所、関わりあってはいけないものに、なぜか心惹かれたような気持ちになって、自ら近づき、関わりあってしまうことがある。いわば知らず知らずのうちに、悪い因縁の糸に手繰り寄せられていくようなものだ。

『闇の音』 2002.7.18. 明野照葉 ハルキ・ホラー文庫 



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