酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2003年07月08日(火) |
『ぬしさまへ』 畠中恵 |
廻船問屋兼薬種問屋を営む大店の若だんな、一太郎は病弱ですぐに寝込む跡取り息子。両親から溺愛され、佐助と仁吉という、ふたりの手代にも監視されるように溺愛されている(笑)。一太郎の元には、佐助、仁吉(ふたりは実は人ならぬ妖)は勿論、屏風のぞき、鳴家などの愛すべき妖たちが集まり、いつもとてもにぎにぎしい(笑) 裕福な家庭で、両親から溺愛され、何不自由なく育った一太郎は、思いやりあふるるナイスガイ。しかし哀しいほどに病弱に生まれついてしまった(それも訳あって)。そう彼こそが探偵の中でもかなり珍しい“病床探偵”である! さて今回も人の心に巣食う闇ゆえの事件、人ならぬものの悲哀、病床探偵一太郎はやさしいまなざしでするすると謎を解いていく。 今回の短篇の中で一番ぐっときたものは「仁吉の思い人」でした。一太郎と仁吉の間にある優しい因縁にほろりとします。いいお話です。毒のない優しい物語というのもいいものだな。次の作品では佐助の恋も語られると嬉しいのだけど。
私は……私は本当に、もっと大人になりたい。凄いばかりのことは出来ずとも、せめて誰かの心の声を聞き逃さないように
『ぬしさまへ』 2003.5.20. 畠中恵 新潮社
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