ソレイユストーリー
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2003年07月12日(土) 13話 『帰還』

-----海底トンネルのプラットホームにて


発電機のラジエーターから漏れる暖気にあたっていた1人の男。
彼の名はドーラ。
しかし今は別の名を名乗っている。
指名手配から逃れる為に・・・

ドーラはずっと考えていた。
人工環礁に残してきたスラムの仲間達は無事でいるだろうか。
海賊の略奪は、もしやここ(海上駅)にまで及びはしないだろうか。

もうしばらくの間、厳しい寒気が続く。
食料は乏しい。
皆この地底でじっと耐えている。




---数ヶ月後



ようやく迎えた夏季のまだ冷たい潮風を頬に受け、
海上駅の村人達はオキアミ漁のために、漁船を繰り出していく。
慣れぬ仕事を手伝う難民達。

ドーラは錆びついた巡視艇の手入れを始めた。
再び人口環礁へ、皆を帰す為に。
なんとか受信したニュースによると、自分の街は海賊の手から逃れたらしい。
かつて避難していたクロレラ農場のファーマー達も徐々に戻ってきていると言う。
あの懐かしい街に帰れるのだ。

旅支度を終えた一行は、防寒テントを張ったデッキから、
小さくなる駅を見ながら、大きく強く手を振った。
自分達を親切に受け入れてくれた村人達との別れは涙を誘った。

村長(むらおさ)は別れ際、ドーラへ贈り物をした。
それはフイゴアンコウの丈夫な皮で作られた美しい外套だった。
外套をまとったドーラは、立派な海の男に見えた。

2週間ほどして見えてきた古里。
ジオテックドームのガラスが無くなっている。
きっと海賊にやられたのだろう。
皆はそれを見て心が痛んだ。
しかしこれからの街の復興に向けて、心を一つにしていた。


          



                つづく



  


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