| 2003年06月30日(月) |
2話 『少女の名は「リアラ」』 |
男の名は「キルマ」 少女の名は「リアラ」といった。
おたがいの身の上を知るにつれ、 ますます心の繋がりを深く感じていった。
キルマは年の頃なら30半ば。 代々海上保安に携わる家系の産まれだった。 彼が、はじめてロボット巡視艇を任されたのは、 まだ数年前のことである。 彼の特技でもあるメカニックとデッサン力を生かして、 方舟の上で過す、有り余った時間を、 ボイラーの修復や機関師らの似顔絵描きで紛らわした。 ほぼ一月の間、あちこちを散策しまくったおかげで、 この方舟のおおよそのあらましを把握した。
リアラの願い…。 それは彼と二人でここを抜け出し、 どこか安全な海域でささやかな暮らしをもうけること。 その時は、きっと…かわいい紅粉鳥も連れて行くわ…
職務をまだ忘れてはいないキルマは、母艦からの連絡を辛抱強く待った。 だがしかし、それは一向来なかった。
この際… 彼の脳裏に、今まで思いもしなかった自分の未来が浮かんだ。
つづく
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