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2015年10月25日(日) “音楽家の為の運動療法”を用いたピアノの指導法  〜ピアノを鳴らす身体について学ぼう〜

昨年、ジャン=マルク・ルイサダ先生のマスタークラスの際に一緒にお招きした音楽家のための運動療法士イザベル・カンピオン先生。
私自身も何年か前から彼女のレッスンを受けて来ましたが、自分が指導する立場に立つと、分かったと思っている事を正しく伝えられなくて歯がゆく思っていました。
また、2か月に一度のlesson de ラ・パレットで弾いてくださる生徒さんを見ていて、カンピオン先生の考えを知ったら演奏が改善されるだろうと思う事がしばしばありました。
そんな訳で今回、カンピオン先生をお招きして、ピアノを鳴らすのに適切で自然な身体の使い方を学ぶ機会を持つことができたのはとても嬉しいことでした。

講座の最初にカンピオン先生から、“音楽家の為の運動療法”についての説明がありました。
内容は「ピアニストの為の“アトリエ”」の時に説明くださった事をコンパクトにした内容で、“骨”“筋肉”“靭帯”…と人間の身体についての事実を積み重ねていくもので、その中には、指の動きに腕の筋肉がどのように働いているかという説明もありました。
カンピオン先生の考え方の根底には、「人の身体にとって自然であること」というのが常にあり、そのため、ご指導を受けた最初の段階では難しいと思える事でも、少しずつ演奏に取り入れる事で困難だったことが楽にできるようになるのです。
最初の説明は私たちが人体について正しく理解するための土台となるものでした。

その後、小学生と高校生の二人のレッスン。

レッスンといっても曲についてではなく、演奏の際に身体をどう使うか…というもので、曲の最初のほうを弾いてカンピオン先生がそれを観察し、本人とやり取りしながらやるべきことを一つ一つ説明していくスタイルでした。

最初に弾いたのは小学6年生の私の生徒で、彼女の悩みは左手親指のマムシ指と時々小指が上がってしまうことです。
カンピオン先生によると、親指と小指というのは相関関係があり、ピアノを弾くためにはどちらもきちんと固定されることが必要で、そのためのポジションがあるということでした。
レッスンでは、この生徒が親指の正しいポジションと動きを理解し実践するために必要なエクササイズを4つ紹介され、それぞれのポイントが説明されました。
まむし指については、一般に言われている練習とはちょっと違っていてそういうやり方もあるのかと驚きましたが、実際にレッスンに取り入れてみると短期間で大分良くなったように見えて、指導の引き出しが一つ増えた感じがします。

二人目の生徒さんはショパンの大洋を弾く高校生の生徒さん。
こういった難曲を弾くのにはどうしても力が入ってしまいがちですが、この生徒さんの場合、それを意識する余りに上体の力を抜き過ぎていて、その為、クビの後ろに痛みが出ていて、カンピオン先生のご指導もその点が中心となりました。
(ここで、いわゆる“脱力”についての説明がありました)

この生徒さんに限らず、カンピオン先生のご指導では、肩甲骨のポジションがとても重要になります。
肩甲骨が固定されることで鍵盤にかかる力と方向が無駄なく安定してコントロールできるということです。
この日の二人の生徒さんにもその点が丁寧に指導されて、カンピオン先生が補助して肩甲骨の位置が固定されると、それまでとはまるで違った充実して余裕のある音が会場に広がりました。
「彼女は今、アルゲリッチと同じやり方で音を出しています!」
「ほら、まるでルービンシュタインのような音でしょう?」
と具体的なピアニストの名前を出して音の変化をアピールしていらっしゃいました。

良い音で演奏するためには『自分の音を良く聴くこと』とは良く言われますが、音を聴いて修正するためには“どうしたらより良く修正できるか”を知っていて、即座に反応しなくてはなりません。
カンピオン先生の講座は、その方法を私たちに示してくださる貴重な時間となりました。

ラ・パレットでの講座について、カンピオン先生も「とても良かった」と喜んでくださっていて、次に機会がありましたらまたぜひ講座を持ちたいと思っています。

今回行われた講座の詳細は以下の通りです。
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イザベル・カンピオンを講師とする”音楽家の為の運動療法”

「“音楽家の為の運動療法”を用いたピアノの指導法
 〜ピアノを鳴らす身体について学ぼう〜」

◇日時:10月25日(日)13時30分〜15時30分

◇受講料:4,000円

◇会場:スタジオ Chez Claude  http://chez-claude.com/
  東京都江東区森下1-5-4 アロンジェ森下201(受付) 
  TEL:03-3631-7733 FAX:03-3631-7799
(土足厳禁。スリッパはございます。)

◇プログラム◇
 13:30〜13:35 カンピオン先生のお話
 13:35〜14:20 レッスン1 生徒:小学6年生
    チェルニー:左手のための24の練習曲 Op.718-3
 14:20〜15:05 レッスン2 生徒:高校1年生
    ショパン:練習曲 Op.25-12
 15:05〜15:30 質疑応答など
(タイムスケジュールについては予定ですので変更になる場合がございます)

◇通訳:中島彩(ピアニスト)

◇対象:ピアノを学ぶ10代の学生、ピアノ指導者

◇定員:20名(学生10名まで)

◇お申込み:http://form1.fc2.com/form/?id=232471 吉原まで
カンフェティhttp://www.confetti-web.com/detail.php?tid=31104&でもお求めになれます

◇受付期間:学生 本日より
      ピアノ指導者 9月20日より
      一般 10月1日より
(定員になり次第締め切りとなります)

※10代の聴講者には付き添い1名を含みます。
 付き添い者がピアノ指導者の場合は9月20日以降に、
 2名以上の付き添いの場合は10月1日以降にお申込みください。

◇共催:ラ・パレット、コンセール・パリ・トーキョウ
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