管理人の想いの付くままに
瑳絵



 此れが己の人生論(お題:01)

「永遠の在り処」番外編(?)
↑タイトルクリックで、小説に飛べます(別窓)



 此れが己の人生論


「俺に生きる目的を下さい。でなければ俺が死ぬのを止めないで」
「……何だ、それは?」
「なんだろう、ただ、言ってみた」
「お前、洒落になんねーって」
 そんな会話が交わされている場所は、他でもない立ち入り禁止にされている屋上だ。
「でも、俺が本気で言ったら、希はどうする?」
 問いを投げかけたのは裕の方で、彼の唐突さに、希は嘆息する。
 どうする?なんて言われて、どうすればいいのだろうか・・と言うのが今の希の心境だったりする。
 問われたのは仕方ないのだから…と、自分なりに答えを出してみる。
「背中を押す?」
「何それ。しかも、疑問系」
 その答えに、裕は面白そうに声を立てて笑う。そんな反応に、やはり言うんじゃなかった、と希は己の発言を呪った。
「ねぇ、背中を押すって、本当に背中を押すの?それとも、喩え?」
 促す、と言ったような意味に、背中を押すと言う言葉がある。
 本当に背中を押すのか、どちらなのかと裕は問うているのだ。
「実際に、本当に押す」
「それって、殺人だよ」
「分かってる」
「じゃぁ、何で?」
「分からない、でも、そう思った」
 インスピレーション、まさに直感だ。何となく、本当に何となくだ。
「じゃぁ、裕だったらどうするんだ?」
「俺?俺も希と一緒。希がそんなこと言ったら、俺が突き落とす」
「何で?」
 自分にされた質問を返してみる。
 単純に、裕がどんな答えを返すのかに興味があったからだ。
 彼の発言はいつも突拍子も無いのに、何故だか納得させられる。
「だって、自殺って彼の世で罪重そうじゃん」
「……こっちでの殺人の方が重罪なんじゃないか?」
「そうかな?」
「そうだろ」
「でも、いいんだ」
 二人でアスファルトに寝転がって、空を見ながら不毛な会話して。

「ねぇ、希は死は人生の完結だって思うか?」
「え?どう言う意味だ、裕」
「俺は、死は己の終わりであって、人生の完結ではないって思うんだ」
 こんな風に二人の会話が飛ぶのも日常茶飯事だ。
 最初の頃はその度に慌て、驚いた希も、今では馴れっこだ。
「終わりって、途中で中断されても終わりって言うけど、完結は違うじゃん」
 何となく、感覚的にしか理解できない希。しかしそれは、裕との会話の中では多く、はっきりとした形で理解できることの方が少ない。そんなことできるのは、担任の国語教師か、裕の恋人ぐらいだろう。
「完結って、きちんとそこで全てが終わったてことだと思う」
「でも、自殺はともかく、寿命で死んだ人間の人生は完結するんじゃないか?」
「しないよ。だって、発明家や科学者、作家達だってそうだ。彼らは死して尚、人生の一部が日常に流れてる」
 彼らが生み出したものは、受け継がれ、改良を重ねられても生き続いてる。つまりは、彼らの人生はまだ続いているのだと裕は言うのだ。
 一般の人だって、彼らが生きて来た道は、色んな形で残っている。

「あ〜俺、説明下手だから分からないよな」
「分かるよ、お前の説明が下手のは前から変わらないから」
 俺の理解力が優れてきた。と、希がからかう。
 酷いな〜、と言いながら笑いあう二人。これも人生の一部。

 希は思う。縁起でもない話だけど、もし明日にでも自殺なり事故なりで裕が死んでも、彼の言葉は己の中で生きるのだと。
 そうすることで裕は生き続ける……裕の人生は完結しない。


 この世界が終わるまで、決して人生は完結しない。
 そう、此れが己の人生論。



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「永遠の在り処」の番外編(?)
01.俺に生きる目的を下さい。でなければ俺が死ぬのを止めないで
を使用。日常の一コマ。
番外編の後ろに(?)が付くのは、「永遠の在り処」自体も番外編のようなものだから。
逆に言えば、この話も本編の一部だからです(汗)
つまり、シリーズのようなものです。
裕君同様口下手な管理人(泣)
タイトルのままです。コレは管理人の人生論です。すみません。

お題3つ目・・楽しいけど、キツイ

2004年02月18日(水)
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