.第6話:『Teenage Walk』 

「ニチヨウ10ジ イツモノバショデ シンヤ」
ポケベルに刻まれた次の約束のメッセージ。
 あたしの彼・沢村信也さんは、7歳年上の社会人。最近彼の仕事が忙しくて会えない日が続いていたから、当日・わくわくしながら彼の到着を待つ。
 ところが。待ち合わせに現れたのは彼ひとりではなかった。
 おそらく彼と同じ年位の女の人が、彼の後ろでこちらをじっと見つめていた。
こう言ったら失礼かもしれないけど、おとなしそうな、まじめさだけがとりえの地味な女、そんな感じ。あたしが彼に近づくと、すっと前に出てきて、まっすぐにあたしを見つめて言った。

「おねがいです。沢村くんと、別れてください」

はぁ!?

 あたしが彼のほうを見ると、彼は気まずそうに煙草をふかしている。ただひたすら無言で。
「彼が、女子高生のあなたなんか相手にするわけないでしょ!?」
その言葉にかなりかちんときた。
「・・・何が、言いたいんですか?いきなりしゃしゃり出てきて、別れろなんていわれてはいそうですかなんて答えると思ってんの!?
社会人やってる割には物の頼み方も知らないんですね」
あたしは精一杯怒りを抑えてしゃべる。そしたら彼女の顔が泣きそうな表情に変わる。そして、土下座でもしそうな勢いでこう言った。
「お願いします!あなたはまだこれからいろんな人と出会えると思うけど、あたしには彼しかいないの!!・・・あたし、妊娠してるの。もちろん沢村君の子供よ」

なんですと!?
思わず彼女ではなく彼のほうを見る。彼はそれでも無言のまま、そっぽ向いている。

「・・・ば、っかじゃないの!?」

 さすがのあたしもきれてしまった。彼女にではない。彼の態度に。
 彼女は必死で、プライドかなぐり捨ててもいいような勢いであたしに接している。それは自分の中に宿った好きな人の子供の為にも、普通なら絶対したくないであろう、10歳近く年下の子供に頭を下げている。
 それなのに、自分はまるで関係ないかのような彼の態度がすごく腹立たしかった。
 彼女とあたし、どっちが先に彼と付き合い始めたのかわからないし、どっちが本気でどっちが遊ばれてたのかなんて知りたくない。腹が立つのはふたまたをかけられたという事実よりも、無関係・無関心と言わんばかりの彼の態度。
もし、あたしが逆に彼女のようなことをしても、彼は同じ態度をとるのかな、って。

「こんなやつ、あんたにくれてやる!どうぞお幸せにっ!!」

あたしはそう叫んで、彼に歩み寄りほっぺたをひっぱたく。
そして、くるりと背を向けて歩き出す。
くやしかった。
彼はもっと大人の人だと思ってた。
本当に好きだった。
でもこんな最悪の終わりかただなんてね・・・。

あたしはとにかく歩きつづける。腹立った勢いでとにかく。
そのとき
「あー!やっちまった!!」
誰かの叫び声と同時に降って来たのは、大量の水。
避ける間もなくずぶぬれになったあたし。

・・・もう!今日はほんとに踏んだりけったりだ!!

「すみません!大丈夫ですか!?」タオル片手に駆け寄ってくる犯人?を思いっきりにらみつける。

「あれ?谷村?」
「・・・あ!?藤崎?」

「なんであんたが(おまえが)こんな所にいるのよ!?(いるんだよ!?)」

道端でにらみあったあたしたちは同時にそう言っていた。

あたしに水をかけたのは、クラスメイトの藤崎千尋。
彼は目の前の美容室の制服を着ている。

でも、彼の家って確か・・・・。

                 (『Teenage Walk』い愨海)

2002年10月04日(金)


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