.第5話:『GROWIN’UP』(最終回)

 「第5回・ジャパンミュージックフェスティバル地区予選・審査結果を発表します!」
なお、当予選での一位の皆さんには、来月東京にて行なわれる本選に参加していただきます」
あたしたちは客席で息をつめて見守る。早く発表を聞きたくて、心臓がばくばく鳴り始めて、司会者の説明さえもどかしいくらいだ。
「それでは発表します。・・・第三位・エントリーナンバー15 ・『BLACK』!」
あと二つだ・・・。隣に座っている麻里がうつむいて何かを祈っているのか、顔を上げようとしない。  

「・・・・第二位・エントリーナンバー9、『CINQ』!」
  
 後からリーダーと浅倉さんのため息が聞こえた。二位。あたしたちにとっては二位では意味がない。本選に出られるのは一位だけなのだから。
 結局・一位はリーダーたちがライバル視していた『プロクレイム』の人たちが獲って、次は各パートごとのベストプレイヤーの発表が行なわれるようだった。
「それではベストプレイヤーの発表です。各部問ゴールド・シルバー・ブロンズの3名を選出します。それではギター部門から!」
「少なくともこれのどれかの賞には入りてーよな」浩司がぼそり・とつぶやいた。

「ギタリスト部門・ゴールド賞は『プロクレイム』の天野翔さん、シルバー賞は『CINQ』の桑原浩司さん、ブロンズ賞は『BLACK』の中山正人さんです!」

「ベーシスト部門・ゴールド賞は『TIMES』の木野直也さん・シルバー賞は『CINQ』の嶋田貴弥さん・ブロンズ賞は『プロクレイム』の島崎陵さん!」

「キーボード部門・ゴールド賞は『CINQ』の浅倉寿史さん・シルバー賞は『プロクレイム』の小川奈月さん・ブロンズ賞は『TIMES』の小村哲朗さん!」

「ドラマー・パーカッション部門・ゴールド賞は『REVUE』の寺内正美さん・シルバー賞は『プロクレイム』の近藤大介さん・ブロンズ賞は『CINQ』の海藤麻里さん!」

「最後に、ヴォーカリスト部門・ゴールド賞は『CINQ』の海藤絵里さん・シルバー賞は『プロクレイム』の麻生理佳さん・ブロンズ賞は『TIMES』の内之宮隆さんです!」
 

 「俺たちって、ひょっとしたらすげー腕の持ち主なんじゃねーの?」
 オーディションが終わって、いつもライブをやってる『Freedom』での打ち上げの席で、二位に終わって落ち込んだのも忘れ、個人部門では全員三位以内入賞という快挙に、みんな上機嫌だった。
「浅倉の一位はまあ当然として、絵里ちゃんがこんなに本番に強いなんて思わなかった!今まででいちばん良かったよ!」めったにひとをほめないリーダーの口から出た言葉にあたしはさらにうれしくなる。
「すげーよな。俺たちって本当にすごいよ!」浩司がいまだ興奮がおさまらん・といった感じだ。  
「本当に。ブラバンで賞もらったときよりもうれしいよ!」ドラムで賞を取った事のある麻里もこれ以上はないってくらいの喜びようで。
「やっぱ、次への目標ができるよな、こういうふうに実績ができるとさ。夢が現実になるのかなーって気がするんだ」いつも冷静な浅倉さんでさえ、喜びを隠せない表情だ。

 「・・・やっぱり、あたし何年かかってもプロになりたい・・・」あたしは思わずそうつぶやいていた。
 やっぱり歌うことが好きだって、今日はっきり自覚できた。
 妥協なんかしたくない。何年かかってもプロになりたい。いつか必ずきっと。麻里と、浩司と、浅倉さんと、リーダーと。誰一人欠けても意味がない。『CINQ』のメンバーでプロになりたい。  
 今まではいまいち自信がなかったけど、今なら声を大にしていえる。たとえ反対されてもこの想いを貫き通してみせる。

 あたしは、どこまでも夢を追いかける。
 『CINQ』のメンバー5人で、何年かかるか分からないけど、夢に向かって歩いていきたい。
 いつかきっとその夢を実現して、誰よりも輝く光を放つひとになれる、その日を信じて・・・。
[THE END]

2002年07月03日(水)


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