ものかき部

MAILBBS

「 考える恐ろしさ −夜の住人として− 」
2017年06月16日(金)



 夜の住人である

 昼の、いわゆる一般社会での名誉、金銭、食料、異性などの価値に惑わされない生き方を選んだ

 
 夜は恐ろしい

 何が恐ろしいか、といえば、考える恐ろしさ、がある

 一般に、考えることは善いこと(正しいこと)、あるいは、良いこと(生きるために必要なこと)とされている


 確かに、昼ではそうである

 けれども、それはお日様の日差しで見えるものがあり、体が温かくなり、風が吹き、木々が育成され、水が流れる昼だからである

 何より、どんな絵画よりも美しい大空が私たちを包み込んでいる



 しかし、夜はそうではない

 なぜなら、大空は黒一面に塗りつぶされ、何も成長せず、無音に近づくからである

 美や成長や音で安心できない夜は、考えることの恐ろしさが迫ってくる

 
 その恐怖に囚われると、心臓がバクバクしてしまう

 けれど、その意味は昼の世界で探し出すことは出来ない

 高齢だから、更年期だから、などの苦しい言い訳で昼に戻ろうとする

 そうではない そうではないのだ

 心臓が猛烈にバクバクするのは、脈絡なく何処かへと行ってしまう、考えることが持つ不安定さにある

 宇宙の果てまでも行ける、決してこの肉体では行けないのに

 深海の奥底まで一瞬で到達できる 決してこの肉体では潜れないのに

 偉大な聖人達と会話できる 彼らの肉体は滅びでしまっているのに

 考えることが持つ不安定さを安定させるものが夜にはない


 心臓のバクバク以外にも、自殺をふっと思い浮かんでくる

 この肉体に囚われず、宇宙の最果て、深海の奥底、聖人との会話を思いつくのだから、当たり前と言えば当たり前である

 夜の世界では、善きことも悪しきことも、混ざり合っている

 
 お日様が昇る前に、一面の暗闇からこの世で最も美しいものに替わる

 ふーっと深呼吸をする

 それは私のための深呼吸である

 心が自然と安定し、自殺や猥雑や混沌から離れていくことの安堵が、ふーっとさせる


 昼の住人ならば、感謝の念がふーっと深呼吸をさせる、というだろう。

 今日一日の命があることを実感してお日様に手を合わせる、という感謝である

 夜の住人ならば、混沌が安定へと替わっていく、というだろう

 考えることの恐怖から逃れられた、ともいうだろう
 


BACK INDEX NEXT

複製、無断転載、二次配布等を禁じます。
All Rights Reserved©ものかき部

My追加