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「 交差点の終わり 」
2008年08月17日(日)



 カタカタカタ・・・カタカタ・カタカタカタタタ
 無機質に叩く音がする
 ホワイトチョコレート色の机の上で、無音で幸せの絶頂が映し出されている。

 散乱したバタークッキーの開いた袋たち、不揃いに積まれているカラフルなCDケースたち、小型の栄養ドリンク大きなペットボトルの紅茶空色のカクテルグラス真っ黒なうどん出汁が半分入ったガラスビン、有名な出版社の文庫本が所々で小山になっている。それらの間を這うように置かれた爪楊枝、シャープペン数本、クリップ大小、塗り橋何セット、肩こり用の塗り薬2,3個の机の上。

 うるやかな大きな瞳がパチリ、パチリと嬉しそうに瞬いたり
 リップを塗っただけの唇はツヤツヤしていて、時々丸くキュッと縮まったり
 細く長く白い首を左右に傾げたり、肩下までの毛先が追いかけたり、追いかけなかったり
 二の腕をツン、と突っつくと、目隠しでスイカを割った時のように嬉しそうに恥ずかしそうにはしゃいだり
 
 ふあぁあ、とアクビをしながら、サッと首だけ後ろを向いて
 けれど、もうキーボードの無機質な音しか聞こえない
 数ヶ月前には心の中に残っていた、アクビのおとも聞こえなくなった

 デジタルの中に永遠に閉じ込められてしまった最愛の時
 電気信号に分割され何時でも無限に再生されてしまう代物になってしまった
 誰にでも何回でも使える哲学の真理のような代物になってしまって、だからもう無音で、結構良く、時々、ポツポツ、殆どなく、と減っていく
 ふう、と大きく息を吐いて椅子にもたれかかって両目を閉じれば、浮かび上がってくるのは、肩甲骨の下にあるニキビ痕だけだった

 カタカタカタ・・・カタカタ・カタカタカタタタ
 無機質に叩く音が始まった


注記:「アクビのおとも」=「アクビの音も」と「アクビのお供」と両方の意味。
  :「代物(しろもの)」=「売買する物」と「金銭に目が無い遊女」と「年頃の一般的に美しい女性」と「金銭で取引できる程度のもの=愛がなくなったの意味」の意味の何れか。
題は「 交差点の君 」(2006年08月01日(火))を意識して。


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