ギシギシと揺れる車の中で、白い吐息越しにぼやける天上を見ていた。
明日は仕事で、いつも通りに起きなければならない、だとか、職場の人間関係でチクリと小さな胸が疼(うず)いたり、外を降る雪のような桜たちに思いが浮かんでは、どうでも良いような感じで、情欲に消えていった。
実際、妊娠すればいいんだ。
こんな馬鹿でも愛せるようになるだろうし、子供は可愛がって育てるだろうし、何だかつまらなくなるだろうし、今は化粧の出来を一々気にしたり、お金や両親や法律なんかが回りによってきて面倒くさいし。
実際妊娠すれば、何んか結婚も出来るだろうし、昔の男も忘れられるって雑誌に書いてあったし、友人が言ってたし、そう思うし。
そんな私を笑った男は、春が来て、サラリと散っていってしまった。
終わったら、多分、彼を忘れて目の前の男を愛せるようになるだろうな。
6月には毛虫が出て、新芽が出てくる桜の大木のように。
私の体の中は赤い血潮よりも薄いピンク色なのだろうな。
執筆者:藤崎 道雪 (校正H18.2.10)