感想メモ

2018年07月01日(日) アキラとあきら  池井戸潤


池井戸潤 徳間文庫 2017

STORY:
零細工場の息子の山崎瑛(あきら)と東海郵船という大企業の御曹司・階堂彬(あきら)の二人は、お互いの運命に揉まれながらも東大から産業中央銀行に入社し…。

感想:
 池井戸潤の小説で評判がよかったので読んでみたいと思っていた。やはり評判通りの傑作だった。正直銀行ものとか苦手なのだが、この本はわかりやすく描かれているので、すごくためになったような気がする。

 零細工場の息子として生まれた山崎瑛は、父の工場が倒産し、差し押さえに遭い、小学校を逃げるように去り、妹とともに母の実家のある磐田市へ移ることになる。いわゆる夜逃げというやつである。父は無学で、契約のことなどに無知だったことから、工場をうまく経営していくことができなかった。この体験は強烈に瑛の心に突き刺さることになる。

 磐田市へ移った瑛。父は別の会社で働くことが決まり、ようやく安定した生活にはなるが、経済的な余裕はなく、大学進学を諦めようと思う。父の会社が再び危機に瀕した時に、父を助けたのは、地元の銀行だった。そのときに銀行は会社を助けることも、倒産に追いやることもできるのだということを知った瑛。

 結局父の勧めもあり、東京大学へ進学。そこで階堂彬と出会う。

 同じ「あきら」という名前だが、東海郵船という大企業の御曹司として生まれた彬は、順風満帆な裕福な生活をしているかと思われたが、実情はかなり違っていた。もともと祖父が始めた会社だが、それを継いだのは父であった。父には兄弟が2人いて、それぞれの叔父は別会社の社長として独立。ところが、そちらの経営はうまく行っていなかった。

 二人の「あきら」は就職活動を経て、産業中央銀行に入社する。入社後の研修で二人は頭角を現す。

 山崎瑛のほうは、自分と似たような境遇の小さな会社の手助けをしたいと銀行で働く。

 階堂彬のほうは、父が死去し、弟が会社を継いだことから、大企業・東海郵船の足元が揺らぎ始める。弟が叔父たちに騙されて会社が危険な状態になってしまい、弟は精神を病んで入院。銀行を辞めて、東海郵船の社長となることを決める彬だが…。

 この本を読んで、銀行の動向次第、会社の経営者次第で会社の大小関係なく、影響がすごく及ぶんだなと思った。そして、本当に優秀な銀行員は、会社と銀行双方の利益が出るようにお金を貸しているんだなと…。

 また、結局身内の会社関係者が協力的か非協力的かというのは非常に大きな要素で、会社の足を引っ張ることも多いのだと実感。下手な身内ならいないほうがいいのかもしれないなーと思ってしまった。

 瑛が彬の会社のために奔走する姿は、胸が熱くなった。

 少し経済のことがわかったような気になったし、いい話を読んだと思った。


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