感想メモ

2009年03月14日(土) チェンジリング

 クリント・イーストウッド監督の作品。最初、テーマが重そうで、あまり見たいと思わなかったのだが、夫が大絶賛し、もう一度見てもいいと言うので、一緒に行ってきた。

 2時間以上ある映画は、長くてあまり好きじゃないのだが、この映画は集中して見ていたせいか、長さは感じなかった。それほどまでに圧倒されたのかも…。 

 以下、ネタばれあり。









 シングルマザーとして仕事に忙しいクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)は、急な仕事で息子のウォルター(ガトリング・グリフィス)を一人残して家を出る。急いで家に戻ってくると、ウォルターはいなくなっていた。近所を探し回り、警察に電話すると、子供の捜索は1日経たないとできないと言われる。翌日、警察がやって来て、ようやくウォルターの捜索が始まるが、手がかりがない。

 それから約半年後、ウォルターが見つかったという知らせが入り、クリスティンはウォルターを迎えに行く。しかし、現れた少年は、ウォルターと名乗る別人。クリスティンは自分の息子ではないと主張するが、今は混乱しているだけだと告げられ、その少年(デヴォン・コンティ)と家に戻る。

 やはり少年は別人だと確信したクリスティンは、警察にウォルターの捜索をもう一度お願いしに行くが、警察はウォルターはもう見つかったのだから、この件は終わりだと相手にしない。それどころか、クリスティンのことを異常だと決めつけるような行動に出る。

 このときのロサンゼルス警察は腐敗しきっていた。その警察と闘っていたのが、長老教会の牧師(ジョン・マルコヴィッチ)だった。彼は新聞記事を見て、クリスティンに連絡を取る。2人で権力と闘おうとしていた矢先、クリスティンは警察に連れ去られ、その場で、精神病院に送り込まれてしまう…。

 精神病院には、同じように警察に逆らったかどで精神病院に入れられた女たちがたくさんいた。そのうちの1人キャロル(エイミー・ライアン)は、クリスティンに精神病院の仕組みを教えてくれる。

 クリスティンは牧師の力によって精神病院を脱出することに成功するが、そのとき、20人の少年を連続誘拐殺人した事件が持ち上がっていた。その被害者の一人がウォルターかもしれないということがわかる。

 犯人はゴードン・ノースコット(ジェイソン・バトラー・ハーナー)で、いとこの少年(エディ・オルダーソン)に誘拐殺人を手伝わせていたのだ。ゴードンはカナダで捕まり、カリフォルニアに移送される。

 警察権力に対する審判とゴードン事件の裁判が始まり、クリスティンも傍聴する。結局、権力者たちは失墜し、ゴードンも死刑となる。

 死刑執行の直前、クリスティンはゴードンに呼び出される。息子を本当に殺したのか確かめたかったクリスティンはゴードンに会いに行くが、結局ゴードンは真実を言うことはなく、死刑執行される。

 それから、数年後、事件はすっかり終結したかと思われていたが、クリスティンはゴードン事件で殺害されたと思われていた少年が見つかったという連絡を受ける。少年は逃げ出した数人のうちの1人で、その後、数年ずっと隠れていたのだった。少年の口からは、ウォルターが少年の逃亡を助けたことが語られる。

 クリスティンは、ウォルターもまだ生きているかもしれないと、結局、生涯子供を探し続けた…。

 というあらすじであった…。

 なんだか内容が重いんだけど、私が心に残っているシーンを書いておく。

 まず、当時の警察が腐敗していたから仕方ないのかもしれないが、ウォルターがいなくなった直後にクリスティンが電話しているのに、子供がいなくなっても、99%は翌朝までに見つかるので、1日経たないと捜査はしないと警察に言われるシーン。

 今の世の中なら、あり得ないのかなと思う。こうした失踪事件では、時間が勝負という面もある。早ければ、殺されず助かる場合も…。

 それから、精神病院に入れられるところ。もし自分が入れられてしまったらどうしたらいいのだろうと、考えてしまった。薬は飲んだふりして飲まないとか…。反抗的な態度を取ると電気ショックを与えられるし、精神が異常だと決めつけられれば、自分の言うことは誰も取り合ってくれないから、本当に恐ろしい。

 病院を出てから、クリスティンがほかの仲間たちを救うために立ち上がるのがよかった。

 そして、ゴードンの死刑執行。ゴードンは全く反省していないけれど、死は怖くて、懺悔をしている。それでも往生際が悪くて、死刑台への階段を登るときにもすごくごねる。こうしたやり取りがやけに生々しくリアルで…。

 そして、被害者の関係者たちが見守る中、死刑が執行される。もし自分の子供が被害にあっていたとしても、犯人が死刑執行される現場にいたいと思うだろうか…とちょっと考えてしまった。私はいたくない、見たくない。けど、見届けたい人もいるだろう。日本ではきっと誰も見られないところで死刑が執行されるんだろうな…。どうなんだろう。

 そして…最後に、一番泣けたシーンは…やはりラストだった。死んだと思われた子供が見つかり、5年後くらいに帰ってくる。少年は事件のことはニュースで知っていたのだが、自分のせいで他の子供たちが殺されたと思って、罪悪感から名乗り出ることができなかった。けれど、もう一度両親に会いたくなって、それで名乗り出たのだ。

 私は、少年がもう一度両親に会いたくて…と言う場面で、涙があふれるのをこらえることができなかった。その他のシーンは、泣くことはなかったのだが…。クリスティンとは別の部分で泣けてきてしまった。

 結局のところ、ゴードンは自分がウォルターを殺したのかをはっきりさせなかった。ウォルターは逃げ出した少年たちの1人で、もしかしたら、見つかった少年と同じようにどこかで生きているのかもしれない…。

 だから、クリスティンは母として、生涯ウォルターを探し続けることになったのだろうが、きっと殺されてしまっていたのだろうと思う。

 実話をもとにしたフィクションだけれど、本当に胸を打つ話で見てよかったと思った。


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