宿題

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2005年10月26日(水) 散歩道の犬/小沼丹
この一見日本犬らしい犬は、大抵コンクリートの床にごろんと臥転んでいた。
隅にちゃんと座っていることもあるが、これ迄吠えたことは一度も無い。
それが何を勘違いしたのか、鎖を一杯に引張って、此方を向いて猛烈に吠える。
立停まって小鳥の巣を見上げていたのを、胡散臭いと誤解したのかもしれないが、
それは認識不足も甚だしい。
──間違えちゃ不可ないよ。
と注意したい。
犬に注意しても始まらないから歩き出そうとしたら、
そこへ焚火していた嚏の爺さんがやって来て、
──これこれ、吠えるじゃない。
と云って犬の頭をぴしゃんと叩いた。
或いは犬の奴も、飼主の爺さんがやって来たので、
その手前吠えてみせたのかどうか、その辺はよく判らない。
爺さんが誤解すると不可ないから、念のため、頭上の小鳥の巣は何鳥の巣かと訊いてみたら、
──そう云えば鳥の巣があるとか云ってたっけ…。
と云うと、上も見ずに家のなかに這入って行ってしまった。
誰が鳥の巣があると云ったのかしらん?
判らないことが一つ増えて、面白くも何ともない。
そのとき犬の奴はどうしていたのか、吠えるのを止めていたのかどうか、
どうも想い出せない。


★散歩道の犬/小沼丹★

マリ |MAIL






















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