宿題

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2003年12月14日(日) ふつうがえらい/佐野洋子
この間、百歳の奥村土牛の展覧会を見に行った。

私はあんなに混み合っている展覧会に行ったのは、その昔ゴッホ展以来である。

どこからわき出たか、全国のおばさんが集合して来たと思われた。

─中略

「あれえ、ねえちゃん、これ、九十七歳、すごい」

土牛さんの絵は横に制作年齢が表示してあった。

「や、や、や。これ、九十九。ねえちゃん、ねえちゃん」

と姉妹づれのおばさんもいるのである。

私はウロチョロと外へ押し出された。おばさんたちはうず巻く「鳴門」であった。

ごーっとそこ鳴りがしている。私は自分がおばさんであるのに、

おばさんの力に圧倒されて呆然とし、しかし、何故ともなく、

ああ日本は大丈夫なんだ、このおばさんたちがいるかぎり、

日本はどんなことがあってもへこたれないのだと涙が出そうである。


★ふつうがえらい/佐野洋子★

マリ |MAIL






















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