宿題

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2003年12月13日(土) ふつうがえらい/佐野洋子
私昔とても好きな人が居た。

好きでも、私好きですなんて手紙に書いたり出来ないので、

雨が降った話や、地図やどっか行った時の話を、毎日手紙に書いた。

雪の上におしっこをして詩を書いた話まで書いてしまった。

せっせと書いた。電車の中でも書いた。

そしたらその人「あなたが好きです」って言った。

私一言も好きだなんて絶対に書かなかったのよ。

私その時から手紙書くの好きになったのかもしれない。昔々のはなしです。

そしてそんな昔じゃない時、私は忘れていたのだが、

「あなた、覚えている。『私あの男絶対に落として見せる、手紙で』って言ったのよ」

と友達に言われて仰天した。私本当に、その男落として今一緒に住んでいるのである。

その時だって、好きだって一言も書かなかった。本当だってば。

だけど、私そんなに助平じゃない。今せっせと八十四歳のおばあさんに手紙書いてる。

私おばあさんを落とそうなんて思ってない。ただ手紙書くのが好きなのよ。


★ふつうがえらい/佐野洋子★

マリ |MAIL






















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