○プラシーヴォ○
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「ハグをね、して欲しいんだ」
まだお店に勤めていたときに 同僚のシノちゃんが呟いた
八ヶ月の子供がいる未亡人 (籍を入れる前に恋人が死んだ)
でも明るくて、色っぽくて ちっとも不幸の匂いをさせない できた人
お店のストレスもあって 心が限界で 誰か男の人にギュウと抱きしめてもらえれば 穏やかになれそうな気がする
と
シノちゃんは続けた
それから少しして
「アスカにハグしてもらった!」
とホクホクの顔をしていた
アスカとは、うちの店のお得意さん (ほぼ毎日通ってきてくれていて 偶然にもシノちゃんと共通の友人がいる チャゲアスのアスカに似ているから命名 不動産屋の店長)
共通の友人と3人で食事をした後、 偶然帰り道で2人きりになったとき、 お願いしたんだそうだ
そんな会話も忘れてしまっていた今
シノちゃんから電話
アスカに告白をされたらしい
「店でお前ばかりを指名していたのに 俺の気持ちに気づかなかったのか? 共通の友人と頻繁に会っていたのも お前との会話のネタを増やすためだったんだぞ」
実は、その共通の知人は アスカに恋をしている
2人とも30代後半だから お似合いなのにね、と
シノちゃんが言っていたのに
まさか自分が告白されるとは思ってなかった
丁重にお断りすると
今まで穏やかで優しかった顔が ガラッと変わり
「シバクぞ、ダボ(神戸弁でバカとかアホの意味)」
と低い声で言ったそうだ
「今から共通の知人のとこに行くよ あいつだったらヤらせてくれるだろうからな」
本当に、今までずっと まるで森本レオのように 穏やかで優しい人だったのに
こいつもバカ店長同様
ちっちゃい人間だったんだ
「タイに研修に行った時 店長とヤったんだろう タイ人なんて、金をやれば ホテルのスペアキーくらい いくらでもくれるんや 店長がお前の部屋に入ってきたんだろう? お前なんかに 俺の本当の気持ちなんて分からないだろう 俺は大人だからな」
大人はそんな小学生みたいな 悪口はいいません
汚い言葉に耐えて
シノちゃんは店から出た瞬間
ダッシュで逃げた
まったくあの店にかかわってから
ろくなことがない
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